■赤字急落の原因は「偽装」
大手コンビニ「ミニストップ」の運営会社(株式会社ミニストップ)が、2026年2月期(2025年度)の業績予想を「7000万円の黒字」から「60億円の赤字」に下方修正した。コンビニ大手3社のセブン‐イレブン・ファミリーマート・ローソンから引き離されているとはいえ、国内で1796店(2025年11月末時点)を展開するミニストップの業績がここまで急落するのは、前代未聞の事態だ。
今回の業績急落の原因は、2025年8月に発覚した「食品の消費期限偽装」にある。ミニストップの店内厨房で製造した「手づくりおにぎり」で「19時・20時が期限のラベルに、23時が期限のラベルを重ね貼り」といった初歩的な偽装を施していた。つまり、売れ残りによるロスを防ぐために、期限切れのまま意図的に販売していた、ということだ。
その後の社内調査では、唐揚げ・アメリカンドックなどの総菜でも期限の偽装が発覚しており、店舗によっては「店ぐるみの暗黙の了解」で行われていたケースもあるという。偽装が行われたのは1796店中25店で、こういった偽装を可能にしたミニストップの管理体制にも問題があり、決して許されるものではない。
一連の偽装に対してミニストップの反応は極めて素早く、全店でのおにぎり・総菜類の販売を停止した上で、内部への監視カメラ導入や、「決められた時間外のラベル発行で本社にアラートが届く機器の設置」といった対策に11億円を投じ、発覚した店ではオーナーも交代。ミニストップとしての信頼回復を急いでいる。
■低迷は今に始まったことではない
しかし、手作りおにぎりを含む店内調理商品(決算資料での呼称は「店内加工FF」)の売り上げが前年比6割~7割まで落ち込んでいる。これまでミニストップを支えてきた「店内調理商品の強化」という独自の販売スタイルが、岐路に立たされていることは間違いない。
ただ、ミニストップの低迷はいまに始まったことではなく、前期(2025年2月期)は67億円、2024年2月期も4億6800万円の最終赤字(純損失)を出している。
さらにさかのぼっても、最終赤字に転落した18年2月期からずっと、韓国ミニストップの売却益があった2023年2月期以外すべて、ずっと黒字が遠のいている。実は偽装発覚に関係なく、ミニストップはここ数年ずっと岐路に立たされているのだ。
ミニストップはコンビニ上位3社(セブン‐イレブン・ローソン・ファミリーマート)にはない「店内調理」(パフェ・ホットスナックなど)という絶大な武器を持ち、親会社であるイオンからは、利益率が良いPB商品(トップバリュ)の提供も受けている。
さらに、現在のイオングループの総帥・岡田元也CEOが1号店(横浜・大倉山店)の店長を務めるなど、グループの中でも名門企業の部類に入る。にもかかわらず、なぜミニストップの低迷は続き、コンビニ大手3社の差は開いているのか? そもそも、不正が起きた店内調理の商品に、なぜこだわり続ける必要があるのか。
実際の店舗を見ながら、低迷の原因を探りつつ、ミニストップの行く道として予想されている「まいばすけっと転換」の可能性を考えてみよう。
■店内調理は「利益獲得の命綱」
ミニストップの厨房で作る商品はヒット作品も数多く、経営上のピンチを何度も救われている。だからこそ、「店内調理商品推し」という独自路線を貫いてきた。
岐路となったのは、マクドナルドが80円台までディスカウントを行ったことによる、当時の主力商品であったハンバーガーの売り上げ激減だ。
ここからミニストップの「コールドデザート・ホットスナック推し」路線が定まっていったが、ミニストップの売り上げ(1日平均40万円台)は上位3社と10万~20万円の開きがあり、店内調理分の数万円を上積みしたところで、まったく追いつかない。
しかし、一般的にコンビニで扱う弁当の粗利が2割~3割、ここから廃棄ロスの差し引きがあるのに対して、店内調理商品は一般的に粗利5割程度。注文を受けてから製造すれば廃棄ロスも少なく、オーナーには相応の利益が残る。
ミニストップは「売れる」だけでなく「利益が取れる」店内調理商品を大切にしたからこそ、各オーナーは上位3社に近い利潤・旨味を確保できたのだ。
■強みは同時に弱みに
そして、2013年に導入されて以降、店内調理商品の売り上げを3割も押し上げたのが、偽装のきっかけとなった「手づくりおにぎり」だ。パフェと違って冬でも売れるおにぎり・米飯類は全体の売り上げを押し上げており、近年でも2022年9月から偽装発覚前まで、店内調理商品は30カ月以上にわたって「前年比売り上げ増」をキープする原動力となっていた。
コンビニとして上位3社に売り上げで負け続けたミニストップにとっては、パフェ・ハットグ・おにぎりなどの店内調理商品が「利益獲得のための命綱であった」。そう言っても過言ではないだろう。
しかし、ミニストップの強みである店内厨房、ならびに店内調理商品は、同時に弱みでもある。
まず、提供に必要なスペースを考えれば、ミニストップの店内厨房は非効率だ。
ほか店内厨房を導入しているチェーンもあるが、セイコーマート(HOT CHEF)やローソン(まちかど厨房・約9000店舗で導入)は、単価が高く作り置きが利く弁当・サンド類をメインにしており、日常食を提供する割合が少ないミニストップの厨房の使い方は、ちょっともったいない。
■崩れゆくオペレーション
かつ、パフェなどをすぐに食べるイートインが必須であり、経営効率を重視するコンビニオーナーなら、「このスペース全部潰して別の商品を置けば、日販が上がる!」と思う方もいるだろう。
オペレーションや人手の問題もある。手づくりパフェの製造には2分程度を要するため、たとえピーク時でもレジの人手をとられてしまうのだ。
かつ、商品の製造は店員のノウハウが必要であり、店によってパフェの出来がバラつく。ベテラン店員が抜けるとレジの処理能力が大幅に落ち、レジの行列がさらに伸びる。こういった事態を想定してセルフレジ導入を進めればいいものの、なぜかミニストップは他社より導入が遅れている。
いくらパフェやホットスナックで粗利が取れると言っても、それは店内の有効活用、オペレーションへの悪影響を考慮しない前提だ。ミニストップ自慢の店内厨房・イートインも、運次第では、大手3社と差が開く「非効率経営」の原因ともなり、「強みが弱み」となってしまうのだ。
そして、店内調理だからこそ発生する「消費期限のラベル貼り直し」で、偽装が発覚してしまった。
■絶好の商機も信頼も逃してしまった
ミニストップの消費期限偽装による痛手は、これだけではない。直近の状況を見る限り、最終赤字ではあるものの、経営再建の結果が見えそうだったという「タイミングの不味さ」もある。
まず、2025年2月期の赤字(67億円)はベトナム子会社の評価見直しによる特別損失(約40億円)の結果であり、既存店の売り上げは大幅にダウンせず踏みとどまっている。かつ店舗の整理や直営化、力量のあるオーナーが数店を持つ「メガフランチャイズ化」などで売り上げアップ・採算改善の実績を上げており、経営上の膿を出したうえで採算を改善する作業は、既にひと段落していたように見える。
さらに、生鮮食品と店内調理の両輪を強化した「newコンボストア」1号店(神田錦町店)が、改装前から売り上げ4割増を記録。2025年5月に2号店を出店したところで、さらなる転換で業績の改善が見込めただろう。
さらに、テレビ番組「ジョブチューン」8月9日放送分では、鎧塚俊彦氏・辻口博啓氏などスイーツの一流シェフが、ミニストップのスイーツに「10品中8品合格、満場一致3品」の高評価をつけており、絶好の商機が訪れた……ところで、8月18日に消費期限偽装が発覚したのだ。発覚のタイミングが、二重にも三重にもよくない。
当初「表示誤り」と発表した上で、数日後に「不正」に訂正したことで、「ミニストップ」本部の信頼も低下してしまった。
■同系列「まいばすけっと化」の可能性
検査体制を整えた上での「手づくりおにぎり」販売再開は全体の4割程度、700店ほどにとどまっており、時間をかけてでも店内調理商品を元の信頼・元の売り上げ水準に戻す以外、ミニストップが生き残る方法はないのではないか。なにぶん、この強み以外で、ミニストップがコンビニ上位3社を上回れる要素はない。
ミニストップが安定経営を回復するまでの道のりは、今回の消費期限偽装でやや遠のいた。ここで多くの人々に囁かれている、おなじイオングループの「まいばすけっと」への店舗転換の可能性を探ってみよう。
コンビニとして約3000アイテムを扱うミニストップに対して、ミニスーパーである「まいばすけっと」が扱うアイテムは2~3割多い。かつ生鮮食品の品ぞろえが圧倒的に多く、ドリンクもパンも、ことごとく安い。ミニストップ期待の新業態「newコンボストア」よりも生鮮食品が充実、かつ他の商品も安いとあっては、近所に両社があったとしても「まいばすけっと」圧勝だろう。
かつ、「半径500m内の商圏」「面積は60坪基本、40坪~80坪程度」といった「まいばすけっと」の出店条件も、ミニスーパー・コンビニでほぼ似通っている。何より、いまどき首都圏で物件を手放すと「トライアルGO」などのミニスーパーや上位3社のコンビニに物件をさらわれてしまうため、おなじイオン系列の「まいばすけっと」に明け渡した方が良い、という判断が働きそうなものだ。
■「トライアルGO」になるよりマシ
現実に、葛飾区金町・豊島区北大塚などでミニストップ店舗跡地への「まいばすけっと」出店が、現実のものとなっており、「まいばすけっと」転換は、十分にあり得るシナリオだ。“都民の罰”と言われるほど味気ない「まいばすけっと」でも、店内調理という独自性だけが先立ち、品ぞろえが貧弱なミニストップよりは、よほど有り難い存在となるだろう。
ただし、噂されているような「ミニストップ→まいばすけっと」一斉転換の可能性は、きわめて低い。そもそもミニストップは店舗の9割がフランチャイズ店舗であり、2026年現在で直営店主義を貫く「まいばすけっと」に看板を変える方法自体が存在しない。
ただ「まいばすけっと」も現状で約1200店、「2030年までに2500軒」という目標を掲げている以上、ミニストップに限らずコンビニ跡地があれば、物件確保に奔走するはず。
ミニストップが「まいばすけっと」に変わる可能性は、無きにしも非ず。ただ、そこまでの不振店にならないよう、ミニストップもプライドを賭けて、信頼回復と安全な商品の提供に努めるだろう。
まずは、ミニストップが、どこまで経営環境を変えることができるか。もはや、地道な営業の積み重ねしかない……名物の「Xフライドポテト」を齧(かじ)りながら、行く末を見守っていきたい。
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宮武 和多哉(みやたけ・わたや)
フリーライター
大阪・横浜・四国の3拠点で活動するライター。執筆範囲は外食・流通企業から交通問題まで、元・中小企業の会社役員の目線で掘り下げていく。各種インタビュー記事も多数執筆。プライベートでは8人家族で介護・育児問題などと対峙中。
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(フリーライター 宮武 和多哉)

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