■二重が前提の説明にショックを受けた過去…「どんな特徴があっても生かすことができる」メイクで自分の理想に
ゴスロリ、ピエロ、ハーレークインと、さまざまな人物に変身するメイク動画を投稿している、美容系クリエイターのろるどーるさん。中学生のとき、好きな人に振り向いてもらうために自分磨きを始め、メイクに興味を持ち始めた。しかし、メイクを研究するためには自分の欠点と向き合わなければならず、自分磨きをすることで自己肯定感が低くなってしまったという。
「アイシャドウを塗るにしても、二重であることが前提の説明ばかり。当時の一重メイクは暗くてクールな雰囲気のメイクばかりでした。メイクでかわいく見せることを目指していた私は、そこでショックを受けてしまいました。メイク動画も完成された美しい顔に色を塗るようなものばかりで、自分のコンプレックスを改善できる情報を探すことは難しかったです。何より、SNSの影響で『整形して幸せになろう』という考えに洗脳されてしまっていて、当時の私は自分の顔を整形で直したくてたまらなかった。今上手くいかないことは全てこの醜い顔のせいで、整形して美しい顔になれば幸せになれると本気で思い込んでいました」
そこから、可愛い系統の一重メイクや鼻を綺麗に見せるメイクを生み出したことで、自分の理想の顔になることができたというろるどーるさん。
「とてもうれしかったですし、何より、どんな特徴があっても生かすことができるという事実が、私に自信を与えてくれました」
メイクによる変化の振れ幅や可能性を表現するため、普段のメイクで意識していることの逆を行う“垢入りメイク”の動画も投稿している。
「最近はメイクのビフォーアフターのbeforeの顔をグチャグチャに加工している動画が多い中、『どうせだったらメイクの力だけで大変身しよう!』と思い、垢入りメイクを企画しました。メイクによる変化を動画で表現することで、メイクの楽しさをみなさまに伝えたいです」
メイク方法のほかにも、ルッキズムに関してのポジティブな発信も行っている。SNSなどでの過剰な容姿イジりのせいで、元の自分を隠すかのようなネガティブな意味でメイクや美容をする人が増えていることに悲しみを感じているという。
「女の子が苦しんでまで顔を変えることが、本当の幸せだとは思わないです。本当に変えるべきは、世界だと思っています」
ろるどーるさん自身は、メイクをすることで「こんなに変われるんだ!」と実感したことで自信がつき、すっぴんの顔も受け入れることができるようになったそう。
「私が整形をしない理由は、『変えるべきは顔じゃない。平気で容姿を否定することを許してしまっている世界』ということを理解しているからです。私が変えたいのは自分の顔じゃない。世界です。今後さらに有名になることで、どれだけ誹謗中傷をされても、私が幸せでいるところを視聴者様に見せたい。世間が理想とする顔じゃなくても幸せになれることを私が証明していきたい。メイク系魔法少女として、容姿に悩める人を幸せに導いてあげられるような発信をしたいと思います」
■モノマネメイクは「なりたい」を表現できるコンテンツ「誰かに否定されても気にしないでほしい」
芸能人の半顔モノマネメイクをSNSに投稿して注目を集めているHIMARIさん。
「当時は世界観メイクやコスプレのような誇張したメイクしかなかったため、再現性のあるモノマネメイクとして、たくさん反響をいただきました。思い返すと、自分がメイクを始めたときにも、ギャル雑誌で見た大好きな人のメイクや表情まで真似していたなと。そこから私は垢抜けられたし、自分の好きな人に少しでも雰囲気が近づくと、自分が少し可愛く見えてうれしかったなと思い出しました。何よりサナちゃん風メイクを通して、自分自身も新たな発見がたくさんありました」
モノマネメイクは、自分の分析技術やメイクの可能性をより多くの人に楽しく伝えられ、「みんなのなりたい」を表現できる最適なコンテンツだと感じ、そこから発信の方向性を変えた。
「最初は1人の顔を再現していましたが、より1つの動画内の情報量を増やすために“半顔メイク”を始めました。また、時事ネタは関心度が高く、コメントが盛り上がる点に着目し、“ケミ”を意識した撮影企画を行うようになりました。結果、1つの動画内で雰囲気の違う顔がメイクで作れるようになりました」
憧れの人の顔をメイクで再現する一方で、HIMARIさん自身は、腫れぼったくて小粒なつり目、大きなにんにく鼻、尖った唇、ふくらんだ頬、下ぶくれの輪郭、垂れ下がった眉毛など、さまざまなコンプレックスを抱えていたという。
「特に印象に残っているのは、小学校の美術の時間。自画像を版画で描く授業で、鏡を見ながら下書きをしていたときに、『美術が得意なわけじゃないのに、すごく雰囲気が出ている』と思うほど、そっくりな絵が描けたんです。でも、完成した絵を見たときに、そこに写っている“自分”があまりにも不細工に見えてしまって(笑)。 誰にも何も言われていないのに、自分で『私ってやっぱり可愛くないんだな』と思いました。
小学校の卒業アルバムはHIMARIさんのなかで“嫌な思い出”として残っている。
「卒アルが配られて、ある男の子に『この顔やばっ』と笑われたときに、自分も認めざるを得なくて笑って誤魔化したのも嫌な思い出として深く残っています。そこから少し前まで、いつか卒アルの写真などが晒されるのではないかと怖かった時期がありました。一つひとつの経験が積み重なり、もともと男勝りなこともありますが、より一層そういうキャラでいたほうがいいという感覚が強くなった気がします。そんな経験が重なって、美容や“可愛い”に対して抵抗が強くなっていきました」
そんな経験から、「人の目を気にしたり、自信がなくて自分自身に対して諦めていたりする人たちに向けて、自分の可能性を感じて人生をポジティブに楽しんでもらえるような発信をしていきたい」というHIMARIさん。
「誰かに否定されても気にしないでほしい、私があなたを肯定する、メイクでなりたいは作れるし、変わりたいなら世間の目は気にせずに挑戦してみてほしいと、伝えていきたいです」