※本稿は、菅澤孝平『親の過干渉こそ最強の大学受験対策である。』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■「親世代の受験」と「今の受験」はまったく違う
最初にはっきり申し上げます。
本書をお読みの親世代(主に40~50代)が経験してきた受験と、現在の受験は、まったくの別ものです。大切なので繰り返します。「まったくの別もの」です。
どういうことか?
以前は、大学受験というのは生徒一人で考え、自ら進めていくものという認識が一般的にあったと思います。
しかし、昨今の大学受験は状況が変わり、生徒一人では乗り越えられるものではなくなりました。子どもを塾に行かせたり参考書を買うお金を渡したりといった「経済的サポートだけすればいい」というのは、すでに過去の話。もはや、保護者はただ経済的なサポートをすればいい時代は終わったのです。
これまで私たちは1200人の高校生を指導し、さまざまな生徒を見てきました。
それは「親が適切なタイミングで適切なサポートとアプローチをしていること」。
これに尽きます。
逆に言うと、受験生は受験生として、親は親としての領分を理解し、それぞれが本気で向き合わなければ大学受験は失敗するということです。
今、大学受験を控える子どもに必要なのは「過干渉」です。
といっても、勘違いしないでください。
「勉強、ちゃんとしてる?」「そろそろ塾に通ったら?」はただの「干渉」でしかありません。むしろ今のご時世、単に干渉してもデメリットしか招きません。
では、ここでいう「過干渉」とは何なのか。詳しく説明していきましょう。
■2010年代から大学受験はガラリと変わった
「子どもをサポートしているのは、教育に対して過度に熱心な一部の親だけ」
「親が子どもの受験に口を出すのは出しゃばり過ぎ」
もしかしたら、みなさんもそう思われたかもしれません。
たしかに、かつては子どもの大学受験にそこまで干渉しない親のほうが多かったですし、それでも受験はうまくいっていたでしょう。
大学側が、テストの点数が高い生徒を求めていたのも事実です。
しかし、2010年代半ば以降、大学受験はガラリと変わりました。文部科学省が2015年に「学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)」を重視する方針を打ち出したことも、この変化の後押しとなっています。従来の学力試験だけでは測れない能力や資質を評価する必要性が認識されるようになり、以降、毎年少しずつ変更が生じています。
■「勉強がデキる」だけでは合格できない
変更に伴い、求められているのは学力だけではなくなりました。高校時代にしていたことをプラスで評価する大学や学部が増えています。
併願の可能・不可能などの条件が追加されるところも出てきていて、必要科目を勉強するだけではなく、「どこを受けるか」「どのように受けるか」を検討し、「どんな方針で受験を乗り越えるか」を考える必要があります。
そう。戦略が練られていなければ、大学受験は成功しない時代になったのです。
選択肢も以前よりもずっと増えているので、とてもではありませんが生徒一人ではリサーチしきれませんし、的確な判断をするのは困難でしょう。さらには募集要項など中身の部分も煩雑化しているので、自分自身をコンサルティングするように深掘りする必要だってあります。
たとえ方針が決まったとしても、今の大学受験にはこなすべきタスクが多く、管理するのも大変でしょう。
だからこそ、親の出番なのです。
親が、課題を分析・特定し、解決まで導くとともに、子どもの心のケアを行えるかどうか。大学受験が成功するかどうかは、これにかかっているのです。
■「公募制推薦」に向いている生徒の特徴
本来であれば、「総合型選抜」は一般入試の括りですが、本書では、一般的な大学受験のイメージと合わせるために「学力試験のみで受験できる入試」を一般入試、「特殊な準備や試験のある入試」を推薦入試として話を進めさせていただきます。
大学受験が、大きく分けると「一般入試」「推薦入試」に二分されるのは昔も今も同じです。しかし、昨今は推薦入試がどんどん重視されるようになり、推薦入試は枠が増えるだけでなく受験パターンの多様化も進んでいます。
推薦入試は2021年度より、「AO入試」という名称が「総合型選抜」へと改められ、高校ごとに枠を設けられている「指定校推薦」も現存しています。さらに今では「公募制推薦」(英検、評点、スポーツなど、必須条件を満たしていれば受験資格を得られるもの)も登場しています。簡単に言うと、公募制推薦は総合型選抜と指定校推薦の中間にあるような立ち位置で、成績が非常にいい場合は指定校推薦、成績もそれなりに良くてそれ以外の活動もしているようなバランスのいいタイプが公募制推薦で進学する印象があります。成績が学年で20~30番程度で、部活でキャプテンをしているような子は、まさに公募制推薦向きと言えるでしょう。
■少子化でも競争率は上がり続けている
ただし、全大学が3種類全ての推薦入試を取り入れているわけではありません。
感覚的には、一般入試:推薦入試の比率が以前は6:4だったのに対して、2024年現在は4:6と逆転しているようなイメージです。
慶應義塾大学の経済学部は、一般入試に特化しているため「学力が高い人が集まる」「だから大手企業への就職率が非常に高い」と言われていたこともありました。しかし、2025年度から指定校入試を採用しているため、過去の話となるのは時間の問題でしょう。
推薦入試の比重が上がれば上がるほど、何が生じるか予想できた方もいることと思いますが、つまり昨今の一般入試は、枠が大きく狭まっているのです。
「子どもの数が減っている分、一般入試で求められる学力は年々下がっているのでは」と思ったら大間違いです。
一般入試の競争率は、むしろ年を追うごとに上がり続けているのです。
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菅澤 孝平(すがさわ・こうへい)
シンゲキ代表取締役社長
千葉県鎌ケ谷市出身。高校時代に偏差値32を経験。担任の先生と二人三脚で受験勉強をし、明治大学に逆転合格。その時の経験をもとに、誰かの挑戦に「伴走」したいという思いから、明治大学政治経済学部在学中にオンライン塾事業を始める。2021年シンゲキを創業。著書に『3カ月で志望大学に合格できる鬼管理』(幻冬舎)がある。
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(シンゲキ代表取締役社長 菅澤 孝平)