この日はWOWOWでの「生中継」のほか、計15の配信プラットフォームでの「生配信」、全国325館での「映画館ライブビューイング」、“みるハコ”での「カラオケビューイング」も行われた。
海を進む帆船や緑豊かな森、たくさんの実をつけたリンゴの木、そしてアニバーサリーベストアルバム『10』のアートワークに登場していたさまざまなモチーフ。特別なライブの幕開けにふさわしいダイナミックなムービーとともに、大森元貴(Vo./Gt.)、若井滉斗(Gt.)、藤澤涼架(Key.)の3人がステージに登場した。
それぞれグリーン、ブルー、レッドの衣装に身を包んだ彼らが最初に鳴らしたのは「コロンブス」。空に舞う色とりどりの噴煙がここから始まるショウへの期待をたかぶらせ、巻き起こる大合唱が広大な会場を瞬く間にひとつにしていく。そんな圧巻のオープニングからスタートした同公演は、その後も様々な趣向を凝らしながら、10年という年月をかけて積み重ね、洗練させてきたミセス流のエンターテインメントの凄みを存分に見せつけていった。
4曲目「ANTENNA」を終えると、ステージ脇から大きな船を模したフロートが登場。3人はそれに乗り込み、客席の間を進んでいく。間近に近づくメンバーに、まだ序盤にもかかわらず、まるでクライマックスのような盛り上がりを見せるオーディエンス。そのフロートが向かう先には小さなセンターステージがあり、そこでは2020年のアリーナツアー「エデンの園」以来の披露となった「アンゼンパイ」が届けられる。
さらにセンターステージを後にした彼らは再びフロートに乗り込んでさらに後方へ。客席エリアの最後方にはもうひとつのエンドステージがあるのだ。
その頃にはすっかり日も暮れ、心地よい海風が会場を吹き抜けるように。まさに沈もうとする夕陽をバックに、電飾も映えるフロート上から放たれた「Magic」や「Feeling」が会場中に大きな盛り上がりを生み出した。
横浜のみなとみらいのビル群とも交錯する夕景が美しい。さらにバンドのデビュー10周年、そしてこの「FJORD」開催に際して、バンドのこれまでと今を描くために大森が新たに書き下ろしたという新曲「Variety」を披露すると、ここからライブはさらに振り幅大きく、ミセスの10年の軌跡を浮かび上がらせていった。
若井のギターが炸裂した「青と夏」で、この曲以降、動画・写真が撮影OKとなった。続けて、久々の披露となった「どこかで日は昇る」、藤澤のピアノと大森の鬼気迫る歌声が切実に響き渡った「天国」、そしてフェーズ2開幕を高らかに告げた「ニュー・マイ・ノーマル」。バンドが刻んできたマイルストーンを辿るように重ねられていく楽曲の幅広さが、ミセスの歩んできた激動にして怒涛の日々を物語った。
そんなライブ本編を「ダンスホール」「ケセラセラ」「ライラック」の必殺コンボで締めると、アンコールでは10年を遡るような映像から、ライブハウス時代の大森が叫ぶ曲名とともに「我逢人(がほうじん)」が歌われた。
大合唱が湧き起こる中、ついにライブは最後の曲へ。
ステージで演奏するバンドのはるか頭上、ステージ上空に1200機ものドローンが浮かび、ドローンアートでバンドのロゴやメッセージを描き出した。大森が繰り返した「愛してるよ!」の言葉と空中に浮かび上がった「THANK YOU ALL JAM’S」の文字、そして打ち上がる大量の花火は、バンドとファンが培ってきた固い絆を祝福するようだった。
ステージでメンバーは口々に何度も「楽しい」という言葉を口にし、実際に客席から見る彼らはとても楽しそうにしていた。いつも以上に出たとこ勝負のMCも含めて、純粋に自分たちの歩みを讃え、それを支えてくれたJAM’Sと分かち合う自然体のライブが、この「FJORD」だったのだろう。それをこの巨大な規模でやってのけてしまうところがミセスだが、ここのところ「Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”」や「Mrs. GREEN APPLE presents『CEREMONY』」のようなハイコンセプトなライブが多かっただけに、そのある種無邪気ともいえる姿を新鮮に感じる一方で、それこそが、取り巻く状況がいかに変化しても変わることのない、等身大の姿なのだろう。
なお、公演のセットリスト(※新曲「Variety」は含まれず)が公式プレイリスト「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」としてApple Music、Spotify、LINE MUSICで配信された。