■赤星を土俵際に追い込んだ〈辛口・生〉
「ビールといえば生」そういう印象を持っている人は多いだろう。そんな生ビールのなかでも圧倒的な人気を誇っているのが昭和62(1987)年にアサヒビールから発売された「アサヒスーパードライ」だ。スーパードライは後にバブル景気とも呼ばれる好景気を追い風に登場直後から人気を集め、やがて国内ビール販売の頂点に上り詰めた。
スーパードライの躍進によってビールには「辛口・生」というイメージが定着することになり、飲食店でもドライ系生ビールが選ばれるようになったが、これで大打撃を受けたのが赤星をはじめとする瓶ビールだ。
現在は国内ビール総販売数の大半を生ビールが占める状態になっている。そんな“生ビール全盛時代”において、しばらく忍従を強いられた熱処理ビールの赤星が、ここにきて驚異的な躍進を見せている。
■瓶ビール市場を牽引する「赤星」
居酒屋で飲むビールはサーバーから注がれる「生」が定番だが、実は瓶で提供されるビールの人気にも根強いものがある。
これには日本独特の“お酌文化”が影響しているとの見方もあるものの、肝心のビールがおいしくなくては人気が続かないのも事実。そこで強みを発揮しているのが、150年に迫る歴史を持つ瓶ビールの赤星なのだ。
実際に赤星の勢いはすさまじく、コロナ禍で前年度からの落ち込みを見せた2020年を境に大幅な販売回復を見せ、2019年の数量を100%とした場合に、2024年にはなんと210%に達する躍進ぶり。赤星を取り扱う飲食店もこの10年で推計約2倍になった。
実は瓶ビール全体の総販売量はこの5年でほぼ変化がない。つまり、赤星が瓶ビール市場を牽引しているということ。これまで味やラベルデザインのリニューアル、そして大々的なプロモーションをほぼ実施していなかった商品でのこれほど急激な伸びはとにかく異例なことである。
もちろん、販売元のサッポロビールが何もしなかったわけではなく、赤星を告知して業績を拡大するための地道な施策はコロナ禍以前から行っていて、ここからさらなる攻勢をかける姿勢も見せている。
■発進! 「赤星★探偵団」
サッポロビールが2016年にスタートさせたインターネット上の飲食店情報発信コンテンツが「赤星★探偵団」。サッポロビールのウェブサイト内ではなく、独自のドメインを持つこのコンテンツは、赤星が飲めるお店の紹介とともに、探偵団長の赤江珠緒さんが実際に店を訪れてその感想をリポートする「団長が行く」をはじめとする訪問記が充実している。
サッポロラガービール・ブランドマネージャーの桑村美里さんは、赤星のプロモーションについて次のように語る。
「サッポロビールでは、『赤星★探偵団』以前には赤星のメディアプロモーションをほとんど行っておらず、基本的には営業スタッフが各地の飲食店を訪問して、これまで赤星を扱っていなかった店にも置いてもらえるようセールスを行う活動がメインでした。
「赤星★探偵団」は、より多くのお客様と赤星とのつながりをより強固なものにすること、赤星を知っていただくことを目的に始めました。
従来の居酒屋がもっていた親しみやすさと、現代的なコンセプトが融合した『ネオ大衆居酒屋』や、過去の時代のスタイルやアイテムが再び注目される『レトロブーム』という言葉が話題になり始めたことで、若い人からも赤星が注目を集める機会になったと思っています」
赤星の認知度は、少々地味ではあるものの、徐々に燃え広がりを見せていった。しかし、それもコロナ禍の外出自粛によって急減速してしまうことになる。だが、このことをきっかけに別の側面から赤星の周知が後押しされるという現象が起きた。
■ブランドを後方支援する缶ビールの「赤星」
居酒屋では日本のお酌文化の影響もあって瓶ビールの需要が多いのは先に説明したが、コロナ禍の状況においては外出自粛が推奨され、それに伴って瓶ビールの販売も大きく低下した。そこでクローズアップされたのが家庭でも気軽に飲める缶ビールだった。
「サッポロビールには黒ラベルやヱビスの缶という主力商品がありますが、赤星ことサッポロラガービールも缶ビールを数量限定で発売しており、これが瓶ビールの認知拡大に一役買っているのです。
サッポロラガービールの缶が初めて登場したのは1992年で、瓶ラベルと同じデザインの缶に入れられた赤星は、エリア限定、またはコンビニエンスストア限定販売の商品でした。これは当初より缶入りの赤星は、“瓶入りの赤星を認識してもらうための商品”という意味合いが強かったからです」(桑村さん)
コンビニエンスストアのみで販売されていた缶入りの赤星だが、2016年からは、数量限定なのは変わらないものの、全国全業態での販売に変わっている。
「コロナ禍のために“宅飲み”が増え、自然に缶ビールの消費も増えました。そしてそこに缶入り赤星の存在があったことが、飲食店以外での赤星周知に効果的でした。お酒は単なる飲み物というよりコミュニケーションツールであることが再認識され、その中でもともと赤星にしかできなかった物性だけでないシーン、時間、空間の提供がコロナ禍を経て拍車をかけているようです。やがて外出自粛が解消されて、外でビールを飲めるようになった際にお客様が自然に赤星を選んでくれるという流れになりました」(桑村さん)
■味もパッケージも変えず守り抜いてきた
「弊社は主力の黒ラベル、ヱビスを中心にプロモーション活動を展開していますが、歴史と伝統のある赤星にも注目してもらいたいとの理由で赤星にも力を入れ始めています」とサッポロビール・外食統括部の内藤誠俊さんが語る。
ビールには地域性があり、他社商品やサッポロの別銘柄が強いエリアも存在する。そうした場所でもサッポロラガービールを手に取ってもらえるよう、同社は地道に周知を進めてきたのだ。
「歴史自体が大きな資産となっているので、時代が変わりゆく中で、意図して味やパッケージを変えずに守り抜いている。これほど新商品がいろいろと出てきたり、生活者の嗜好が変化したりしても、その流行に左右されない信念を持っているのがラガーの特徴。だからこそ、赤星への感じ方が変わったとき、変わっているのは赤星ではなく自分と実感できる。そこがお客様に愛されている部分の1つであると捉えています」(内藤さん)
近年ではクラフトビールも人気になり、瓶入りビールを飲むことがむしろカッコいいという風潮さえ生まれつつある。これは若者層に顕著で、赤星の復興はこうしたスタイルの変化が要因のひとつになったとも考えられる。
「飲食店向けの営業に力を入れると同時に各種キャンペーンイベントもスタートさせて、赤星の周知活動を進めています。新たなスタイルの居酒屋の台頭や、コロナ禍の逆風が意外にも幸いした缶ビールでのアピール、そして実店舗への営業やプロモーションの効果もあって赤星はここ数年で驚異的な売り上げアップを記録することができました。さらに赤星誕生150周年にあたる2027年に向けた戦略も計画しています」(内藤さん)
■“知る人ぞ知る酒場の瓶ビール”からの脱却
現在は好状況下にある赤星だが、この勢いを維持し、さらなる飛躍を狙うための施策について桑村さんに尋ねると、
「5年後に向けても、現状(2019年比)と同等の進捗率を目指しています。既にサッポロラガービールのファンでいて下さっている方だけでなく、これまでビールに無関心だった層の開拓にも取り組んでいきます。ただし、一方的に生活者に押し付けるような広告は避けるべきと考えています。
これまで赤星はメディアにおける広告らしい広告を行っていなかったにもかかわらず成長させることに成功しました。しかしこの状況にあぐらをかかず、より多くの人に赤星の良さを知ってもらえるようにしたいですね」
サッポロビールでは、赤星の現状は好調なものの、まだ“知る人ぞ知る”の立ち位置であり、そこからどのように飛躍させるかがターニングポイントだと考えているからだ。
「2026年には酒税法が改正され、ビールとビール系飲料(発泡酒&新ジャンル)の税率が同じになります。ビールにとってはこれが追い風になるととらえて、プロモーションを推進していく予定です。
そんなプロモーションの一環としてTBSラジオでの『赤星郵瓶ラジオ』も放送しています。酒場の素敵なエピソードを紹介する番組で、おかげさまでリスナーさんからも好評をいただいています。これもまた赤星を知ってもらういい機会だと思っています」(桑村さん)
これまでの赤星には“ご当地アイドル”的なイメージもあった。しかし「1000年に一度の美少女」のように、ご当地アイドル出身でも最後には日本を代表するアイドルに上り詰めた例も少なくない。そして赤星にはそれだけのポテンシャルが十分にある。
■瓶ビール販売で宿願の2位へ!
「生活者との最も強い接点は、やはりリアルな体験だと思っています。実際にブランドに触れていただくことで価値が伝わる。そうした体験を大切にしながら、今後も多様なプロモーションを展開していく予定です。
お客様の口コミ・人伝てには、ネット社会といえる現在でも見逃せない効果があります。お客様同士で赤星がおいしいとの情報が伝われば、それ自体が赤星のプロモーションになります。
飲食店に置いてあるビールサーバーの中身(銘柄)が変わることはありますが、瓶ビールは意外に固定されていることが多く、つまり一度赤星を選んでもらえるとそれがなくなることはほとんどありません。
『あそこの店に行けば赤星が飲める』と知ってもらえればそれが強みになります。また、いわゆる酒場だけでなく、ラーメン屋やお寿司屋など、食事メインの店で赤星を置いてもらうケースも増えています」(内藤さん)
2025年の瓶ビール売り上げデータでは、これまで上位に君臨していたキリンビールの「一番搾り」を抜いて2位になる月も出始めており、この勢いが続けば2026年通年で2位になる可能性がある。
前述のとおり、これからはよりプロモーションに力を入れていくとのことだが、既存の赤星ファンを大切にしつつ、新規層の取り込みを進めるのは諸刃の剣ともいえる。もし失敗してしまうと、販売拡大ができないばかりか、これまでのファンを失う可能性もないとはいえない。
桑村さんが「一方的に押し付ける広告は避けるべき」と語るのはまさにそのことを示している。長い歴史を持つ赤星は、より大きく羽ばたくのか、それとも離陸に失敗してしまうのかの岐路にいるとも考えられる。
約150年間変わらない赤星のおいしさはそのままだが、顧客の支持やメーカーのプロモーション強化が成功すれば、さらなる飛躍も期待できる……そんな勢いを感じながら、晩酌の友として、あるいは酒場で仲間と酌み交わすビールとして、赤星を楽しんではいかがだろうか。
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長谷川 敦(はせがわ・あつし)
フリーライター
1966年生まれ。複数の職業を重ねた後、RCカー雑誌の編集者を経てフリーライターに。現在はクルマ&ホビー関連をメインにしつつ、グッズにビジネスなど、ジャンルにはこだわらず雑誌やウェブに寄稿。
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(フリーライター 長谷川 敦)

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