お盆休み、仕事がある人もいるだろうが、旅行や帰省する人も多いだろう。だがお盆休み期間中は医療機関が休院になることも多く、地域によっては医師の不足もあり、普段通りに受診できない場合もある。
そんなとき、急な症状が出たらどうすればいいのか? お盆休みの前に準備したい事柄や注意すべき疾患、家に置いておくといい常備薬について、クリニックフォア・吉川裕章先生に聞いた。

■旅先や帰省先での受診、保険証はコピーでいい? マイナンバーカードは?

――お盆休み中は医療機関がお休みになることがあると思いますが、急な症状が出たらどうすればよいでしょうか?

 「一般病院でも救急外来は基本的にお盆休みも関係なくやっていることは多いと思いますので、本当に体調不良の場合は受診可能です。また、対面の医療機関だけでなくオンライン診療も選択肢のひとつです。オンライン診療でもきちんと診てくれる医師はいるので安心してください。旅先や帰省先で初めての病院に行くときは、保険証または保険証と紐づけたマイナンバーカード、お薬手帳などを持参するようにしてください。とくに薬に関しては、本人以外は家族でも何を飲んでいるかはわからない場合が多いですし、本人の意識がなかったり朦朧としているとき、誰かが代わりに対応するときにもお薬手帳が役立ちます」

――保険証はコピーでも大丈夫ですか?

「医療機関によっては、コピーでは保険の対象とならず、一旦100%自費対応になることも。保険証、またはマイナンバーカードを持参することをおすすめします。マイナバーカードを携帯に入れている場合も、医療機関での受付はまだできないので、マイナンバーカード本体を持参してください」

――近くに医療機関がない場合はどうしたら?

 「オンライン診療は、当院クリニックフォアをはじめお盆もやっている場合が多いので、試してみてもいいと思います。また、オンラインで保険診療は対応していないというイメージを持たれている方もいますが、当院では症状の相談のほかに保険診療で薬の処方もできます。たとえば熱中症だと診断されたら、症状によって頭痛薬、めまいを抑える薬、吐き気や下痢を抑える薬など。ただ重症である場合は、やはり救急外来に行くことを勧める場合があります」

――ただ、オンラインでどこまで診断できるものなのか、不安に思う人もいるかと…。

 「オンライン診療ができる医師は研修を受けているので、基本的に問題ないと思いますよ。
お話だけでなく患者さんの顔色や様子を見ることも重要なのですが、私の経験で言うと、心筋梗塞の方を診断できたこともあります」

――オンラインで!?

 「もともと血圧のお薬を出していた患者さんなので、前情報はあったのですが。オンラインで対面したところ、顔色が明らかに悪く、患者さん自身が用意していた症状を書いたメモに異変を感じました。そこですぐに大学病院への受診を指示し、無事に助けることができました」

――オンライン診療でも、かかりつけクリニックを見つけておくといいかもしれませんね。

 「そうですね。普段の様子との違いもわかりますし、判断がしやすいです。オンラインでどこまでわかるのかと不安を抱く方もいるかもしれませんが、カメラで表情も見られますし、隠れた病気発見の第一歩になることもある。便利さもあるので、使い方次第だと思います」

――受診するときには、事前に症状などをメモしておくといいのですか?

 「問診表でもよいですが、症状やいつも飲んでいる薬などを書いておいていてくださると、診察時に一から確認する手間が省け、より正確かつ短時間でアプローチできます。あと個人的にですが(笑)、やはり医師も人間なので、そこまで準備してくださるとより気合いが入ります。当院では、予約の際に事前問診があり、対面診療と同じように、症状や今飲んでいるお薬などを記載いただいています」

■お盆中にり患したら大惨事、この夏注意したい疾患と準備すべき薬は?

――では、お盆中にとくに注意しておいたほうがいい疾患はありますか?

 「この夏、帯状疱疹で受診する方が増えているんです。帯状疱疹は通常、暑い夏が終わった後の9月や、働きづめでほっとしたところで免疫が落ちる1月に多いのですが…。今年は4月・5月あたりで気温差が激しく、疲れがたまっているせいか、その後から帯状疱疹やヘルペスの患者さんが増えていますね」

――帯状疱疹が出る主な原因は?

 「主に疲れが原因となります。顔に症状が出ると美容的にも問題があったり、年配の方だと後遺症の痛みで、長期間ペインクリニックに通わなければならない場合もあります。
帯状疱疹は自分の中にあるウイルスの影響で発症するので、お薬がなくても治ることはあるのですが、早めに抗ウイルス薬の処方を受けて飲んでいただくのがいいと思います」

――お盆中に帯状疱疹とは、怖いですね。ほかに、家庭で用意しておいたほうがよい薬はありますか? とくにお子さんは急な症状が出ることが多いので、気になります。

 「解熱剤であれば、ロキソニンではなくカロナールがおすすめです。カロナールはアレルギーがある人以外は、小児成人問わず副作用が少なく安全性が高いのでおすすめです。あとはビオフェルミンなどの整腸剤。ほかに総合感冒薬、かゆみ止めなどもあると便利かなと思います」

――先生ご自身では、どんな常備薬を準備していますか?

 「同じような答えになりますが、私はカロナールと抗ヒスタミン薬(くしゃみ、鼻水、皮膚の腫れ、かゆみなどの症状を抑えるもの)、お腹が弱いので整腸剤は、薬局でも購入できますので準備しています。あと葛根湯ですね。葛根湯の味はお子さんが苦手な場合がありますが、副作用が少なく、妊婦さんでも飲めるものですので、常備しておくといいと思います」

<監修者>
吉川裕章
近畿大学医学部卒業後に京都大学医学部附属病院および関連病院にて臨床研修。大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)皮膚科に入局し、関連病院にて勤務。その後、プライマリケアに興味をもち、済生会千里病院総合診療部から大手総合電機メーカー専属産業医、都内での大学病院、訪問診療やプライマリケアクリニックで院長職を経験。現在はクリニックフォアで主に総合内科、皮膚科のプライマリケアを行っている。

(文:衣輪晋一)
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