屋久島沖で発生したオスプレイの墜落で、事故翌日から地元の漁師たちが機体の部品などを回収している。一方、沖縄県内でこれまで起きた米軍機の事故では、米軍が事故現場を統制。
県警など捜査機関ですら機体に触れることができなかった。異なる光景が現場で繰り広げられていることに、日米地位協定に詳しい識者は「米軍基地がすぐ側にある沖縄と、基地が遠い本土との違い」を指摘する。(社会部・吉田伸、東京報道部・新垣卓也) 屋久島の漁業関係者によると、墜落翌日の11月30日、国から屋久島町役場に協力要請があり、役場から連絡を受けた漁協が部品などを回収したという。 県内では2004年、宜野湾市の沖縄国際大学に普天間飛行場所属のCH53ヘリが墜落。米軍が地位協定を盾に日本側の現場周辺立ち入りを認めなかった。06年にうるま市伊計島沖で嘉手納基地所属のF15戦闘機が墜落した際、部品が散らばる海域では現場保存を理由に、海上保安庁が「漂流物に触らないように」と規制。
取材する記者を乗せた漁船を近づけさせなかった。 16年には名護市安部の海岸にオスプレイが墜落。規制線で囲われた現場で、米軍が散乱した機体などの証拠物を回収。出入りを管理した県警も捜査した海保も、証拠物に触れられなかった。 一方、屋久島では地元の漁師たちが海に出て、機体の残骸などを次々と引き上げている。沖国大の前泊博盛教授は「過去に見たことがない光景で不可解。
米軍は積載物も明らかにしておらず、危険物の可能性もある。漁師に回収させるのは非常に危険だ」と話した。 日米両政府は05年に事故現場を統制するガイドラインを取り決めたが、屋久島で米軍は規制区域を設けていない。 現場では7人の乗員や機体の主要部分の捜索が続いている。ある防衛省関係者は「乗員の捜索救助が最優先というのが日米の共通認識だ」と強調する。 政府関係者は「機体の主要部分がどこに沈んでいるか分からないため、区域の設定が難しい」と解説。
だが場所や墜落地点が分かれば「一定の区域を規制する可能性が高い」と話す。 地位協定に詳しい新垣勉弁護士は「現場は米軍基地から離れていて、米軍が駆け付けられていないだけ」という。逆に基地が集中する沖縄ではすぐに米軍が駆け付けて規制線を引くと指摘。「屋久島と違って、沖縄では頻繁に飛行しているから、事故のたびに異様な状況が出現する」と話す。 米軍機事故を巡っては、沖国大や名護市安部のいずれの事故も地位協定が壁となり、不起訴処分となっている。政府関係者は「今回も海上保安庁としての捜査が検討されている」と明かすが、難航が予想される。
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この差は何? 墜落した米軍機の回収 屋久島では漁師に協力要請 沖縄では規制され入れず
規制線の内側で墜落したオスプレイの破片を並べる米兵=2016年12月17日、名護市安部の海岸(金城健太撮影)