背景にあるのは膨大な赤字。病院からマンパワーが失われれば、安心・安全な医療は提供できない。地域医療の「砦(とりで)」を守るためにも、財政支援と経営改善を進めなければならない。
県立病院は北部から八重山まで6カ所あり、救急や離島へき地医療拠点としての役割を担う。
新型コロナウイルス禍以降、赤字額が膨らみ、2024年度決算では過去最大規模の約100億円となった。昨今の物価高騰や人件費増が影響したという。
県は働き方改革や、育休や病休制度の充実、コロナ対応のため人員を増やし、賃上げを行ってきた。
医療機器などの値上げも、病院の財政難に拍車をかけている。
高額な医療機器からガーゼに至るまで、一つ一つが値上がりすれば、負担額は膨れ上がる。電気や水道などの光熱費も、患者の命を預かる病院として安易に削ることは難しい。
沖縄の特殊事情も大きい。離島は医師派遣や住宅手当など人件費が高くなるほか、島には不可欠な診療科や医療設備の維持管理などの予算も必要だ。
総務省によれば、24年度は全国の公立病院の83%が赤字となり、全体の赤字額も最大となった。
一方で病院収入の柱となる診療報酬は公定価格で決まっており、病院側の判断で不足分を上乗せすることはできない。
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高齢化が進み、住み慣れた地域で医療を必要とするお年寄りの割合は増え続けている。
公立病院の赤字をこのまま放置すれば、適正な医療の提供が困難になりかねない。コロナ禍の非常時を乗り切るために国が補助金を出したように、物価高に苦しむ全国の公立病院を救うため、国による対策が必要だ。
沖縄で県立病院が果たしてきた役割は大きい。
戦後、県民の命と健康を守るため地域の公的医療機関として走り続けてきた。今では全国から多くの研修医を受け入れる教育機関として評価も高い。
しかし、安定した財政基盤と人材がなければ医療の質は劣化する。急激な物価高に対応するため、原則2年に1度となっている国の診療報酬改定の在り方についても、見直しが必要ではないか。
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県立病院の疲弊は、県民の命と健康に直結する。
黒字化に向け、県は4月に経営再建推進室を立ち上げた。
効率化は必要だが、人員削減については慎重さが求められる。オンライン診療の推進や医療事務のDX化なども今後は不可欠だろう。多角的かつ柔軟に改善を図ることが重要だ。
県立病院の使命でもある政策医療を担いつつ、民間や地域とは何が連携できるのか。丁寧に精査しながら、それぞれの役割分担を探ってほしい。

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