米軍基地由来とみられる有機フッ素化合物(PFAS)の汚染源特定のため、沖縄県が要請してきた基地内立ち入り調査を、米側が「汚染源と示す明確なサンプル調査のデータがない」などとして、拒否した。防衛省が公表し、県など関係自治体に説明した。
米側が拒否したのは、県が2016年6月以降に申請した4件(嘉手納基地2件、普天間飛行場1件、キャンプ・ハンセン1件)。
いずれも1973年の日米合同委員会合意を根拠としている。日米合意は、汚染が「地域社会の福祉に影響を与えていると信ずる合理的理由がある場合」、県や市町村が米軍の現地司令官に対し調査を要請することができるとしているが、「許可」は米軍の裁量に委ねられている一方的なものだ。
米側は立ち入りを拒否する理由について、「科学的根拠が明確なサンプル調査のデータが必要」とし、PFOSやPFOAの「土壌中の濃度に関する環境基準や排出基準などが日本や米国で定められていない」ことも理由に挙げているという。
県が申請している水や土壌の採取を巡り、「(緯度や経度などの)地理的座標が欠如しており、確定できない」とも回答した。
10年近く待たせた末にこの回答なのか。できない理由を探した「揚げ足取り」としか映らない。
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PFASは自然界ではほぼ分解されず体内に蓄積される。発がん性が指摘されているだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることも分かっている。
PFOSとPFOAの暫定目標値は、1リットル当たり合計で50ナノグラムと定められている。
県の2022年度冬期調査では、米軍基地周辺の44地点中、30地点で超過した。嘉手納基地に近い「屋良ウブガー」では、36倍となる1800ナノグラムに上った。さらに県の専門家委員会は、普天間飛行場周辺で米軍しか使わない泡消火剤の成分が検出されたことからPFASの汚染源と結論付けている。
周辺地域の子どもの水遊びの場を奪い、「ペットボトルでないと水が飲めない」という状況に追いやられつつある。
米軍の回答は県の調査を軽視し、住民の不安を軽んじるものだ。
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米軍と交渉を果たさなければならない防衛・外務省の対応も問われる。県の立ち入り要請を10年近くも米軍が拒む間、政府としてどう働きかけたのか見えてこない。
米軍基地における環境対策は、日本環境管理基準(JEGS)に基づき、日米のうちより厳しい方の基準を採用する原則だが、果たされていない。
基地の管理権を排他的に米側に認めている日米地位協定の改定なくして県民の暮らしは守れない。

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