職場に幼稚な人がいたらどう対応すればいいか。転職ライターの安斎響市さんは「正論を振りかざせば目の前の相手を黙らせることはできるが、それは一時的なもので、いずれは自分を突き刺す刃になる。
回りまわって、結局は自分自身が損をする」という――。
※本稿は、安斎響市『1%の気くばり』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■どんなに頭に来ても、怒ったら負け
気くばりできる人は、幼稚な人を上手くかわし、できない人は、正面からケンカする
職場の空気を悪くしないための配慮

会社員として働いていると、明らかな「怒りの感情」を会議やメールの文面で撒(ま)き散らす人がいます。
社内で評価されて出世している人や、リーダーや管理職のポジションにいる人でさえも、時には怒りに駆られて相手を攻撃してしまいます。
これは「心理的安全性をつくる丁寧なコミュニケーション」とは正反対の極めて幼稚な行為なので、自分がやるのは論外です。
仕事では、さまざまな衝突やコミュニケーションミスがあるので、日々働いていてムカつくことがあるのは仕方がありません。
ですが、誰かに怒りをぶつけても何も解決しません。
それどころか、「感情のコントロールができない人だ」と自分の評価が下がるだけです。
また、仮に相手がどんなに的外れで思慮不足で幼稚な発言をしていても、真っ向から応じてはいけません。
「このアホ!!」とブチ切れたところで、相手の頭が良くなるわけではないのです。余計に話がこじれます。
一度コーヒーでも飲んで落ち着いてから、
「ご意見ありがとうございます」

「おっしゃる通りです」
から話し始めましょう。

変に確執をつくってしまうと、お互いに
「過去の屈辱を晴らしたい」

「あの人を見返してやりたい」

「今後、アイツには絶対協力したくない」
など歪(いびつ)な状況になり、自分のためになりません。
人間関係の霧が晴れず、ずっとモヤモヤしたままです。
■職場の幼稚な人は、スルーするに限る
私自身も20代の頃は、不真面目でやる気のない同僚に対して直接怒ったり、態度の悪い後輩を厳しく注意したりしていた時期がありました。
しかし、次第に気がつきました。
「言わないとわからないヤツは、たいていの場合、言ってもわからない」と。
結果として、私は同僚や後輩からただ不満に思われるだけで、相手の態度や行動を変えることはできませんでした。
真正面から非難するようなやり方では、とても相手には響かないのです。
アンガーマネジメントの思考法では、「6秒ルール」とよく言われています。
脳科学上のホルモン分泌などの研究結果から、人間の怒りのピークは約6秒間で収まるとされています。
怒りを感じたら「まず6秒数えてやり過ごす」ことで、感情的な言動や衝動的な行動を防ぐことができる、という教えです。
ただ、個人的にはこの考え方はあまり納得していません。
6秒待とうが600秒待とうが、ムカつくものはムカつきます。

そもそも、大多数の人が感情的になるのは、「6秒後」以降の話でしょう。
何秒待てばいいとか、怒りをコントロールするとか無理なことは考えずに、職場の幼稚な人は、基本的にスルーするに限ります。
関わらなければならない場合も、接触は最低限にしましょう。
■すべての場面で無理に決着をつける必要はない
幼稚な人には関わらないほうが良いと言うと、
「私はただ正論を言っただけだ。悪いのは相手だ」

「感情で言っているのではなく、論理的に状況説明をしているんだ」
と主張する人がいます。
気持ちはわかりますが、仕事上のコミュニケーションにおいては、どんな相手でも「正論で追い詰めてはいけない」という大原則があります。
相手の態度が気に入らないからと、ロジハラ(ロジックハラスメント:正論によって相手を論理的に追い詰めること)をしてしまうケースもあります。
客観的に正しいか正しくないかというより、相手に対するネガティブな感情が先立ち、「だからあいつが間違っている」というロジックを後づけしているのです。
どんなに気に入らない相手であっても、「一緒に働くメンバーである」という配慮を忘れてはいけません。
白黒ハッキリつけなくていい、というのと考え方は同じです。
必ずしも、すべての場面で無理に決着をつける必要はないのです。
仮に自分の主張が正しいと信じていたとしても、「正義」や「真実」は視点と立場が変わればガラッと変わるものです。

自分にとっての正義は、相手にとっての正義ではありません。
■正論は、相手を追い詰める刃物である
逆もまた然りで、相手側も「自分の主張が正しい」と信じて疑わない状態かもしれません。
この状態から、白か黒かハッキリつけようとすると、生きるか死ぬかの勝負になって双方が傷を負います。
どちらが勝つかではなく、戦争になった時点で全員が不幸になるのです。
職場は、誰が一番正しいかを決める討論大会の場ではありません。
相手がグウの音も出ないくらい正論で叩きのめしてしまうと、その場では自分の意見が通っても、相手の恨みや反感を買い、長期的に仕事がしづらくなります。
回りまわって、結局は自分自身が損をするのです。
正論は刃物です。正論を振りかざせば目の前の相手を黙らせることはできますが、それは一時的なもので、いずれは自分を突き刺す刃になるかもしれません。
チェックポイント□メールや会議の場で、負の感情を表に出していませんか?

□幼稚な人と関わって、職場の空気を悪くしていませんか?

□どんなに気に食わない相手にも配慮をしていますか?

□正論で相手を追い詰めていませんか?

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安斎 響市(あんざい・きょういち)

転職ライター

1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。
著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。

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(転職ライター 安斎 響市)
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