沖縄市と金武町で4月と5月、基地外に住む米軍関係者が飼育するピットブルなどの闘犬による咬傷(こうしょう)事案が相次いだ。2件とも地域住民の飼い犬がかみ殺されるという、ショッキングで痛ましいものだ。
沖縄市では4月、飼い主と散歩していた小型犬に、米軍属の家から逃げた大型の土佐犬の雑種が飛びかかった。5月には金武町の民家敷地内で飼われていた犬が、米兵の元から逃げ出したピットブルに襲われた。
県内ではこれまでにも、米軍関係者が飼育する大型犬による咬傷事案がたびたび発生している。
2009年、沖縄市やうるま市で大型犬が逃げ出しパトカーが出動。20年には宜野座村の路上で米軍人がリードなしで散歩させていた大型犬が、70代男性にかみつき腕にけがをさせた。
県や市町村の要請を受け、米軍は基地内外を問わず攻撃性の強い犬種の飼育を禁止した。にもかかわらず、咬傷事案は後を断たない。米軍の対応は一体どうなっているのか。
そもそもこの問題は、基地の外に住む米軍関係者が地位協定によって住民登録の対象外となっていることと大きく関係する。
家族は何人いるのか、ペットを飼っているのか。
地位協定による米軍側の「特権」が、飼い犬にまで及んでいるように見える。
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日本国内で犬を飼う際は、取得から30日以内に居住市町村に登録申請することが狂犬病予防法で義務付けられている。
だが住民登録対象外の米軍関係者は、飼い犬の登録も必要ない。民間地に住んでいるのなら日本の国内法を順守すべきなのに、法の及ばぬ「ブラックボックス」状態である。
県は、闘犬などが逃げた際は警察や関係機関への連絡を呼びかけている。
しかし、金武の事案で飼い主は憲兵隊や所属部隊には連絡したものの、県警には通報しなかった。
憲兵隊は犬の逃走について「日本の警察には連絡するな」と言ったという。もし県に通報があれば注意喚起できた可能性もあり、悪質と言わざるを得ない。
ペットの問題だけではない。新型コロナウイルス感染症の流行時は、米軍側に感染者や患者がどれだけいるのか分からず、県民を不安にさせた。
市町村に納税していないのに家庭ごみ収集などの行政サービスを享受するなど、構図はいびつだ。
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翻って、自治体が地元に住む米軍人の数を把握できないこと自体がおかしい。
県は地位協定改定の要請の中で「地域に住む米軍関係者の人数などは行政施策の基礎となる重要な情報」だとして、地元自治体に詳細な情報を提供する必要があるとしている。当然である。
民間地に住む以上、日本のルールに従うべきだ。