※本稿は、武政秀明『22文字で、ふつうの「ちくわ」をトレンドにしてください』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■ほとんどの人は「中身」に興味ない
「あんなに頑張って書いた企画書が読まれない!」
「渾身(こんしん)の投稿だったのに、アクセス数が少ない!」
「メールを送ったけど、相手の反応がよくない……」
「自信のある商品・サービスなのに売れない!」
そんな思いをした経験がある方は少なくないと思います。でも、思い切って、最初に大事なことを伝えます。ほとんどの人は、最初からその中身をくわしく見ようとは思っていません。忙しい現代人は他人の発信にすべて目を通している時間はありません。むしろ「面倒だから、できるだけ、見ないでいたい」という人だって多いはずです。
もちろん、すでに相手があなたやあなたの所属する組織の熱烈なファンなら話は別です。でも、そうでない場合、どんなにいい文章を書いたり、どんなにいい企画書に仕立てたり、どんなに優れた商品やサービスを用意したりしても、「読む」「見る」「選ぶ」というところに行きつかないことも多いのです。
だったら努力しても意味がないのでは? 違います。「読んでもらう」「関心を持ってもらう」「選んでもらう」ためには、中身も大事ですが、さらに大事なことがあるのです。
それは、「最初に、何を見せるか」。つまり、「最初に相手の目に触れる部分にどんな言葉を書くか」ということです。
■「場所」を入れるだけで言葉の魅力がグッと増す
記事やプレスリリースならタイトル、メールなら件名、資料やチラシなら見出し、商品・サービスならキャッチコピー、SNSのやりとりなど。最初に相手に関心を持ってもらえるような要素を入れないと見てもらえないし、読んでもらえないし、選んでもらえない。これは、身の回りのあらゆる場面で起きていることです。
たとえば、あなたがランチタイムにパスタを食べようと思って、イタリアンレストランに入り、こんなメニューを見たとします。
「ベーコンのペペロンチーノ」
「へえ、まあ、どこにでもあるやつだよね」そう思うのではないでしょうか。よく見かけるメニュー名です。では、これならどうでしょうか?
「富良野産ベーコンたっぷりのペペロンチーノ」
これを見たら、「ほう、ベーコンがたくさん入っているのか」「富良野ってことは北海道産か。品質がよさそうだから、試してみようかな」と特別感のあるメニュー名に心を動かされる方もいるのではないでしょうか?
世の中にはこんな例がたくさんあります。最初に目にする言葉を変えるだけで、結果は怖ろしく変わるのです。
■ウェブメディアの編集に携わることになった
なぜ、私がそれに気づいたのか。
私は25歳の時、新聞記者になりました。大学を卒業して最初に就職した自動車販売会社でセールスパーソンを務めていましたが、自分が本当にやりたいこと、進みたい方向を考え直したうえでの転身でした。
ところが初めて記事を書くことになって、打ちのめされました。トヨタ自動車のニュースリリースをもとに、せいぜい原稿用紙1枚程度の短い速報記事を書くだけ。誰にでもできそうな仕事なのに、どうやって書いていいかわからず、1時間経っても、カーソルは1文字も進まない。
見かねた先輩から大量の過去記事の切り抜きを渡されました。「最初は記事の型を真似て、情報を当てはめていきながら書くといい」と教わり、少しずつ見よう見まねで書けるようになっていきました。
それから11年。その間に経済系出版社へと転職して雑誌の編集にも携わり、記者・編集者としてそれなりの経験を積みました。そしてもう一つの転機が訪れます。36歳でウェブメディアの編集を本格的に始めることになったのです。
■タイトルがイマイチだと「読まれない」
ウェブメディアの編集の仕事には、記事の企画立案や文章のリライト、著者との付き合いなど様々なものがありますが、なかでも大事な業務がタイトルを考えることでした。
それまでの私は新聞・雑誌の記者として、たくさんの記事を世に送り出してきました。でも、正確にその効果測定を行なえる仕組みは用意されていませんでした。
一方、ウェブメディアはアクセス数や、どのくらいの時間そのページを見ていたのかなど、一つひとつの記事への反響がはっきりわかります。よいと思ってつけたタイトルの記事が思いのほか読まれず、数字は冷徹に結果を告げます。毎日のように突きつけられる現実に、何度も心が折れそうになりました。
「素材も耐えきれぬ“六重苦”と電機凋落(ちょうらく)」(*1)
「ネットで一般から。ビジネス資金調達の新潮流(*2)」
「デジタル役員なくして、企業に勝利なし(*3)」
「トヨタ『カローラHV』、あえてガラパゴス(*4)」
*1 著者「素材も耐えきれぬ“六重苦”と電機凋落」東洋経済オンライン(2012年12月6日)
*2 著者「ネットで一般から。ビジネス資金調達の新潮流」東洋経済オンライン(2013年6月12日)
*3 著者「デジタル役員なくして、企業に勝利なし」東洋経済オンライン(2013年7月2日)
*4 著者「トヨタ『カローラHV』、あえてガラパゴス」東洋経済オンライン(2013年8月7日)
■最初に響かなければ、多くの人に届かない
どれも大して読まれなかったタイトルです。誰に何をどのように伝えたいのかがわからない。読者の興味をひく要素が弱すぎる――。
でも、その数えきれない失敗の中で、時として、予想外の光明が差し込むことがありました。思いがけず、突然大きなアクセスを集める記事も出てきたのです。
なぜこの記事は読まれたのか。何がこれほどの違いを生んだのかを分析するうちにわかったのは、「ウェブの記事は、タイトルで多くの人に広がるかどうかが決まってしまう」ということです。そこで、読まれたタイトルのパターンを徹底的に分析し、それを試し、再現できるようにしていきました。
記事のテーマ、切り口、内容の深さ、公開のタイミング、それらすべてがよくても、最初に目に触れるタイトルが響かなければ、多くの人に届かない。その記事の力を100%引き出せない。同じ内容の記事でもタイトルの違いだけで、アクセス数は数十%、場合によって2倍、3倍、時には4倍以上も変わってくることもわかりました。
なぜあるタイトルは瞬く間に広がり、なぜあるタイトルは誰の目にもとまらないのか。その言葉の並びの受け止められ方には、確かな理由があったのです。
■メールの件名「ご確認お願いします」はもったいない
これは、ウェブ記事の話だけと思われるかもしれません。
たとえば、メールの件名。大切なコンペの資料をクライアントに送ろうとして、締め切りまでに必死で内容をまとめます。データも揃えて、ロジックも練って、結論も磨き上げて……。でも、ついつい、こんな件名で送ってしまったとします。
「ご提案資料」
「ご確認お願いいたします」
もちろん相手は資料を開いてくれるでしょう。でも、その印象は薄いものになってしまいます。数ある提案の中の、その他大勢の一つとして受け止められて、せっかくの提案が埋もれてしまうはずです。
「【ご提案】貴社がA社より選ばれる決定的施策」
これならどうでしょうか。相手の興味をひき、提案したい内容の価値が伝わるはずです。
■「ご飯行きませんか」より「たらふく食べませんか」
「ご飯行きませんか?」とLINEで送られてきた友人や同僚などからの誘い。もちろん、日程が合えば行くでしょうが、もしその誘いがこんな言葉だったらどうでしょうか?
「高田馬場で、やきとんをたらふく食べませんか?」
具体的な場所と料理名、そして「たらふく」という言葉。みんなで美味しいものをたくさん食べたい、みんなで楽しい時間を過ごしたいと考えて、この提案をしてくれたのかもしれません。そこまで想像しなくても、その誘いが、より楽しみなものになりませんか?
こんなふうに、日常の様々な場面で「最初の言葉」を変えるだけで、相手の反応は変わります。それは、小さいけれど確かな違いを生み出すのです。その1行1行が、相手の心をつかむチャンスです。
あなたは労力のほとんどを内容に費やし、タイトルや見出しなどの「最初に目に触れる言葉」については最後の最後にサラッと考えるだけになっていないでしょうか。でも、この配分を少し変えるだけで、結果は変わってくるのです。
■「最初の言葉」を磨いてほしい
たとえば、今まで内容について考える労力を99%、残りの1%で「最初の言葉」を考えていたとしたら、内容に費やす時間を97%に減らし、「最初になんて言ったら関心を持ってくれるのか」を考える時間を増やしてほしいのです。内容を吟味する時間のうち2%を、「最初の言葉」を考え抜くために割り振るだけでも、興味を持ってくれる人をより増やせると思います。
もちろん、内容は大事です。いくら「最初の言葉」がよくても内容がよくなければ、がっかりされてしまいます。でも、魅力のある「最初の言葉」を磨かなければ、そもそも見てくれたり、選んでくれたりする人も減ってしまうのです。
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武政 秀明(たけまさ・ひであき)
Webメディア編集長
1976年兵庫県神戸市生まれ。1998年関西大学総合情報学部卒。自動車セールスパーソン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年から東洋経済オンライン編集部。副編集長、編集長、編集部長を歴任。約12年間の在籍中に自身で7000本超のタイトルを考案してヒット記事を連発。東洋経済オンライン編集長時代の2020年5月には過去最高となる月間3億457万PVを記録。2023年5月にサンマーク出版へ転職後、SUNMARK WEBを立ち上げて編集長を務める。
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(Webメディア編集長 武政 秀明)

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