まずはオープニングアクトとしてGメン5が登場。FAIRY FOREのYASU(B)とYOKO(D)を擁する5人組だ。ここ町田プレイハウスを拠点としていたLUNA SEAの「LOVELESSや、中森明菜の「DESIRE」など聴き応えのある楽曲をカバー。FAIRY FORE「VIVID」のブレイク部分で“♪ハッピーバースデー崇~”と合唱していると、なんと早くも現王園本人が登場してメンバーたちとハグ。
会場も十分に温まったところで、いよいよJaggeg Little Pillのターン。アラニス・モリセット1995年のアルバム『Jaggeg Little Pill』から「All I Really Want」がSEとして流れる中、メンバーが登場した。現王園はチェックシャツをゆるっと羽織り、裾をロールしたボトムと赤スニーカーというカジュアルないでたちだ。
1曲目はFAIRY FOREのミニアルバム『LOOP』に収録されていた「SWEET-ness」のセルフカバー。美しいトランス系のイントロに導かれ演奏が入ると、予想外のパワーに度肝を抜かれた。
「いい感じいい感じ、踊っていこうか」と現王園がオーディエンスを促しながら始まったのは、Jaggeg Little Pillの「Miss Say-La」。弦チームの3人はヘドバンしたりステップを踏んだり、アッパーなリズムを体現。現王園も激しく頭を左右に振り、歌の合間にも「声出して!」「もっとください。俺の誕生日だぜ!」などずっと声を出し続けている。
続く「恋の進化論~program Darwin」も、これまたバンドが全力でかかってくる楽曲。現王園はタオルをクルクル回しながら観客を煽る。ドラムの音量は半端なくデカいのだが演奏がきっちりタイトなので、他のパートや楽曲の魅力もクリアーに聴かせる。純粋な音圧が心地よい。
観客から飛ぶ「おめでとう!」の声に応えて、現王園が感謝を述べる。「最高な気持ちです。皆さんに対してブレがないよう、音楽を通して全力で皆さんの気持ちをハイにできたら。それだけは約束します」
「Deep in slowdance」もハードなナンバー。現王園はフロアに座り込んで歌ったかと思うと、立ち上がってモニターアンプに足をかけたり、少しの間もじっとしていない。
シンプルかつキャッチーな「かけちがえた魔法」は4つ打ちのビートがダンサブル。観客も体を揺らして楽しそうだ。
ここで現王園がお色直しのためしばし退場。その間はサポートメンバーであるTACA(G)と土屋トモカズ(D)がトークを。横浜7thアベニュー公演の際の動画撮影エピソードや、DVD作成のための動画編集裏話をはじめ、土屋が南アフリカへ旅行した時の事件についてなど、おもしろネタ満載。また、この日の前半でまさかのスネアヘッドが破れるというトラブルが発生した話題を前フリに、圧巻のドラムソロも披露した。
そして、集まってくれたファンや仲間への感謝を改めて述べてから、現王園はこう続けた。「次に皆んなと会った時にもっと音楽を楽しんでもらえるように、僕は明日からまた少しずつ積み重ねていきたいと思います」
ラストは「予感」。開放感ある明るい曲調のミディアムで、3.3.2の変拍子フレーズが入ったりするのだが、違和感なく楽しめるほど良質なポップさも併せ持つ楽曲だ。サビではオーディエンスが手を左右に振らし、弦の3人も軽くジャンプしながら演奏するなど、一体感に包まれて本編は終了した。
アンコールではGメン5も呼び戻し、この日の出演者が全員ステージに登場。現王園とYASU、YOKOの3人の姿がプリントされたバースデーケーキも用意され、ロウソクの炎を現王園が吹き消すと出演者たちがクラッカーを一斉に鳴らす。本当に温かくハッピーなひとときを味わった。
最後は、FAIRY FOREの楽曲でもありJaggeg Little Pillもアルバムでセルフカバーしている「この花が咲いて枯れるまで」を全員でセッション。最初はJaggeg Little Pillのメンバーが演奏を担当していたが、2番はGメン5のジュン(vo)がマイクを渡されて歌唱。後半ではベースとドラムもYASUとYOKOに交代し、FAIRY FOREメンバーによる演奏で有終の美を飾った。「YASUとYOKOちゃんは今日でいったん活動終了になりますので、しっかり目に焼き付けて!」という現王園の言葉が心に残った。
FAIRY FOREの再結成ライブをきっかけにJaggeg Little Pillの存在を知った人も多いかもしれないが、個人的には1人でも多くの音楽ファンにJaggeg Little Pillを聴いて欲しいなと思う。解散した過去のバンドを封印してしまうミュージシャンも珍しくない中、Jaggeg Little PillはFAIRY FOREの楽曲を2023年のスタイルに生まれ変わらせて演奏し、その延長に枝葉を伸ばす形で新しい活動を続けている。いわば現王園のライフワーク的な表現活動とも言えるのがこのJaggeg Little Pillなわけだが、2000年前後のV系ファンにも最新型ロックが好きな人にも刺激的に響くのがJLPの強み。同じ時代に生まれた1人のミュージシャンが今後どんな音楽作品を生み出していくのか、注視していきたい。
text by 舟見佳子