■「部下と合わない」上司のストレス
こんにちは、産業医の武神です。1年を通じて産業医面談の中でよく持ち上がってくる課題が、対人関係ストレスです。その多くは上司へのストレスに関するものですが、中には「部下と合わない」というストレスを訴える上司もいます。
今月はこのようなとき、上司―部下間の相性問題を乗り越えるために、私がどのようなお話をしているかをご紹介させていただきます。
実際に上司の訴えとしてよくあるのは、「部下Aはミーティングでは黙っているのに、後になって指示への文句や反対を同僚に言うのでチームとしての業務がはかどらない」、「部下Bはいつも私(上司)の指示に反論してきて、こっちが疲弊してしまう」、「部下Cは優秀。だが、協調性がなく同僚たちと協力して業務をこなせない。チームとしては扱いづらくて困っている」などです。
そして上司たちは、注意をしても改善が見られず、強めに言いたいのだけれども、最近は、「発言をパワハラ・セクハラと言われるのではないか」と気にして、対処に困っている印象です。
■上司のストレスはチームのパフォーマンス低下を招く
上司が部下との相性にストレスを抱えている場合、そのせいで上司がメンタル休職になるほど医学的に深刻になることは、私の経験上あまりないように感じます。しかし、これはこれで厄介な問題です。なぜなら、このストレスは前回お話しした「上司と合わない部下」の悩みと同様、上手に対処しないと、どちらかが辞めない限り続く、終わりの見えないストレスになりかねないからです。
また、上司の抱えるストレスは、上司本人だけの消耗だけでなく、チーム全体のパフォーマンス低下という形で組織全体に跳ね返ってしまう可能性もあります。
私は、そのような上司たちに産業医として、傾聴と共感のスタンスで相手と向き合うのは当然のこととして、タイミングをみて、以下3つの内容を伝えています。
まずは関係性の改善を試みること。ダメならば感情と仕事を分離して部下を“役割・機能”として捉えること。そして、お互いのためにルール設定をすることです。
■相手を変えようとすることは無駄な消耗
職場の人間関係に悩む全ての人に私が伝えているのは、相性の問題はしょうがない、どちらも悪くないということです。そして、基本的に他人は変えられませんので、変えられるのは自分のみです。相手を変えようとすることは無駄な消耗です。相手への認知(認識)と、自分自身の行動を変えると、結果が変わってきます。
職場は仲良しクラブではありません。ある業務を目的として、プロとして集められた人々の集団です。自分のメンタルヘルスを病むほど嫌な人がいたら、その具体的な対策の一歩目は、感情と仕事を分離することに尽きます。
ストレスを感じる相手のことは自分の中の感情から切り離し、業務の1つとして接しましょう。その上で、一度は相手との関係性の改善を試みてほしいのが産業医の本音です。
■「具体的に・その都度」部下を褒める
産業医としては、お互いに良好な感情のある関係性構築までは求めませんが、同じチームメンバーとしての信頼関係を構築してほしいと思います。そのためには、上司はまず部下を褒めることが大切です。部下がしてくれたことをなるべく具体的に、その都度褒めることを実践するだけで、きっと関係性は良好になります。
部下のできていないところを指摘し指導することも大切ですが、その前後で、できた部分(成果)も指摘して褒める。できているところ(結果)がなければ、着眼点や行動を褒める。それもなければ、成果(結果)以外でいいから、シャキッとした服装や明るい挨拶、いつも朝一番に出勤してくれている等々、何かを褒めることをすすめています。
たまに上司に「でも、この部下は、本当に褒めるところがないんです。どうしたらいいですか?」と、聞かれますが、褒めるところがないことはほとんどありません。褒めるところを上司が見て(見つけて)いないだけのことが多いように思います。それでも褒めるところがない時は、褒めるところを作るような業務を与えるか、何かを見つけて「ありがとう」と感謝を伝えることを提案しています。
■「褒めよう!」という目で部下を見てみる
上司の方は、褒めよう!という目で部下を見ると、きっと褒めることができる部分が見えてくるはずです。そして、過去の自分は部下と自分の合わない嫌な部分にばかり目がいっていたことに気がつくでしょう。
この、褒めること、感謝を伝えることは、信頼関係構築の循環のきっかけとなるでしょう。
上司としての業務の1つとして部下と接する場合、苦手な部下とはどこまで仲良くなるべきでしょうか? また、そのためには、どのようなマインドで部下と接すればいいのでしょうか。
その答えは部下とどのような関係性を築きたいかによるでしょう。部下と、共通の趣味や家族の話題などがあれば、良好な感情のある関係になれる場合もあります。しかし、少し前までお互いを苦手としていた間柄です。無理をしたり、頑張って好かれる必要はないと思います。まずは、あくまで業務上の役割、業務遂行のための信頼関係が構築できればいいと割り切ってもいいのではないでしょうか。
■部下という「人間」ではなく「行動」で捉える
そのためには、繰り返しになりますが、感情と仕事を分離する必要があります。「部下という人間」を「嫌い」や「イライラする」などの感情で捉えるのではなく、「部下の行動」を業務遂行のための役割・機能と捉え直してみてはいかがでしょうか。そして、自分も上司としての役割に徹するのです。
部下の性格の好き嫌いや、相手に対するネガティブな感情は否定せず受け止めた上で、部下を役割として考えてみると、部下が果たしてくれる役割、果たしてくれない役割が見えてくると思います。そこから、その部下に割り振る業務が絞れないか/変えられないか、果たしてくれない役割については明確な業務目標を設定することで学ぶようにできないか、そうして考えると、今までネガティブに感じていたことにも、少し冷静に対処できると思います。
■自分も相手も責める必要はない
また、部下とのコミュニケーションは、役割を果たしてもらうための指示です。パソコンに入力する検索ワードやAIに入力するプロンプトが適切でないと、求める結果が出てこないことは誰もが経験しています。検索やAIを使いこなしている人は、検索ワードやプロンプトを使いこなせている人です。
部下への指示も同じだと考えてみてください。部下の成果が出ないときには、自分の指示の仕方のせいではないかと考えることも大切です。部下への指示が上手な人は、上手に部下を使いこなし、効果的にチームを回しています。
以上をもってしても上手くいかない場合もあるでしょう。相性は個体差ですので、自分や相手を責めてはいけません。きっとその部下とも上手くやっている上長/同僚が社内にいると思います。まずはその人たちを観察し、やり方を真似てみてはいかがでしょうか。
もう1つ、職場で合わない人との関係性のストレスを減らすために産業医としてお勧めするのは、ルール作りです。これは合わない同僚や上司へのストレス対策としても産業医がよく勧めることです。
■具体的で明確なルールという解決策
依頼された業務は期限と責任者を明確にする。1対1のミーティングを2週間ごとに設ける等だけではなく、ミーティング終了後に反対意見がある時は、同僚たちではなく上司に言う。反対意見は歓迎だが、その時は反対するだけではなく代案も必ず述べる。評価は与えられた業務ができているか否かだけではなく、チームとの連携も含まれる、など、具体的で明確なルールを作成しておけば、お互いが欠点を探しあうのではなく、共通のルールに向き合い話せるようになってくるでしょう。
部下との相性問題は、放置すれば上司自身の心身を蝕む深刻な問題となりえます。しかし、上司は、合わない部下もマネジメントできるようになると、感情に左右されないマネジメント能力が身につきます。そういった意味では、合わない部下との関わりは、マネジメント能力を伸ばす学びの最高の機会でもあります。ぜひ、この状況をポジティブに捉えてもらえると嬉しいです。
くどいですが繰り返します。
----------
武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。働く人のココロとカラダをサポートする無料AIチャット相談サービス「産業医DrT」を運営。
----------
(医師 武神 健之)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
