森永乳業が1975年に開設し、半世紀にわたり子育て家庭を支援してきた無料電話相談窓口「エンゼル110番」が2025年に開設50周年を迎えた。開設以来、相談件数や相談内容をまとめており、2009年からは「年間統計」として公表している中、最新2024年版では1通話あたりの平均相談時間が19分超えと過去最長を記録したという。
森永乳業はこうした長時間化の背景を探るため、親子の日(毎年7月の第4日曜日。2025年は7月27日)を前に、妊娠・育児期の親(妊娠中・未就学児を持つ男女)255名を対象に「育児の悩みに関する意識・実態調査」を実施。現代の育児相談に求められる役割を探った。

■子育ての情報収集は「ネットで調べる」が主流に “人に相談する”は後回しになりがち

 「子育て(妊娠中含む)の悩みは、ご自身の親の時代と比べて、複雑になっていると感じますか」という質問には、回答者の66.7%が「複雑化した」と答えた。男性は57.1%に対して、女性は72.0%と女性の方がより実感する場面が多いようだ。実際に「エンゼル110番」にも、核家族化によって自身の親に気軽に相談できない、インターネットに情報が溢れて正解がわからないといった問題や、仕事との両立、子育て方針の多様化、さらには理想の自分を追い求めるなど現代社会を反映するような悩み相談が増えているという。

 また、核家族化により、特に深刻になっているのが子育て中の孤独。「子育て(妊娠中含む)しているときに、周囲から孤立していると感じますか」という質問には、「そう感じる」と回答した方が18.4%、「どちらかといえばそう感じる」と回答した方が30.2%で、合計48.6%となり、妊娠・育児期の親の約半数が孤立を感じているという結果だった。

 では、子育てで悩んだときは、何で情報収集するのか。最も多かった回答は、「インターネット検索」で59.6%、次いで「家族・親族」が12.9%、3番目が「SNS」で11.0%となっている。回答をインターネット検索やSNSなどの「ネット情報源」、家族や友人などの「対人情報源」、書籍・雑誌などの「その他」の3カテゴリーに再編成して集計すると、最初の一手として「ネット情報源」を選んだ人が73.0%と圧倒的多数を占め、『対人情報源』は23.5%にとどまった。妊娠・育児期の親の情報収集はまず「ネットで調べる」が主流であり、人に相談するステップは後回しになりがちな傾向がうかがえる。


■最も悩み解決につながった情報収集手段、「対人情報源」が45.9%で最多

 73.0%が「ネット情報源」を選択した“最初の情報収集手段”の質問に対して、その手段で悩みは解決できたか尋ねたところ、59.6%が「一部解決しなかった」、10.8%が「解決しなかった」と回答し、合わせて70.4%が悩みを十分に解決できていない実態が明らかになった。多くの子育て世代の悩み解決手段は、インターネット検索やSNSなど“手軽なネット情報”に頼りつつも、それだけでは答えにたどり着けていない状況が推察できる。

 そこで、「実際、最も悩み解決につながった情報収集手段は何か」という質問をすると、最も多かった回答は「家族・親族」で18.4%、次いで「インターネット検索」16.1%、3番目が「医師・専門職」14.5%という結果だった。こちらも回答を「ネット情報源」、「対人情報源」、「その他」の3カテゴリーに再編成して集計すると、「対人情報源」が45.9%で最多となり、「ネット情報源」は33.3%にとどまった。

 先に示した“最初の情報収集手段”では「ネット情報源」が全体の73.0%を占めていたのに対して、悩みを最も解決できた手段では「対人情報源」が逆転して回答割合トップになっていることから、妊娠・育児期の親は、まずネットで手軽に調べるものの、本当に解決したい場面では人に相談する重要性を実感できる。

■親しい人にこそ相談しにくい現状…『エンゼル110番』“声のサポート”の必要性

 一方で親しい人に相談できるかといえば、必ずしでもそうではないという結果も明らかに。「子育てにおいて深刻な悩みが発生したとき、親しい人に相談しにくいと感じたことはあるか」という質問では、「そう感じる」と回答した方が14.9%、「どちらかといえばそう感じる」と回答した方が38.4%で、合計53.3%と、半数を超える割合が親しい人には相談しにくいと感じている。

 妊娠・育児期の親の約7割が“悩みは複雑化した”と感じ、半数が孤立感を抱えている一方、最終的な解決には“人への相談”が有効であることが明らかとなった今回の調査。この結果を受けて、「エンゼル110番」事業担当者は「長い対話を通じて不安を整理し、丁寧に“気持ち”に寄り添う姿勢をこれまで以上に徹底します」と今後の意気込みを語った。

「1975年5月の開設から50年、『エンゼル110番』は有資格者や研修でトレーニングを積んだ相談員による“声のサポート”で延べ100万件(※)以上のお悩みに寄り添ってきました。最新の2024年統計では1通話あたりの平均相談時間が過去最長の19分を超えています。育児不安や夫婦間の考え方の違い、周囲との関係づくりといった“悩みの核”は半世紀前と大きくは変わりませんが、インターネットやSNSで理想的な育児像があふれる今、「自分だけがうまくできていないのでは」と感じやすくなったことで、相談者の心の整理により多くの時間を要していると考えられます。
電話1本でつながる“拠り所”として、育児に関わるすべての皆さまにとってのサポート・ネットワークの一つであり続けたいです」

※1975年~2024年累計実績
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