全国各地の農林水産業の生産者と国内外の食品事業者の販路拡大を目的とした大規模商談会「第18回アグリフードEXPO東京2025」が8月20、21日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催され、初出展194を含む527の生産業者などが参加、バイヤーらと積極的な商談を交わした。開会式であいさつした笹川博義・農林水産副大臣は「日本農業の足腰を強靱(きょうじん)化し、世界の消費者においしく楽しんでもらうという強い意思を持って各種政策を推進していく」と話した。

 ▽自身持てるもの提供

 「出品する商品数が増えるにつれ、多くのお客さんとつながりができた」。アグリフードEXPOには2006年度の第1回から大阪開催も含め30回すべてに出展している早和果樹園(和歌山県有田市)の秋竹俊伸代表取締役社長は語った。「最初は、茶髪ロン毛で右も左も分からない状態で(先代社長の)父親の横に立っていた」という。商品も最初はみかんジュースやシロップ程度だったというが、その後、ゼリーやジャム、ポン酢などに幅を広げていった。

 少子高齢化による後継者不足や気候変動など現在の農業にはさまざまな困難が立ちはだかっている。それでも「逆に商品の単価は上がっている。これを追い風だと捉えられるかどうかが大事なところ」と持論を展開。近年は、海外での戦争や紛争の影響もあり食料安全保障に対する関心も高まっている。「かつてのように食べられればいい、安ければいいという時代ではない。食料に対する消費者の意識は高まっている。自信を持って提供できるものを作っていきたい」と話した。

 ▽中山間地を元気に

 「雷に打たれたような感じだった」。

アグリフードEXPOのセミナーで、宮崎県高千穂町で山椒の栽培に取り組むようになったきっかけを紹介した、しいたけの生産・加工・販売を行う杉本商店の杉本和英代表取締役が振り返った。約10年前に大手のハウス食品から「産地形成プロジェクト」として山椒を栽培しないかと声を掛けられた。最初は「山椒なんて農家の庭先に生育しているもの」として相手にしなかった。

 ところが、担当者が送ってきた本を読み、しいたけと山椒は収穫時期が逆で、乾燥にはしいたけ用の乾燥機が使えることなどを知り衝撃を受けた。この日は「世界中、この格好で回っています」と、しいたけのかぶりもので登場。近年は、海外でも「山椒はあるか」と聞かれることが増えたという。プロジェクトに参加した地元の農業高校の生徒からは「アロマにも使える」とのアイデアも出るなど、「山椒が中山間地を元気づけている」と目を輝かせた。

 ▽食料システムの持続性

 セミナーでは、農水省の阿辺一郎・原材料調達・品質管理改善室長が、合理的な価格形成や食品産業の持続的な発展を柱として今年6月に成立した「食料システム法」について説明。「原材料調達の安定化のための取り組みを応援・サポートしていく」と話した。会場では、農林水産食品やアルコールを含む飲料品の海外における規制や検疫体制について相談できるコーナーも設置された。

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