資産を増やせる人にはどんな特徴があるのか。税理士・公認会計士で、投資家でもある永江将典さんは「お金持ちになる人は『なんとなく』で物を買わない。
出費をする際には一度立ち止まり、買おうとしている物が本当に必要なのかどうか自問自答している」という――。
※本稿は、永江将典『最強の投資と節税 二刀流税理士のお金の増やし方』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■お金が貯まる人とそうでない人の違い
お金についてのノウハウは数多くありますが、そのやり方は人それぞれです。誰かに向いている方法だからといって、それがあなたにも合うとは限りません。
しかし一方で、資産を増やせる人たちに共通していることもあります。それは、「お金を使う前に、一時停止して考えている」ということです。
これは私が税理士として見てきた富裕層に共通していることで、例外はほぼありません。
お金を使うとき、お金が貯まらない人は、「なんとなく」お財布から出しています。自分の感情に流されていて、そこに思考はあまり入っていません。
しかし、お金が貯まる人は違います。
その出費が「消費」「浪費」「負債」「投資」のどれに当てはまるのかを、使う前に意識してチェックしています。これは個人だけでなく、会社でも同じです。

私は税理士として、また公認会計士として、多くの個人や企業のお金について見てきました。そして一時は儲かっている人でも「浪費」したり、「負債」を抱え過ぎて自己破産や倒産してしまうケースを見てきました。
そこまでいかなくとも、次の事業に「投資」できない個人や会社が、しだいに勢いを失ってしまうケースも数多く見てきました。
逆に、最初は小さくとも、無駄を省いて積極的に「投資」することで、右肩上がりに急成長する例も、たくさん見てきました。
そこで確信したのが、この「消費・浪費・投資・負債」の考え方なのです。
■出費は4つに分類する
では具体的にどう判断するか? ということですが、それぞれの基準は次の通りです。
・消費:生活を維持するために必要な支出(例:食費、家賃、公共料金)。基本的に必要不可欠な支出ですが、節約の余地がある場合もあります
・浪費:無駄遣い、もしくは価値を生み出さない支出(例:衝動買い、使わないサブスクリプション)。満足度が低く、無駄を省くことで節約が可能です
・負債:借金や将来的に返済義務がある支出(例:住宅ローン、クレジットカードのリボ払い、車のローン、学資ローン)
・投資:将来の価値や利益を生み出すための支出(例:株式投資、教育費、健康への支出)。長期的なリターンを生む可能性があるが、リスクも伴います

これらを意識することで、無駄な出費は減らせますし、逆にお金を増やすチャンスを増やすことができるようになります。
ですので、あなたもまず、この考え方を意識するところから入ってほしいと思います。
■お金に愛される人のポートフォリオ
それぞれの支出をどの程度の割合にすればいいか、目安についてお話ししましょう。

・消費:約50~60%
生活に必要な支出である消費は、収入の50~60%以内に抑えるのが理想です。
家賃や食費、公共料金などもここに含まれますが、収入が増えるほどこの割合を下げられるでしょう。ポイントは、収入に見合った生活水準を心がけることです。
・浪費:約5~10%
無駄遣いである浪費をゼロにするのは現実的ではないため、収入の5~10%を「楽しみ」のために使うのが適切です。
趣味やリラクゼーションに充てる範囲に留めると、過剰な浪費を防げるでしょう。ポイントは「自分へのご褒美」と割り切って、計画的に楽しむことです。
・負債:約10~20%以下
将来的に返済義務がある負債は、収入の10~20%以内に抑えるのが理想的です。住宅ローンや学資ローンなどの「いい負債」に限って、返済計画を立てて健全に管理しましょう。
クレジットカードなどの高金利負債は、できる限り避けるべきです。ポイントは、借金を必要最小限に抑え、早期返済を心がけることです。
・投資:約20~30%
将来の価値を生む投資は、収入の20~30%を目標にしましょう。
ここには金融商品の購入、スキルアップのための教育費、健康維持のための支出も含まれます。
ポイントは、少額でもコツコツと始め、資産を増やしていくことです。
一般的には「投資」の割合が少ないはずなので、浪費を減らして投資を増やすことを意識できれば、それだけで十分効果があったと言えます。
■リボ払いはただの借金
なお世の中には、意識して気をつけていないと「自然と浪費してしまうしくみ」というものがあります。
たとえばクレジットカードのリボ払いです。
お金が不足していてもモノやサービスを購入できてしまうので、衝動的に利用してしまうと「浪費」の機会が増えてしまいます。
また要するに借金ですので、金利手数料も高く、実質年率で15%以上のものも珍しくありません。
浪費と高金利のダブルパンチをもらわないよう、気をつけたいものです。
一方、同じような借金といっても住宅ローンや学資ローンは、必要性が高かったり、将来につながる投資としての側面がありますから、「負債」として許容できます。
しっかりと返済計画を立てて、利用していきましょう。
■車のローンは負債ではなく浪費
車のローンについては、購入する動機をチェックしてほしいと思います。
車が趣味、という人もいると思いますが、資産を守るという視点からはあまりおすすめできません。
人は飽きる生き物ですから、いずれまた別の車が欲しくなり、頻繁に買い替えることになります。
これは「負債」というよりも、「浪費」に近いでしょう。
それが「浪費」なのかそうでないのかを、簡単に判断する方法があります。
それは「絶対に必要なものかどうか?」です。
この質問を自分にするだけで、感情で先走るのを一時停止する効果があります。本当に必要なのかを見極めようとすることで、理性的な自分を取り戻すこともできます。
これからは、自分がお金をどのように使っているかを、客観的にチェックしていきましょう。

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永江 将典(ながえ・まさのり)

公認会計士、税理士、投資家

1980年愛知県生まれ。早稲田大学を卒業後、半年後に公認会計士試験に合格。監査法人トーマツやトヨタ自動車での勤務を経験、一部上場企業の監査や株式公開支援、税務調査の業務に携わる。2012年に独立し、税理士事務所を開業。5店舗に拡大し200社以上のクライアントや富裕層から、お金の守り方、増やし方を学ぶ。これまで投資の失敗で約5000万円を失いながらも試行錯誤し、投資収入が年間1000万円を超えたのち、税理士事務所を売却。
現在は投資家として総資産10億円を運用している。

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(公認会計士、税理士、投資家 永江 将典)
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