■雑談は「くだけた話を楽しむ」ではない
僕が考える雑談とは、「心理的な距離を縮め、信頼や関係性を育むための対話」です。わずかな時間の言葉のやりとりが、相手との距離をぐっと縮めてくれる――それが雑談の力です。
みなさんに、こんな質問をしてみたいと思います。「雑談」と「おしゃべり」は、何が違うのでしょうか? どちらも気軽な会話に思えるかもしれませんが、目的がまったく異なります。
おしゃべりの目的は、その場を楽しむこと。たとえば、気の合う仲間とくだけた話をする、思いつくままに話すことでリラックスしたり、ストレスを発散したりする行為です。言葉づかいも砕けていて、話題も多岐にわたります。そこには深い目的はなく、ただその瞬間を共有する楽しみがあります。
一方、雑談には「相手とつながる」という明確な目的があります。初対面の人や仕事関係の相手と、信頼関係のきっかけをつくる。お互いを知り、理解し合う。
つまり、雑談とは「相互理解のための技術」であり、相手との関係性を築く第一歩なのです。
■「何を話そうか」と悩む人ができていないこと
ビジネスの場での雑談が苦手だと感じる若手の方は少なくありません。
「何を話せばいいかわからない」
「沈黙がこわい」
と思うと、つい言葉で埋めようとして焦ってしまうものです。
しかし、雑談上手になるために必要なのは、じつは“話す力”よりも“聞く力”です。ここで覚えておきたい基本の黄金比が、「聞く7割、話す3割」です。もっとざっくり、相手が2に対して、自分が1と覚えておいてもいいでしょう。
雑談というと、自分から話題を提供しなければいけないと思いがちですが、実際には相手の話をしっかり聞くことのほうが、はるかに大切です。自己啓発の名著として世界中で読まれているデール・カーネギーの『人を動かす』(邦訳:創元社)でも、「人に好かれる6原則」の中で「聞き手に回る」ことが強調されています。
僕自身も、多くの話し上手な人と雑談して気づいたのは、彼らが“聞き上手”でもあるということです。こちらが話しているとき、彼らはじっと耳を傾け、ときに大きくうなずき、共感のあいづちを入れてくれます。
その反応があることで、安心して話すことができ、気持ちよく話し終えることができるのです。
■自分の話ばかり押しつけていた営業時代
この経験から、僕も「聞く7割、話す3割」を日常の雑談の基本姿勢とするように意識しました。実際には話している時間が半々のときもありますが、相手の話をまずしっかり聞くことを優先すると、自分が出しゃばりすぎることなく、会話にちょうどいいリズムが生まれます。
若いころ、IT業界の営業として働いていたときは、よくありがちな失敗をしていました。商品やサービスを早く紹介しなければと焦り、自分の話ばかりを押しつけていたのです。たとえば、こんな感じです。
僕「本日は当社の最新のサービスのご案内にまいりました。資料をご覧ください。こちらが性能一覧でして、ここが従来品よりも優れておりまして……(延々と説明)。では、いかがでしょうか?」
お客様「ええと……こちらのシステムを導入するメリットは、うちの場合だと何ですか?(少し戸惑った表情)」
僕「ですから性能が従来比で30%向上しておりまして……(また一方的に説明)」
このやりとりでは、主客が逆転し「話す側(営業)」が主役になってしまっています。これでは、お客様のニーズや困りごとがわかりませんし、何より、いきなり商談に入ることでお客様に警戒されてしまいます。
そうして悩んでいると、「営業はまず『お客様の話をじっくり聞くこと』から始まる」と上司から教わりました。早速実践してみたところ、相手の反応はまったく違うものになりました。
■お客様の話を聞いたら、仕事もうまく回り始めた
僕「本日はお時間いただきありがとうございます。ところで、御社の業界で最近ちょっと話題になっている“○○”の件、ご存知ですか?(業界や季節、趣味、日常の小ネタなど、相手が乗りやすい雑談ネタを用意)」
お客様「ああ、あの話ね。確かにちょっと気になってたんです。じつは最近うちでも似たようなことで困っていて……(少し笑顔に)」
僕「そうだったんですね。もし差し支えなければ、もう少し詳しくうかがってもいいですか?(話を引き出す)」
お客様「じつは……(課題を語り始める)」
僕「なるほど、それは確かに気になりますね。じつは、以前に似たようなケースでうまくいった事例がありまして……(ここで提案が始まる)」
このやりとりでは、雑談で場をやわらげ、自然な流れでお客様の課題を引き出すことに成功しています。「話しやすい雰囲気づくり」が目的であり、セールスはあくまでその先の段階という位置づけです。こうして相手の課題や関心を知ってから話すことで、信頼も得られ、会話も自然と続くようになったのです。
この「聞く→理解する→話す」という順序こそが、ビジネスにおける雑談では重要だということを身をもって知りました。
雑談とは、情報のやりとり以上に、「この人は自分に関心を持ってくれている」と思ってもらうための時間です。
■雑談が上手い人の“最強の切り出し方”
雑談の入り始めには、じつはとても大切なポイントがあります。最初の入り方でつまずくと、そのあともギクシャクした会話になってしまいがちです。逆に、自分なりの“入り方のパターン”を持っておくと、その後は自然と会話の波に乗れるようになります。
たとえば、日本人初のメジャーリーグ殿堂入りを果たしたイチロー選手は、現役時代にバッターボックスに入るまでの一連の動作(袖を引っ張る、バットを立てる、足元をならすなど)を毎回必ず繰り返していました。これは集中力を高め、心を平静に保つための「ルーティン」だったそうです。
雑談では、そこまで大げさな準備は必要ありませんが、あらかじめ「こう始める」という自分のパターンを1つ持っておくと安心できます。なぜなら、入り方が決まっていれば緊張や戸惑いが減り、自然に言葉が出やすくなるからです。
僕の場合、久しぶりに会う人との雑談では、まずこう切り出します。
「最近どうですか? 何か面白いことありました?」
この一言が、僕の雑談ルーティンのスタートです。そして少し間を置いて、「お互いにまずは近況報告しましょうよ」と続けます。
このときのポイントは、まず相手から話してもらうことです。
たとえば、こんなふうに誘導してみます。
■気まずくない会話は入り方が違う
「佐藤さん、お久しぶりです。もう1年ぶりくらいですよね? コーヒーでも飲みながらこの1年間にあったこと、教えてください」
と話を向ければ、相手は時系列で話しやすくなります。
この間、こちらは「へえ~」「それは意外ですね」「なるほど」といったあいづちに徹して傾聴することが大事です。そして相手がひと通り話し終えたところで、自分の番に。その間に相手の話の中から質問したいポイントをいくつかピックアップしておけば、自然な流れで会話をつなげられます。
良くないのは次のような入り方です。
「あー……今日は暑いですね。えーと……お元気にしてました?」
これでは相手に「この人、話すことが決まってないんだな」と伝わってしまい、雑談というより“戸惑いの共有”になってしまいます。会話が続かず、気まずい空気になるリスクもあります。
ですから、好ましいのは次のような入り方です。
「佐藤さん、お久しぶりですね! 前にお会いしたのって、春先でしたっけ? あれから何か面白いことありました? 良かったら、コーヒーでも飲みながらゆっくり聞かせてください」
このように、“軽い振り返り+相手への関心+リラックスできる空気”をセットにすると、相手も話しやすくなります。
このように雑談だからこそ、最初の一言で印象が大きく変わります。自分なりの「入り口」を決めておけば、どんな相手ともスムーズに会話の扉を開けられるようになります。
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河上 純二(かわかみ・じゅんじ)
JYLINK代表
1994年、中央大学法学部卒業後、株式会社丸井入社。その後、デジタルハリウッドでデジタル技術を学び、1997年より外資系企業にて新規インターネットビジネスの立ち上げにプロデューサーとして参画後、株式会社USENにてインターネット事業部門責任者、株式会社medibaにて新規モバイル事業立ち上げ責任者、株式会社D2Cでコンシューマ事業部門長を歴任。2017年に株式会社JYLINKを創業、代表取締役に就任。様々な企業の顧問・アドバイザーとして15社の経営に参画しIT業界の発展に貢献中。経営者トークライブ番組「JJの部屋」、FMラジオ番組「大人のミライ」パーソナリティ。グローバルITメディア「Ubergizmo」オフィシャルジャーナリスト。スタートアップピッチイベントのコメンテーター。著書に『10年後に活きる人脈のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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(JYLINK代表 河上 純二)

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