『あんぱん』は、国民的キャラクター・アンパンマンを生んだ漫画家やなせたかしと、その妻・小松暢(のぶ)をモデルにした作品。
“アンパンマン”の生みの親として、子どもから大人まで日本中で親しまれてきたやなせたかしは、漫画家としてだけでなく、絵本作家、イラストレーター、詩人、歌手など、多岐にわたる創作活動を長年にわたり続けた人物。2013年に94歳で惜しまれつつこの世を去ったが、その多彩な表現活動のひとつとして、1970年代後半に手がけたレコードシリーズ『0歳から99歳までの童謡』がある。
このシリーズでは、やなせが作詞し、作曲家・いずみたくとのコンビで1976年から約1年半の間に3作品を発表。「手のひらを太陽に」をはじめ、全編がやなせ作詞・いずみ作曲によるオリジナル童謡で構成されており、水森亜土、大和田りつ子、杉田かおる、宮脇康之ら多彩な歌手が参加。装丁も、やなせ自身による描き下ろしイラストで彩られており、心温まる作品としてていねいに制作された。
しかし、これら3作はいずれも長らく廃盤となり、入手困難な状態が続いていた。そうした中で、やなせの功績を改めて伝えることを目的に、2014年にシリーズ全曲を収録したCD2枚組として初の復刻リリースが実現。再び世に届けられることとなった。
アルバムには、やなせといずみが当時寄せたライナーノーツも収録されており、「子どもから大人まで、年齢の垣根なく気軽に歌える曲を届けたい」という思いが随所につづられている。やなせは「詩はとにかくとして、仲々いい歌ができた」と手応えを語り、いずみは「“手のひらを太陽に”の第二弾がきっと出てくると信じている」と記している。
発売から10年を経てロングセラーを続ける同作は、今回のドラマ放送を機に改めて注目を集め、ユニバーサル ミュージックには視聴者からの問い合わせが多数寄せられているという。
温かみのある童謡の数々とともに、やなせたかしが遺した“真心”を、ブックレットとともに味わえる貴重な作品集となっている。