利用時間を示した愛知県豊明市のスマホ規制条例案が波紋を広げている。スマートフォンの使い方を考えるきっかけになるかもしれないが、行政が介入することへの懸念は拭えない。

 豊明市は、全市民を対象に、仕事や勉強時間以外のスマホやパソコンの使用について、1日2時間以内を目安とする条例案を市議会9月定例会に提出した。
 罰則はない。小学生以下は午後9時、中学生以上は午後10時をめどにそれ以降の使用を控えるよう促す。
 市や保護者、学校の役割も明記。保護者には、子どもをスマホの過剰使用から守る第一義的責任があることを自覚し、適切な管理に努めるよう求めている。
 市は不登校対策に取り組む中で、長時間利用が一因になっているとし、成長期の子どもの睡眠不足などの対策を推進する目的で提案したと説明する。
 玉石混交の情報があふれるネット社会に警鐘を鳴らす意味で、多くの関心を集めているのは確かだ。
 しかし一方で、利用を2時間以内とした根拠や、スマホの長時間利用が子どもに与える影響についての詳細な説明はない。
 市によれば、睡眠や食事に運動、学習や家庭内のコミュニケーション等に支障なければ、使用は3時間、4時間でもいいという。
 そもそも、各自がスマホをどう使うかは個人の自由である。行政が介入し、条例などで縛るべきものではない。
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 デジタル機器が生活の隅々に浸透し、多くの人にさまざまな影響を与えているのも事実だ。
市の問題意識は理解できる。
 兵庫県立大学の竹内和雄教授によると、2025年の調査から沖縄の小中高校生の約2割にネット依存の傾向が見られ、特に高校生は23・6%で約4人に1人と高かった。イライラしたり勉強に自信をなくすこともあり、注意が必要だ。
 香川県では20年にネット・ゲーム依存症対策条例が施行された。18歳未満のゲーム利用は1日60分まで、中学生以下のスマホ使用は午後9時まで、と目安を設けた。
 オーストラリアではことし12月から法律で16歳未満のSNS利用を禁じ、違反した事業者に罰金も科す。昨年、法律が成立した際には物議を醸した。
 ネット社会をいかに安心安全に過ごせるかは、世界共通の課題となっている。
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 子どもに限らず、大人でも動画を見たり、ゲームやSNSを楽しむのは日常の一部だ。使い過ぎれば寝不足や心身の不調を起こし、詐欺被害などのトラブルに巻き込まれることも。子どものネットいじめなど、深刻なケースも増えている。
 半面、画面を通して友人や知人と触れ合い、勉強や子育てに有効活用する人は多い。
利便性への考慮も不可欠だ。
 デジタル技術は今後も進化を続ける。功罪を検証しながら、行政や家庭、学校が、それぞれの役割の中で問題に向き合う必要がある。スマホをどう正しく使うかが重要だ。
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