■腕利きミュージシャンが支える桑田佳祐の音像
落語をモチーフにしつつ現代的な視線による言葉選びの妙が際立つ歌詞、艶やかで表情豊かな旋律を生み出していく桑田のボーカル。そのふたつの宝石を磨き上げるのが、ひとつひとつこだわり抜かれた楽器の響きである。共同編曲としてクレジットされる片山敦夫に加え、曽我淳一という信頼厚い2人との共同作業で組み上げられたサウンドメイク、斎藤誠のギター、金原千恵子のバイオリン、山内薫のベース、原 由子とTIGERのコーラスなど、サザンオールスターズやソロ作品で信頼を積み重ねてきたチームが、桑田の描く音楽像を鮮やかに具体化していく。そのサウンドスケープは一聴してカラフルで奥行きに富む。
冒頭のアコースティックギターのストロークから、強く惹きつけられる。開放弦が絶妙なスパイスとなっているAm始まりのコード展開は一瞬で耳を引きつける。本作も桑田ソロ史上に残る名ギターイントロのひとつと言えるだろう。続くGS風の分厚いギターリフは、シンプルなペンタトニックスケールを用いた音使いでありながら、楽曲の輪郭を決定づける要石である。桑田が考えたメロディを斎藤とともにギターフレーズに仕上げていったものらしく、ストレートでありながら強く印象に残るそのリフは、70年代GS風でもある。まさにここにも“NEW 70’S”の風が吹いている。
■原 由子のコーラスとチームのシャウトが導くサビのカタルシス
歌が始まると、アコースティックギターのシンプルなストロークがボーカルを際立たせるAメロ、浮遊するシンセと力強いピアノがボーカルラインに絡みつくBメロは琴のような音色でサビへと橋を架ける。サビでは原とのコーラスに、艶やかなバイオリンのフレーズが寄り添い、すべてが開放されるカタルシスを迎える。401st All Starsと名付けられたチームのシャウトは、合奏の楽しさを讃えるようでもある。
■力みのない余白が色気を生む、円熟のボーカル
桑田が放つ現役バリバリ感はどこからくるのか。ボウリングや水泳での体力作りは知られているが、半世紀に届こうかというキャリアにあってなお、音楽ファンの期待を軽々と越えてくる。その根幹にあるのは、稀代のソングライターとして紡ぎ出すメロディの強度と、ボーカリストとしてのずば抜けた表現力にほかならない。その揺るぎない輝きを、腕利きのミュージシャンたちが隙のないプレイで引き立てる。本作はその結晶と言えるだろう。人選も人望も才能の一部とするならば、桑田のマジックをまたひとつ垣間見た気がする。
何よりも印象的なのは、表現者として力みがなく自然体であること。余白をまとった円熟が、色気を際立たせている。だからこそ、次の新曲をまた聴きたくなるのだ。
7月からは全国10ヶ所22公演を巡るアリーナツアーが決定している。“NEW 70’S”桑田佳祐が、ステージではどんな景色を描くのか、楽しみに待ちたい。
(文・鈴木伸明)


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