■親は子を育てる“一方通行”だけではない「ストレートな感情に大きく突き動かされる」
「サントリー天然水」とアパレルブランド「CLOUDY」がコラボした企画「WHAT IS 20?」は「20年後の未来を想像する」がテーマ。20年とは、山地に降り注いだ雨や雪が、天然水として育まれるまでに費やす年月。生まれたばかりの子が大人になるほどの時間だ。
そんな「サントリー天然水」のCMに出演している柄本は、「持っているな、としか言えないんです」としみじみ語る。
CM撮影で訪れたロケ地は、天候が変わりやすい場所。しかし、カメラが回ると奇跡のように美しい自然が姿を現したという。大地からパワーをもらい、作品が作られていく感覚。雄大な自然と、そこに生きる人間の営みが描かれるCMの世界観は、柄本自身の心にも深く響いている。
親が子を見守るように、自然もまた人間を見守っている。
「子どもからは学ぶこと、もたらされることしかないと言っても過言ではないような気がします。子どもが学ぼうとする姿勢って、ある種非常にピュアなものなので、そこから出てくるストレートな感情には大きく突き動かされます。大人になってくると色々考えてしまうじゃないですか。そういったものとは別のところから、純粋に出てくる子どもから学ぶことは非常に多いです」。
大人がいつしか身につけてしまう思考の鎧。子どものピュアな感情に触れるたび、「鎧が少しずつ外されていくような感覚」があるという。何気ない日常の触れ合いによって、自身の内にある邪念すら清らかなものになっていく。それは「育てる」という一方通行の関係性ではない。
「一緒に過ごすこと、例えば手をつないだり、頭をなでたりとか……。なんかそういう行為だけでもちょっとずつ浄化されていく感覚があります。子どもに守ってもらっているっていう感覚はものすごくありますね。
■「良い、悪い」という評価軸とは違う次元で、仕事に向き合いたい
20年後の夢を「幸福であること」と語った柄本。子どもに守られて感じる、日々のふとした瞬間の「幸せ」。その状態を20年後も持続させることは「容易なことではない」と語る。それはまるで、同じ味を守り続ける老舗の蕎麦屋が、日々の湿度や気温で水の量を変えるような、繊細で不断の努力を要する営みに似ている。この「日常の基盤」を厚くしていくことが、俳優としての在り方にも深く結びついている。
「どんな俳優でありたいかということは、基本的には考えたことがないんです。もっと言えば『こういう役をやってみたい』みたいなことも基本的にはあまりなくて。ただ、歳を重ねてきて40代にこれから突入する中で、昔は良いとか悪いとかっていう評価基準に割と翻弄されてきたけれど、そういうレベルからは脱していかないといけないなとは思っています」。
かつて翻弄された「良い、悪い」という評価軸とは違う次元で、仕事に向き合いたい。そのために不可欠なのが、揺るぎない「日常」だという。たとえ俳優として良くない状態に陥ったとしても、それすら楽しめるような強さを持ちたい。
「日常の基盤を厚くしていきたい」と語った柄本。20年後も「幸せであること」に思いを馳せた言葉には、俳優として、人として、父親としての思いが込められているように感じた。