本年10月2日に10周年という大きな節目を迎えるQuizKnock。「楽しいから始まる学び」をコンセプトに、“知的エンタメ集団”という唯一無二の立場を築いてきた彼らの過去・現在・未来を詰め込んだ、10年の集大成となる記念本『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』(KADOKAWA)が、16日に発売された。
本書の制作秘話や10年間の軌跡、そして今後の展望について、伊沢拓司、ふくらP、須貝駿貴、山本祥彰の4人が語った。

■10年間の軌跡と『十字路』に込めた思い

――10周年を迎えるにあたり、この10年の感想や周囲からの反響をお聞かせください。

伊沢拓司(以下、伊沢):まずは感謝ですね。これまで続けられたのは、応援してくださるファンの方々や、一緒にコンテンツを作ってくれたスタッフのおかげです。「10年やったな」という達成感というよりは、本当に日々を楽しんで過ごしていたら、あっという間に今になっていたという感覚です。色々な人のおかげでこうした人生を送れたことに、感謝しかありません。

ふくらP:本当にあっという間でした。10周年プロジェクトは10年間応援してくださった皆さんに感謝を伝えるために始まったプロジェクトなのですが、実際に進めていくと多くの方から「10周年おめでとうございます」と祝福していただき、どうやって恩返しをすればよいかと困ってしまうほど、うれしい状況です。

須貝駿貴(以下、須貝):感謝が前提にありますが、その上で「継続は力なり」だと感じています。続けてきた事実が、これからの我々をさらに大きくドライブしてくれるのだと。こうして様々な人に囲まれて10周年を祝えるのも、継続の力だと実感しています。

山本祥彰(以下、山本):様々な人がいてこそのQuizKnockだと改めて感じています。
今の我々を作り上げてくれたみんながいなければ、メディアとして成り立っていませんでした。その上で、常に前へ進めようとする力でチームを引っ張ってくれた伊沢さんにも非常に感謝しています。

――記念本『十字路』のタイトルには、どのような思いが込められているのでしょうか。

伊沢:以前、登録者数が200万人を突破した際に「QuizKnockは知の交差点だね」と表現したことがありました。多様な人が行き交い、知識が通り過ぎていく。その交差点の隅っこでコーヒーを飲んでいると、自然と面白い情報や人に出会える。誰か特定の人物ではなく、そうした「場」そのものがQuizKnockでありたいと思っていたのです。今回、10周年の「十」という字を見たとき、「十字路って言い換えちゃお」と思って。過去という道が交わり、未来にも繋がっている。感謝と挑戦という10周年のテーマにぴったりの言葉だと思い選びました。

――本作が制作されることになった経緯と、大切にしたテーマを教えてください。

伊沢:感謝と挑戦を伝えるにあたり、イベントだけでなく、形として「フィジカルなもの」を残す意義があると考えました。
我々の熱量を物量として伝えるツールとしては本が最適だろうと。テーマは「オールQuizKnock」です。実は今回の表紙には我々演者の写真ではなく、QuizKnockのカラーと『十字路』という文字だけが配置されています。個々のメンバーではなく、「QuizKnockという看板」こそが最も大切だというメッセージを込めています。

――本作の中で「特にここを見てほしい!」というポイントはどこでしょうか。

伊沢:一番は圧倒的な文字量ですね。昨年の4月に企画を持ち込んだ段階から、しっかりとした読み物にしたいという基本テーマがありました。そのため、記念本とは思えないほど文字が小さくて細かいです(笑)。その膨大な文字に対して、校正・校閲はKADOKAWAさん側だけではなく、QuizKnockのチームも凄まじい量のチェックを行ってくれました。文字量の背景にある「QuizKnockのチーム力」も読者の皆様に感じ取っていただきたいです。

ふくらP:網羅性の高さです。どうしてもメインチャンネルの印象が強いかもしれませんが、実際にはWebメディアやイベント、他のチャンネル(GameKnackやQuizKnockと学ぼうなど)も運営しています。
本作はそうした活動も取りこぼさずに伝えようと作られており、今まで語られにくかった部分にもしっかりとフォーカスできた一冊になっています。

――制作過程で印象に残っていることはありますか。

須貝:写真撮影の際、カメラマンさんが一緒にジャンプしてくれたり、元気に撮影できたのがうれしかったです。「クールな表情で」と指示された時、普段ずっとニコニコしている鶴崎(修功)がにらめっこをしているような顔になっていて面白かったですね。他のメンバーの緊張している顔を横から観察できたのも、新たな一面を見られたようで楽しかったです。

山本:私は謎解きを制作し、この本に仕掛けられたことが非常に嬉しかったです。本作がこれまでの活動をまとめた単なる記録集で終わるのではなく、我々が信じる「楽しいから始まる学び」の良さを詰め込みたかった。そこで1冊を丸々使った壮大な謎解きを仕掛け、「ここにも楽しさがいっぱい詰まっているぞ」というメッセージを込めました。

■メンバーの変化と、心を揺さぶられた10年の出来事

――この10年で、一番「変わった」と感じる人、「変わらない」と感じる人を教えてください。

伊沢:一番変わったのは河村(拓哉)さんですね。サークルの先輩・後輩として出会いましたが、この10年で家族を持ったり、小説も書いたりと、一直線に変わったのではなく「色々な河村さん」が増えていった印象です。逆に変わらないのは須貝さんです。
参加した初日からYouTuberとしての振る舞いができていましたし、自分の専門分野を突き詰め続ける姿勢は昔から変わらない魅力です。

ふくらP:私自身が一番変わったと思います。昔は学級委員や班長にも手を挙げない、リーダー経験が全くない普通の学生でした。それが今では、企画、撮影、編集など各チームのリーダーたちをさらに束ねるプロデューサーを務めています。10年前には全く想像していなかったことを日々やっており、振り返ると本当に変わったなと感じます。

須貝:東問と東言の成長スピードには驚かされます。彼らは大学の学部生の途中で加入しましたが、人に楽しんでもらう動画の作り方を彼らなりに一生懸命考え、我々が数年かけて培ってきたものを凄まじいスピードで吸収してついてきてくれました。このままいけば「クイズ王とは伊沢拓司ではなく東兄弟のことである」と言われる日が来るかもしれないほどの勢いを感じます。

山本:伊沢さんは変わらない良さがあります。先日、伊沢さんの高校時代を知る方から、当時から自分が面白いと思ったことを実現するために全力で、進行が押していても突き進む姿勢があったと聞きました。

伊沢:高校生のクイズ大会を主催した時、こだわりすぎて条例ギリギリの夜9時半まで終わらず、後輩がブチギレていたという…あれは反省です(笑)。

山本:でも、そこが良いところだと思うんです。
好きなものや目指すものに向かって全力で突き進む姿勢が今も変わらずあるからこそ、みんながついてきたのだと思います。

――これまでの活動の中で、印象に残っている言葉はありますか。

伊沢:初期の頃、社内のスタッフから「本当に仕事が好きなら、自分で抱えずに他人に頼れ」と言われたことです。当時は自分がやらなければと思い込んでいましたが、「本当にQuizKnockを愛するなら頼れる仲間がいるじゃないか」と気づかされました。そこから分業制が進み、チームに頼ることで自分の仕事に集中できるようになったので、大きな転機となる言葉でした。

ふくらP:一緒に制作や編集をやっていた裏方の「赤井さん」というスタッフから言われた、「まずは完成」という言葉です。私は完璧主義で進行が遅れることがあったのですが、この言葉を聞いて以来、現在のクリエイティブにも大きく影響しています。また、100の質問で答えた好きな四字熟語「是々非々」も、彼から教わったものです。

伊沢:実は初期の頃、オフィスのトイレにマーク・ザッカーバーグの「完璧を目指すよりまず終わらせろ」という名言が貼ってあったんです。「まずは完成させろ」という意識を、初期の我々は同じように学んで大人になっていきましたね。

――この10年間で、一番感情を揺さぶられた瞬間を教えてください。

須貝:博士号を取得した時です。
20代後半になると生活やお金の問題がつきまといますが、QuizKnockでの活動で生活を安定させつつ、論文提出前の数ヶ月間はお休みを認めてもらいました。メンバーから専門性を持つことの素晴らしさを肯定してもらい、無事に発表会が終わった時には、この知見をQuizKnockや社会にいっそう還元していけると思え、未来が開けて本当にうれしかったです。

山本:YouTubeのチャンネル登録者数が100万人を突破した時です。それをきっかけに「YouTube FanFest」に出演し、大勢の方々の前で表彰していただきました。これほど多くの人に影響を与えられるようになったという自信とともに、期待され続けることへの責任や、これからどうしていけばもっと大きな力を得られるのだろうという未来への不安も感じ、色々と考えさせられた瞬間でした。

■フロントマン・伊沢拓司の存在と、これからのQuizKnock

――初期からともに歩んできた皆さんに伺います。伊沢さんの存在は、ご自身にとってどのようなものでしたか。

山本:伊沢さんの素晴らしいところは、本当にクイズが大好きな点です。あんなに忙しいのに、休みの日にはクイズ大会に行っているんですよ。我々もクイズが好きで集まっていますが、たまには離れたいと思うこともあります。そんな中で、伊沢さんが変わらずクイズを愛し続けてくれるのは、引っ張ってもらう側として非常に安心感があります。

ふくらP:ついていきたくなるカリスマ性ですね。本作の前書きと後書きを読んだ時も、今まで応援してくださった方が「応援してきてよかった」と思える素晴らしい文章になっていました。ただ、ギャグはよくスベるので、コンテンツ作りなどは私に任せてもらいたいですね(笑)。

須貝:私は彼が『東大王』に出演している時から見ていましたが、最初はある種のアンチだったと思います。もちろんクイズができるのは素晴らしいことなんですが、「東大とは」「賢さとは」ということを考えさせられました。そして、「自分がしている研究という素晴らしいことを、どうやって社会のみんなと分かち合うべきか」を深く考えるきっかけにもなりました。テーゼに対してアンチテーゼがあり、そこからアウフヘーベンしてさらなる高みに行ける。同じ方向を向きつつも反対の立ち位置にいる存在だからこそ、彼がリーダーでありながら、私自身もまた別の形でリーダーになれると思わせてくれました。

伊沢:ちなみに、私は自分でリーダーと言ったことは一度もありません(笑)。私はあくまで「フロントマン」であり、インタビューで最初に答える係です。私がいなくても回る優秀なチームがあるので、私がリードしているつもりはなく、人前で思想を喋るのが得意な役割、くらいの感覚ですね。

――最後に、10周年を迎えたQuizKnockの今後の展望をお聞かせください。

伊沢:まずは10周年の節目にしっかりと感謝を伝え、それが未来への期待に繋がるようにしたいです。我々はまだ知名度が足りない部分もあるので、今まで以上に日常の様々な局面でQuizKnockを見かけるようになってほしい。「楽しいから始まる学び」を届けるという目標を胸に、形を変えながらより世間に浸透できるよう頑張ります。

ふくらP:本作を読み返し、チャレンジングなことをやり続けるのがQuizKnockの良さだと再確認しました。20年、30年先を見据え、登録者数も300万人、400万人と伸ばし、この10年でやりきれなかった未知の挑戦を続けて、まだ我々を知らない方々にも届けていきたいです。

須貝:継続することの素晴らしさを噛み締めながら、これからも長く続いていく組織でありたいです。そのためにはインフレする世の中に負けず、我々自身も変化し、届ける規模をさらに大きくしていく必要があると思っています。

山本:個人的には、より「リアルな体験」を届けたいです。これまでは動画を通じた体験の提供が主でしたが、今後はもっと実感を伴うリアルな体験の場を提供できるよう、力を注いでいきたいです。
(取材・文:磯部正和)

ヘアメイク:中山八恵 Yae Nakayama
スタイリング:大瀧彩乃 Ayano Otaki
伊沢拓司:ニット/ふくらP:シャツ/須貝駿貴:ノーカラージャケット・パンツ
FRAPBOIS(フラボア)
BIGI CO.,LTD.

■『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』
価格:2500円(10%税別)
発売:2026年4月16日(木)
発行・発売:株式会社KADOKAWA
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