仕事ができる営業はどこが違うのか。テレアポによる法人営業で月1000万円の利益を生んだ実績を持つReverent社長の吉村恭平さんは「『服装をゆるめる』ことで、自然体で話せるようになる。
許される職場であれば、ポロシャツやゆったりしたシャツなど、できるかぎり動きやすく、声が自然に出る服装をおすすめだ」という――。
※本稿は、吉村恭平『3分だけ会う時間を僕にください 成果ゼロから月一千万の利益を生み出したトップ営業マンのテレアポ術』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■最初から社長を指名するワケ
テレアポでアポを取るためには、事前にトークをしっかり組み立てておくことが重要です。特に決裁権者にアプローチする場合はなおさらです。
多くの営業担当者は、「いきなり社長を指名するのは失礼ではないか」とためらいがちです。しかし、実際はそうではありません。
特に従業員100名以下の中小企業であれば、社長(決裁権者)とつながることはいくらでも可能です。
まずは、社長(決裁権者)の名前をリストに明記し、電話をかける際には最初からその名前を伝えるのが基本です。
あなた 「A株式会社のBと申しますが、C社長はいらっしゃいますか」

受付 「Cはただいま外出しております」

あなた 「そうですか。では、いつお戻りでしょうか?」
ポイントは、最初から社長(決裁権者)を指名すること。なぜなら、商品やサービスを本当に導入するかどうかを決めるのは、担当者ではなく「決裁権者」だからです。
その相手と直接話せれば、契約までの距離が一気に縮まります。

中小企業では社長や専務など、役員クラスが決裁権をもつケースが多く、最初からその相手にアプローチできればスピーディーです。
商談が即断即決で進み、その場で契約が決まることも少なくありません。
逆に、担当者だと「必要ありません」と一蹴されたらそこで終わってしまいます。
しかし、決裁権者が相手なら話は別です。
・「今は必要ない」という一言でも、将来の再アプローチの可能性を読み取れる。

・「どんな条件なら前向きに導入をご検討いただけますか?」と質問し、次の一手が打てる。
トークを書いた紙を見ながら、電話をかけてもよいでしょう。
■仕事がデキる人は「声が大きい」
テレアポは顔が見えない分、声の印象がすべてです。
どんなにあなたが有益な情報を一生懸命に伝えても、小声でボソボソと聞きとりにくい話し方では、マイナスな印象を与えてしまいます。
「何を言っているのかよくわからない。やる気あるの?」と思われて、切られてしまうかもしれません。
そうならないためにも、自分で作成したテレアポトークを声に出して練習しましょう。
また、人は文字を「目で見て読む」だけでなく、「声に出して耳で聞く」ことで、脳が活性化され、記憶がより定着するそうです。
練習しておけば、本番のテレアポにも落ち着いて臨むことができます。
100万回のテレアポを体験した私がもっとも重視しているのは、「環境づくり」です。
世の中にテレアポについて書かれた本はありますが、私の知るかぎり、テレアポの環境づくりについて紹介しているものはないと思います。
心も体もリラックスできる環境でテレアポを行うことで、間違いなく、アポ獲得の成功率はあがります。
■服装をゆるめると、自然体で話せる
電話とは言え営業ですから、男性の場合は、スーツでネクタイ着用を義務づけられている会社もあるでしょう。
しかし、テレアポの場合は、ジャケットを脱ぎ、ネクタイを外すことからスタートします。
私自身も、以前は「気合い」を入れるためにスーツでテレアポをしていましたが、疲労感が大きく、声にも硬さが出ていたと感じます。
ある日、試しにジャケットを脱ぎ、ネクタイを外してテレアポをしたところ、想像以上にリラックスでき、声にも余裕が出ました。
それ以来、私はテレアポでは「服装をゆるめる」ことで、自然体で話せるようになりました。
職場では難しい部分もあるかもしれませんが、ポロシャツやゆったりしたシャツなど、できるかぎり動きやすく、声が自然に出る服装をおすすめします。
自宅でのテレワークであれば、極端な話、パジャマでもかまいません(気持ちの切り替えができれば)。

可能であれば、靴を脱いで裸足になるだけでも、足元の解放感が気持ちをラクにしてくれます。
■環境づくりに「不要なアイテム」「おすすめなアイテム」
●不要なアイテム……「スマートフォン」「よけいなモノ」
スマホはつい手に取りたくなる誘惑の元。視界から外しておくのがベストです。リフレッシュとして休憩時間に使うのは問題ありませんが、業務中は引き出しにしまっておきましょう。
また、アメリカ・プリンストン大学の研究によれば、脳は秩序を好むため、周囲が散らかっていると集中力が落ちるそうです。
よけいなモノは片付けて机の上はシンプルに。
電話に集中できる空間を意識して整えましょう。
●テレアポがはかどるアイテム
▼「ヘッドセット」……聞きやすく話しやすい
ヘッドセットは、ヘッドホンとマイクが一体化したものです。
みなさんもコールセンターのオペレーターなどが利用している映像を見たことがあるのではないでしょうか。
ヘッドセットを使うことで、電話を持つ必要がないので、手が疲れません。どちらかに体が傾くこともないため、正しい姿勢を保てます。
また、ヘッドホンで相手の言葉をしっかり聞くことができ、口元のマイクがあなたの声をしっかり相手に届けてくれるので、双方ともに話がしやすくなります。
これだけでも、電話をするときのストレスはかなり軽減されます。
▼「鏡」……表情をチェックする
話す前に表情チェックを。「電話なのに、表情が関係あるの?」と思われるかもしれませんが、どんな表情で話すかによって、声の出方が変わってきます。
意識して笑顔をつくることで、声のトーンも気分もあがってきます。ぜひ、いい表情でテレアポをスタートさせてください。
■行きたい国の写真を眺めてやる気をアップ
▼「タオル」……腕の負担を減らす
ヘッドセットがおすすめですが、無い場合は、長時間、受話器をもったままというのは、手首の負担になるし、もっている腕もしびれてきます。
そこで、タオルをひじの下に敷くことで、負担を減らすことができます。
▼「飲み物」「のど飴」……声の調子を整える
声を守るための基本アイテム。甘いものは喉がかわくので、甘すぎない飲み物やお茶がおすすめ。
私はレモン味ののど飴を常備していました。
のど飴を選ぶ際は香りも重要です。
レモン味は甘すぎないし、香りも爽やかでリフレッシュできます。

▼「ご褒美の写真」……気分をあげる
私は自分が行きたい国の写真をデスクに飾っていました。
テレアポをはじめる前に写真を眺めて、「旅行で新しい経験をするためにがんばろう!」と気分をあげるためです。
テレアポがうまくいかないときにも、ほしいものや実現したいことの写真を見ることで気持ちを立て直しました。
「自分はこのためにがんばっているんだ」と再認識するのです。
自分がほしいものなら、何でもかまいません。人によってはものではなく、旅行や習い事などの体験かもしれません。
人はただお金を稼ごうと思うだけではがんばれません。お金を稼ぐことは目的ではなく手段だからです。
自分が心からワクワクするものを目に見える形で飾り、テレアポのエネルギーにしてください。
■効率を高める極意は「チーム戦」
テレアポは、1人で黙々と電話をかけているイメージがあると思いますが、それでは気が滅入ってしまいます。
もし、チームで取り組める環境があるなら、同僚と協力し合い、競い合い、成長し合う環境も重要です。
私自身、テレアポに挫折しそうになったとき、仲間の存在に何度も救われました。

「どんな企業に情報提供したの?」

「○○の業種はアポがいただけたよ」

「どんなトーク内容で商談の約束をいただけたの?」

「こんな言い回しをしたら社長に喜んでいただけたよ」

「こういう言い方をしたら、伝わりにくかった」
こうして、みんなのレベルをあげていけば、さらに効率よくアポが取れるようになります。
また成果を「見える化」していました。
私は、1本の棒をパソコンにアンテナのようにテープで貼りつけて、アポが取れるたびに、その棒にスポンジのボールをさしていました。
アポが1件決まったら1個のボール、3件決まれば3個のボールが棒にささり、成果が一目瞭然です。
同僚にもボールが見えるため、「あんなにアポを取ったんだ。あいつ、すごいな」という反応も実感できます。
自分が誇らしく感じられ、自己肯定感があがります。
また、それぞれの成果が目に見えることで、「あいつに負けないようにがんばろう」というメンバー全体の意識の底あげにもつながります。テレアポは、淡々とこなすだけでは続きません。
仲間と協力したり、競争したりしながら、楽しく仕事に取り組める環境をつくることで、テレアポ成功率はアップしていきます。

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吉村 恭平(よしむら・きょうへい)

Reverent代表取締役社長

1989年、福岡県京都郡苅田町生まれ。大学卒業後、大手上場飲食企業に入社。すぐに店長に抜擢されるも、「社内の営業職に就きたい」との強い思いから、わずか4カ月で退職。その後、営業の最前線である大手通信営業会社に転職。入社3カ月で「これで九州を任せる」と電話1本を渡され、テレアポによる法人営業を開始。最初は失敗続きだったものの、アポが取れる時間帯や決裁権者への突破法など独自のノウハウを確立。その結果、大手企業の社長と面談を重ね、24歳にして月1000万円の利益を達成。九州支店の最年少所長に就任。その後、ヘッドハンティングを受けて外資系大手生命会社へ転職。前職で培ったテレアポ術を活かし、入社2年で年収1000万円、3年目にはプレイングマネジャーとして年収2000万円を達成。2023年、株式会社Reverent(リバレント)を設立。保険代理業を中心に業績を伸ばすかたわら、テレアポ術を伝える講師としても活動。

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(Reverent代表取締役社長 吉村 恭平)
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