1945年の沖縄・伊江島で実際に起きた出来事をもとにした同作は、伊江島で激しい攻防戦が展開される中、2人の日本兵がガジュマルの木の上に身を潜め、終戦を知らずに潜伏生活を続けた約2年間を描く。原案は作家・井上ひさしさんが手がけた舞台作品で、今作は全編沖縄ロケで撮影。伊江島に実在するガジュマルの木の上での撮影も行われた。
舞台あいさつでは、堤が演じた役のモデルである山口静雄さんの三女・平春子さん、山田が演じた役のモデルである佐次田秀順さんの次男・佐次田満さんから手紙が寄せられた。
キャスト陣への感謝の言葉に、山田は「今、『前向きな映画だ』『明るく前を向くことが出きる映画だ』って言った映画なのに、泣きたくないけど、これはずるくないですか?」と涙を流した。続けて「悲しい映画という風に伝わるようには書かないでください」と報道陣に呼びかけ。「生きるということがテーマです」と、困難を乗り越えて“生きる”ことの希望を描いている作品だと念を押した。
続けて、佐次田秀順さんのご家族と会った際に「『あなたがいたから、私はここにいるんだよ』って言ってくれた」と告白。「『俳優のお仕事って何なんだろう』って思うこともあるのですが、こうやって何かを伝えられるんだなと思いました」と前を向きつつ、「戦争なんて本当に嫌だなって。戦争に限らず、誰かが悲しんでいるのなんて嫌だなって。俺は絶対元気を与えられる人間であろうと思ったので、泣きたくないんです」と思いを吐露。「だからどうか、映画の興行とかじゃなくて、こういう映画が広がってほしいと思います」と願いを込め、「もう、無理だ」と大粒の涙をこぼした。
堤は、山田の言葉に深くうなずき、「すてきな涙」と語っていた。
舞台あいさつには、津波竜斗、平一紘監督も登壇。今作にも出演した川田広樹(ガレッジセール)がMCを務めた。
【手紙全文】
■平春子さん(山口静雄さん三女)
戦後80年という節目の年に父の戦時中の苦難の体験を映画という媒体を通して多くの方々に知って頂ける事に万感の思いです。
私は父が生きて沖縄から還ってきてから産まれました。その命は子や孫へと受け継がれています。この映画を通して数多くの人々に「生きる」大切さを感じて頂ければ幸いと思います。
平監督、堤さん、山田さんが、この作品に対して並々ならぬ覚悟と熱意をもって取り組んで下さった事、TVのインタビューや新聞記事等で拝見する度に感謝の気持ちで一杯です。
特に堤さんが様々な取材の中で父に対する配慮の言葉をかけて下さる事が何より嬉しかったです。皆様の熱意が多くの人の心に届く事をお祈りいたします。
この映画のおかげで佐次田さんご子息と改めて深く関わる事ができました。おそらくその事を父は一番喜んでいるのではないかと思います。
■佐次田満さん(佐次田秀順さん次男)
戦後80年が経って戦争体験者が少なくなっていく中で、「2度と戦争はやってはいけない」と言っていた新兵の思いを映画で伝えてくれました。
木の上での撮影は大変だったと思います。真一さん、山田裕貴さん、そして平監督、横澤プロリユーサーの熱意に感謝です。
年齢も性格も経験も違う2人が戦争で傷つきながら、極限状態の中で徐々に理解し合えるようになって、支え合ってきたから「生きる」事が出来ました。
軍服姿の山田裕貴さんとお会いし、お父さんに会えたと思い、思わず抱きしめてしまいました。軍服の堤さんをみた姉は父が帰って来た時にみた父の軍足の記憶が鮮明に蘇ってきたみたいです。
父が見た風景を繰り返さない為に、この映画がより皆様へ伝わる事を願っております。