※本稿は、岩田松雄『新版「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■優秀な経営者になれるのは「せっかち」な人
あなたはすぐにできることを後回しにして、時間がかかることを先にやり出していませんか。それよりも、やれることから、どんどん片づけていくほうがいいのです。
実はこれが、結果的には時間の短縮につながります。そして、仕事にも勢いがついて前に進んでいくことが多い。
時間と効率を意識しながらも、やれることは、すぐにやってしまうほうがいい。
経営者は行動にスピード感がある、などとよくいわれますが、それは、せっかちですぐにやってしまう人が多いからだと思います。
逆にいうと、スピード感のある人だけが経営者になれるといってもいいかもしれません。優秀な経営者で、気の長い人を私は見たことがありません。
よく担当者は、プロジェクトをキリの良い来月の1日から、あるいは来期から始めようとします。しかし、もし本当に良いことであれば、今からすぐやるべきです。良いことならなぜすぐ実行しないのか。
やれることからすぐにやっていく。これが行動のスピード感につながっていくのだと思います。
■立ち止まることが長期的な効率を生む
時間や効率が大切、すぐやるスピードも大切ですが、時には立ち止まることもリーダーにとって重要なことです。
1、2週間に一度は立ち止まって、改めて物事の優先順位や今やるべきこと、さらには将来について真剣に考えるべきだと思います。
リーダーはポジションが上がれば上がるほど、忙しくなっていきます。スケジュールは、部下との打ち合わせや来客などでどんどん埋まっていきます。気をつけなければいけないのは、こうした目の前のことだけで頭がいっぱいになってしまうことです。
時間と効率を意識し、すぐやるスピード感で物事をどんどんこなしていく一方で、立ち止まってじっくりいろいろなことを考える時間がほしい。そうすることが、長期的に、効率の良い正しい行動につながっていきます。
やる必要のないことを、時間をかけて、一所懸命やることほど無駄なことはありません。
それを避けるために、一度立ち止まるのです。
■3時間以上のまとまった時間を、ときどき作る
しかし、なかなかゆっくり考える時間が作れないと語るリーダーは少なくありません。
実際、スケジュールに空きがあるといっても、来客と会議の間の30分間など、忙しい人ほど空いた時間が細切れになってしまうことが多いものです。これでは、じっくりと立ち止まって考える、などということは難しい。
細かい時間をうまく活用することも重要です。しかし、それはメールの整理などの雑用やインプットの時間にはなるけれど、創造的な仕事やアウトプットの時間にするのは難しいと私は思います。
考え事をしたり、戦略的なことについてじっくり思いを巡らせたり、何かを文章にまとめたりする。そうしたアウトプットには細切れの時間がいくらあってもダメなのです。
大切なのは、いろいろなものをまとめて考えられる時間。1時間の空き時間ではなく、最低3時間ぐらいはほしい。
■今何をすべきか、アイテムごとに書き出す
私はザボディショップ時代にも、スターバックス時代にも、スケジュールを管理してくれていた秘書さんにお願いしていました。2週間に1度でかまわないので、どこかで3時間以上、考え事をする時間をまとめて作ってほしい、と。
もし、そうしたお願いをしていなかったなら、スケジュールはどんどん埋まっていってしまったでしょう。まとまった時間は意識して作らないといけません。
そして、そのまとまった時間で、「スターバックスのCEOとして、今自分は何をすべきか?」などと自問し、じっくりと思いを巡らせ、アイテムごとに書き出すのです。CEOの仕事は人事、営業、財務、システム、親会社・株主とのやり取りなど多岐にわたっています。それらの項目ごとに懸案事項、部下や取引先に投げている宿題、今後やるべきことなどをリスト化するのです。
まとまった時間を確保しておくことで、先々のことも考えることができ、忙しい中でも時間に追われず、重要なことに集中できたと思います。
■スケジュール表に、予定だけでなく「実績」も書いていく
そうはいっても、絶対的に忙しいのがリーダーです。では、どうやって時間を捻出するのか。ひとつのヒントがあります。
まずやってみていただきたいのは、自分はなんでそんなに忙しくなっているのか、把握するということです。実は多くの人が、日々、何に時間を取られているのか、はっきりとは認識していません。だから、1日のスケジュールを洗い出してみるのです。
忙しい、時間がない、を連発していたある社長さんの相談にのったことがあります。特にお客様からのメール返信に時間が取られていることを自覚していました。2時間もかかっている、と。そこで、正確にどのくらいメールに時間がかかっているか、時間の記録を取ってみてはどうですか、と提案しました。
すると、驚くべきことに2時間どころか、1日に合計6時間も、メールの時間にあてていたことがわかったのです。これにはびっくりされていました。1日6時間もメールと向き合っていたのでは、なかなか自分の時間が取れないのは当然のこと。
その社長は反省して、できるだけ部下に任せられるところは任せて、これを半分の時間にするという目標を立てられました。それで3時間も時間が捻出できるわけです。
もうひとつ、私が勧めているのは、スケジュール表に終わった行動も書き込んでしまう、という方法です。
■まずは1週間の記録をつけてみることから
スケジュール表といえば、普通は今後のスケジュールを書き込むものですが、そこに実際に行ったことも書き込んでしまうのです。パソコンのカレンダー機能に、予定だけでなく、その時間に何をしたのかの「実績」も書き込んでいく。
これからのスケジュールは青、実際に行ったプロジェクトA関係は赤、プロジェクトB関係は緑、プロジェクトC関係は黄色、メール対応は紫、プライベートの会食はピンク、SNSに使う時間はオレンジ……、といった具合です。
そうすると、1週間の中で何に一番、時間を使っていたのか、一目瞭然になるのです。
今週はプロジェクトCの動きがなかったな、意外に会議とメールに時間を取られているな、なんてこともすぐにわかります。
自分の時間の使い方が、常に把握できるということです。
まずは1週間でも記録してみれば、何をしたら時間が捻出できそうなのか、ということもわかってきます。本来優先すべき業務に可能な限り集中することができるのです。
予定だけでなく、実績もスケジュール表に記録していく。無駄を削(そ)ぎ落とす、時間管理のひとつのテクニックだと思います。
アシスタントのいる方は、記録を取ってもらえばいいでしょう。
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岩田 松雄(いわた・まつお)
リーダーシップコンサルティング代表
リーダーシップコンサルティング代表取締役社長。元立教大学教授。
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(リーダーシップコンサルティング代表 岩田 松雄)

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