私たちは今、歴史の大きな曲がり角に立っているのかもしれない。
 高市政権の下で、安保関連3文書の改定議論が自民党内で始まった。

 現行の3文書では、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に引き上げる方針だった。
 これを本年度中に達成し、27年度以降の防衛費についても大幅に増やす意向だ。
 必要な財源として所得増税が想定されているが、防衛費の急激な膨張によって、別の分野にしわ寄せが及べば、国民生活が圧迫される。
 非核三原則についても見直しを検討している。「国是」と位置付けられてきた非核三原則が見直されるようなことになれば、国際社会に与える影響は計り知れない。
 それだけではない。
 高市早苗首相の答弁で日中関係が悪化した折も折、小泉進次郎防衛相は石垣市や与那国町などにある陸上自衛隊の駐屯地を視察した。
 与那国へのミサイル部隊配置計画について中国外務省は「緊張を意図的につくり出している」と批判。小泉防衛相は、配備予定のミサイルは「防御を目的としており、他国を攻撃するものではない」と反論した。
 そのような応酬が起きたこと自体、日中関係の急激な悪化を物語るものだ。
 防衛省と与那国町が開いた対空電子戦部隊の配備計画についての住民説明会でも、他国から攻撃されるのでは、との懸念の声が住民から上がった。
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 突き付けられている問いが大き過ぎるために、その問題を避けようとする心理が働きがちだが、岐路に立たされていることは間違いない。

 先島のミサイル基地化は抑止力を高めるのか、それとも、地域の緊張を高めるのか。「台湾有事」が引き金になって、日本が何らかの形で戦闘に関与することはないのか。先島から九州各県への避難計画は、どのような事態になったときに実行されるのか。
 次々に疑問が湧いてくる。
 米軍統治下の朝鮮戦争やベトナム戦争。復帰後に起きた湾岸戦争、イラク戦争。いずれの場合にも沖縄から多くの米軍が出撃した。
 だが、今、想定されているのは「台湾有事」に伴う中国との軍事衝突であり、沖縄の戦場化なのである。
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 ミサイルの数を増やしたから抑止力が高まる、という単純な話ではない。
 政府間の相互不信が高まり、それが国民感情を刺激して国民の間にとげとげしい空気が広がれば、政治家は世論に引きずられ、ますます過激な言動に走る。
 日本国憲法の前文をあらためて思い起こしたい。
 「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」
 憲法が私たちに求めているのは、戦争を回避するため、あらゆる努力を尽くすことだ。
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