2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻、今年10月に始まったイスラエル・ガザ戦争…現在世界で起きている争いの根源には、各々の信じる宗教の違いが大きくかかわっています。ではなぜ、人は宗教を理由に争ってしまうのでしょうか。
2023年9月に発売された『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)では、世界最大の宗教・キリスト教を知るための情報が満載です。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。(全6回)

博愛の宗教が戦いを促す矛盾
旧約聖書にあるモーセの十戒には「殺してはならない」とあり、イエスも「敵を愛し、あなたがたを憎む者に親切にしなさい」(ルカによる福音書6章27節)」と語っています。にもかかわらず、古来、キリスト教徒が関わる戦争が後を絶ちません。
その最たる例が、十字軍の戦いです。中世ヨーロッパのキリスト教徒は、十字軍を結成してイスラム圏に遠征し、ときに凄惨な虐殺行為におよびました。異教徒であるイスラム教徒と戦うことは、神のみ心にかなう聖戦とみなされたのです。

正義のための戦争は許される
異教徒との戦いだけではありません。2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、同じキリスト教徒同士の泥沼の戦いに発展。背景には、教会の分裂という宗教的理由もあったといいます。16世紀の宗教改革の際も、キリスト教徒が新旧の教派はに分かれて、激しく戦いました。
キリスト教徒一人ひとりは平和を願っていても、集団になると、別の論理が働きます。平和をもたらす「正しい戦争」であれば許される、という考え方です。
聖書には、悪に報いるため、あるいは仲間を守るためであれば、戦いを認めるような記述があり、これらが戦争を正当化しているとも指摘されています。正義のための戦争であれば、必ず神が勝利に導いてくれるはず。そう信じて勝利を祈るのは、キリスト教徒に限ったことではありませんが、聖書の言葉に支えられた強い信仰が、戦争を後押ししているとはいえるでしょう。
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本書では、キリスト教の成り立ちから、宗教と戦争の関係、そこにこめられた各宗派の想いや歴史までを分かりやすくまとめています。「世界の宗教と文化」シリーズ第2弾『図解でわかる 14歳から知るキリスト教』(山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
Credit: 山折哲雄・監修、インフォビジュアル研究所・著