NHK連続テレビ小説『虎に翼』と劇場版の脚本を手がける吉田恵里香氏、梛川善郎監督が3日、法務省のイベント「法の日フェスタin赤れんが2026」のトークセッションに登壇した。立ち見も出る盛況となった会場で、主人公・寅子が口にする「はて?」が話題に。吉田氏は「対話に必要なものが全部入ってる」と、その言葉に込めた意味を語った。

 毎年10月1日の「法の日」は、法の役割や重要性を考えるきっかけとして設けられ、その日から1週間を「法の日週間」として各地で催しが行われる。今回のイベントでは、劇場版『虎に翼』とのタイアップ企画として、作品のカットを交えて法曹の歴史を紹介するパネルや、撮影で使用した小道具を展示。締めくくりに、2人による「《クロージングダイアログ》Beyond the Pioneers’ Dream ~つなぐ想い、未来へ~」が開かれた。

 2024年度前期(4月~9月)に放送された『虎に翼』は、日本初の女性弁護士の一人で、後に女性初の判事・裁判所長も務めた三淵嘉子さんをモデルに、伊藤沙莉演じる寅子(ともこ)が仲間たちと道を切り開いていく物語。吉田氏は冒頭、法務省とのコラボを、「すごく希望に満ちたいい話だなと思っております」と喜んだ。

 トークでは、昭和の法曹界を描くために重ねた勉強会や資料調査が話題に。吉田氏は、当時の課題を知るたびに「これ、今も一緒じゃん」「これ、ちょっと変わっただけじゃん」と感じることが多かったと振り返った。

 寅子たちの時代から続く問題について、「今こそこの負のバトンを令和で止めよう」という思いを込めながら、変わっていないことだけでなく、少しずつ前進していることも描こうとしたという。梛川監督も、法律や社会を変えようと、あきらめずに仕事や対話を続けた人々の歩みを経て、今があることを大切にしたと語った。

 当時の明治民法では、妻は「無能力者」として扱われ、一定の法律行為に夫の許可を必要とするなど、行為能力が制限されていた。梛川監督は、「無能力者」という言葉に触れた時に、「ちょっと待って」という気持ちになったと回想。100年前の人々も同じように「えっ」と感じたはずだとし、「そこが多分一番大事だし、そこに共感してほしいと思った」と説明した。

 吉田氏も、法律用語としての意味は理解しつつ、「でも無能力って言葉は…ねぇ」と違和感を覚えたといい、当時の人々も抱いたであろう驚きや疑問を、生身の感覚として描こうとしたことが、寅子の「はて?」につながったと語った。

 「はて?」は、「相手に疑問を投げかけるだけの言葉ではなく、『怒ってもいいんだよ』とか、『ムカついてもいいんだよ』って言葉でもあるし、対話の合図でもある」と吉田氏。自問する言葉でもあり、自分自身にも返ってくるからこそ、「対話に必要なものが全部入ってる。すごい便利なワードだな」と、今も感じているという。

 梛川監督も「同じ『はて?』でもいろんなニュアンスがある」と、その表現の豊かさに言及。吉田氏が「私が考えました」とユーモアを交えてアピールすると、会場から拍手が沸き起こった。

 また、昭和初期から始まる物語が、今を生きる人々に届いたのか。吉田氏は、作品が誰かの心の支えや励みになり、単純に面白いと感じてもらえたなら「それが答え」だとしつつ、エンターテインメントには、その時代や人生で足りていないもの、欲しいと思っているものが面白く感じられる側面があると話した。

 平和や平等が十分に守られていない今の社会では、理不尽なことに疑問や怒りを感じても、口にできずにいる人がいると指摘。『虎に翼』は、そうした人々に「おかしいことはおかしいと言っていい。声を上げる後押しができたのではないか」と話した。

 梛川監督も、モヤモヤを感じながらも「まあいいか」「とりあえず言わないでおこう」としまい込んでいた言語化しづらい感情を、吉田氏の脚本が引き出したと評価した。

 『劇場版 虎に翼』は2027年1月15日公開。モデルとなった三淵さんは、1979年に裁判所を退官した後も弁護士として活動し、さまざまな役職を務めた。梛川監督は、三淵さんが亡くなるまでの数年間をイメージし、最後まで多方面で仕事を続けた姿をモデルに、吉田氏と新たな物語を作ったと説明。「また楽しんでいただければと思います」と呼びかけた。

 最後に吉田氏は、劇場版をきっかけに、疑問に感じたことや納得できないことを周囲の人と語り合ってほしいと呼びかけ、「そうした対話を重ねることが、よりよい未来につながってほしい」と願いを込めた。

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