※本稿は、野地秩嘉『セカストの奇跡 逆襲のゲオ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■熊の木彫り、博多人形、フランス人形まで…
2024年から1年半、わたしは10店近くのセカンドストリートを見に行った。ある店ではダウンパーカを売り、ダウンベストを買った。買い取り価格は3000円。買った価格は8000円。しかし、1度しか着ていない。着ていないうちに、「着てやろう」という意欲が失せたので、売りに行くつもりだ。人は着ていない洋服に魅力を感じなくなるのか。それとも、着なかったのは潜在的に「買わなければよかった」と思っているのか。
わたしの場合は両方の気持ちだ。
10店近く見に行ったうちで、もっとも楽しかったのはスーパーセカンドストリート大宮日進店だった。とにかく大きな店で、衣料・服飾雑貨に限らず、楽器、スポーツ用品、家電まで揃っていた。
そして、「これはいったい誰が買うのか」といった品物もあった。
北海道の土産品のかつての定番、熊が鮭をくわえている木彫りの置き物があった。博多人形もあった。ガラスケース入りフランス人形もあった。こけしもあった。徳利と盃のセットで、徳利の表面に短歌が筆文字で入っているものもあった。昭和の時代、わたしの自宅にもあったが、すべて廃棄した品々がそこに並んでいた。買いたいとは思わなかったが、なぜ、これは“あんなに売れていたのだろうか”と感傷的な気分になった。
■500円の服でもなぜ儲かるのか?
スーパーセカンドストリートには他の小売店やネット販売店には絶対に置いていない商品が並んでいる。そして“物を捨てずにおけば誰かが買ってくれる、そういう時代になった”とはっきりわかった。自宅にある「捨ててしまおう」という品物にはちゃんと価値がある。捨てるくらいなら、スーパーセカンドストリートに売りに行くことだ。
一般のセカンドストリートは衣料・服飾雑貨が中心だ。さまざまなブランド品が販売されている。ユニクロ、GU、リーバイス、アディダス、ナイキ、アンダーアーマー、アシックス、チャンピオン……。スポーツブランドが多いのではないか。GUのような低価格品から、高級ブランドまで揃っている。
そして、場所によって並んでいる商品は違う。都心の店舗には高級ブランド品が多く、地方のロードサイド店には少ない。それは店舗のある場所の近くの人が持ってくるからだろう。
ただし、高いとはいっても、数万円するものは少ない。どこの店も500円、700円、900円といった価格の商品が大量に並んでいた。それが売れなくなると、さらに安くなる。それほど価格が安くても儲かっているのは仕入れ値、つまり、買い取り価格が安いからだ。しかし、何もセカンドストリートが不当に安く買い叩いているのではない。リユース品の価格は新品よりは圧倒的に安い。
■セカストが買い取らない5つの条件
セカンドストリートはリユース品なら何でも買い取るわけではない。次のような品物は持って行っても引き取ってもらえない。
①状態が著しく悪いもの
②偽造品、コピー商品
③汚れ、変形、変色等があり状態が著しく悪いもの
④必要不可欠な付属品が欠品しているもの
⑤安全性が確認できない状態のもの
いずれも、常識的な話だ。あまりに汚いものを買ってくれるリユース店はない。
■“日本人らしさ”が高価買取を支えている
汚れたものを引き取らないのはクリーニングなどはせずに、そのまま店頭に並べるからだ。そうでないと、販売価格が高くなってしまう。ユニクロは「RE.UNIQLO」といった名前の古着を販売している。ウォッシュドといってプロが洗濯したり、オーバーダイ商品と称して染め直ししたものだ。
しかし、そうすると、ユニクロの新品とそれほど変わらない価格になってしまう。
それに、日本人は洋服をきれいに着ている。また、売りに行く前にクリーニングに出したりする。買い取りした後、もう一度、洗濯するのは二度手間であり、環境に対して負荷を与えることになる。そうした無駄を省いたことにより、安く販売できる。「安さ」があるから老若男女の一般の人々がセカンドストリートにやってくる。
わたしがセカンドストリートを訪ねた時も、店舗で目に付いたのはユニクロの服を愛用するような普通のおじさん、おばさんだった。一方で、意識の高い若者も利用していた。
■ユニクロ、GUの競合になりつつある
一般の人たちから意識高い系の若者までが客になっている事実がセカンドストリートの強さであり、ユーザーが増えていることにつながっている。今、セカンドストリートにいる客層は並んでいる商品が古着だと承知している。
なお、わたしは同じグループのオフプライスストア、ラックラックも3店舗、見に行って買ってみた。こちらは新品である。ほぼブランド品だ。しかも、高級ブランドではなく、スポーツブランドが多かった。値段は安い。セカンドストリートと変わらないともいえる。ただ、商品の幅広さはセカンドストリートに軍配が上がる。
セカンドストリートの顧客とラックラックの顧客は似通っていると思う。その時の気分で客はリユースのお買い得品とオフプライスのお買い得品を選ぶのではないかと思う。いずれにせよ、ふたつの店が近くにある人たちはまず間違いなく、両店に足を運ぶだろう。それも、これまで衣料品といえばユニクロ、GUで買っていた人たちが行く。セカンドストリート、ラックラックのライバル店とは同業のリユース店ではなく、ユニクロ、GUなのではないか。
■「レンタル業はなくなる」とわかっていた
セカンドストリートを見て回り、スタッフと立ち話をした後、遠藤結蔵に話を聞いた。
「どうしてレンタルの次にリユースに投資したのか。それも集中的に投資したのはなぜなのか。社長になった2011年から、リユースビジネスが盛況になると見越したのか」
それがわたしの問いだった。彼は東京の大塚にある東京本部の古い賃貸ビルの会議室で、質問に答えた。
【遠藤】私は「世界を変えよう」といった大げさな意気込みで社長になったわけではありません。目の前の現実に爪を立ててみて、引っかかるところに対して懸命に努力していたら、結果的に世の中の流れに乗っていたのが事実です。レンタルのDVD、CD、コミックがいずれなくなることは父が社長をやっていた頃から自明でした。ですから、いろいろな仕事をしたのです。
その中で今のところ形になってきたのがリユースです。そして、リユースの事業は当社だけが伸びているというより、業界の規模が大きくなっているのです。リユース業界紙「リユース経済新聞」のリフォーム産業新聞社の調査は2009年から始まっていますが、その時からずっと右肩上がりです。ただ、2012年、2013年あたりは少しへこんでいますが、それは東日本大震災の影響でしょう。
■「ひょっとしたら会社がなくなるんじゃないか」
2013年、メルカリが設立されます。その前からヤフオク(1999年)さんがありました。メルカリさん以降、CtoCのリユースが大きく広がっていったと思っています。ただ、リユース業界が進展した底流にあるのはサステナビリティの空気ではないでしょうか。「もったいない」「捨てるより売りに行った方がサステナブルだ」といった風潮です。
子どもたちは学校でリサイクル、リユース、リデュースを教わります。子どもが学校で教わって帰ってくると、家庭でも、「そうかサステナビリティか」と考えるようになります。時代がそういう潮流になってきたのです。加えて、可処分所得が増えていないこともあります。景気のいい人はいますけど、可処分所得は増えていない。上手にお金を使う生活者が増えてきたのでしょう。
コロナ禍の時、セカンドストリートは大苦戦しました。私自身「これはひょっとしたら会社がなくなるんじゃないか」と思ったこともあるくらい悩みました。あの頃、みなさんが外出されないものですから、どうしても服を買うことがなくなります。そのうえ、一部の都道府県から、不要不急の商売だということで休業要請が出たりしました。私どもは衣料と服飾雑貨に強いリユース業なので、非常に苦戦したのです。
■売上よりも、客数を重視する理由
リユース経済新聞の「リユース市場データブック2024」では、リユース業界の売上でゲオホールディングスはナンバーワンと出ています。2位がコメ兵、3位がブックオフ。前者はブランド物に強くて、後者は書籍を得意とされています。
しかし、1番だと浮かれる気持ちはありませんし、数値だけを追っているわけではありません。つねにお客さまのことを考えて事業を行っていく。時代を見るというより、お客さまを見ています。社内では、既存店の客数が増えているかを最重要な指標としています。売上はお客さまの支持の結果でありますが、大事なのは既存店のお客さまが増えているかです。
そして、国内だけのリユース業ではいつかは市場が飽和になるでしょう。お客さまのタンスの中は限りがあります。エリアによっては買い取りするものが減りつつあるところも出ているくらいです。また、参入障壁が低い業界ですから、つねに新規参入があるわけです。ある程度お金を用意して、古物免許さえ取得すれば買い取りを始めることができる。業界で生き残るためには特色がなければダメです。
■メイド・イン・ジャパンから「ユーズド・イン・ジャパン」へ
セカンドストリートは2014年から海外でもビジネスを検討してきました。あの頃、私はセカンドストリートのメンバーとロサンゼルスへ行ったのですが、古着店のチェーンを視察する機会があって、これなら我々でもやれるんじゃないかと調査を始めたのです。ですが、出店するまでに5年くらいかかりました。その時に見た古着店は昔からあったビンテージ専門ではなく、商品の幅が広い店だった。そのチェーンは全米で50軒ほどの規模で、今でもそのままです。
その後も調べを続けたら、アメリカのリユース業界にはガリバーがいないとわかったのです。さらに、グローバルでもガリバー的存在の企業がないとわかりました。ガリバーがいない理由は、リユース業は査定や在庫管理など大規模でやるには存外に厄介なことが多いからではないでしょうか。
今、私たちは米国に48、台湾に41、マレーシアに26、タイに4、シンガポール、香港に各1店舗あります(2025年6月)。
このうちアメリカ、台湾、タイ、シンガポール、香港は基本的に現地で買取販売をしています。つまり、現地のお客さまが品物を持ち込んできたものをその地域のお客さまが買う。マレーシアは違います。日本で買い取りした品物で、日本で売れなかったものをマレーシアへ持って行って、先方で売る。メイド・イン・ジャパンでなく、「ユーズド・イン・ジャパン」と呼ばれて人気になっています。マレーシアでは今のところは現地での買い取りがメインではありません。
■海外なら画面が割れたスマホでも売れる
スマホのリユースの話になりますが、日本で引き取った中古の携帯電話はドバイからヨーロッパへ送るルートがあります。たとえば画面が割れたスマホは日本では人気がありません。1回直したものは日本では価値が低くなりますが、ヨーロッパの方はあまり気にしないのです。極端なことを言えば、画面が割れたままのものでも売れていくのが海外です。
向こうでは「スマホの画面替え」という商売が街中にいくらでもあるので、そこで替えてまた使う。ですから、画面が割れたままのものでも引き取っています。ただし、ジャンク品という分類ですけれど。そして、日本のお客さまにはお出ししていません。
ジャンク品のケースも含めて、リユース業では出口を増やすのが大きな仕事のひとつです。衣服でも破れている、シミがひどいといったものを持ってこられる方がいて、今は全店では、お引き取りしていませんが、いずれはそういうものも無料で引き取って、そして再生して資源にするといったこともやっていかなくてはいけないと考えています。
社会的な意義を考えると、そこまでやっていない我々が「リユース業で成功した」とはいえないのです。売上を上げること、数値を追うことだけがリユース業としての成功ではない。そう私は思っています。やらなきゃいけないことはいくらでもあります。
■「売りに来る人」も大切な客である
売りにいらっしゃったお客さまの品物は、高く買わねばならんと思っています。それは、私たちにとっては売りに来た方も買いに来た方も両方とも大切なお客さまなんです。ご存じのように、セカンドストリートの店は販売する場所、商品を買い取り仕入れする場所としてのふたつの役割を持っています。一般の小売店の店舗とは違うのです。そして、商品はなるべく高く買い、売る時はなるべく安くする。高く買って安く売るのが正しい方向性です。
しかし、それだと利益率が下がる。そこで、ローコストで運営していくのです。店舗の投資はそこそこきれいに見える程度にしておく。社員の給料は、単価を上げて人数を少なくする。単価を下げると人材の獲得競争に負けてしまいますから。
■会社経営は「寄せ鍋状態」でいい
買取査定をAIにすればいいじゃないかという声もあります。けれど、いきなりAIにはならないので、それまでにステップを踏んでいきたい。査定のプロ職人がいれば本部に所属してもらい、本部が買取査定のシステムをつくる。それを全店に波及させていく。エリアでいちばん詳しければいいのではなく、全国レベルに通用する商品知識を身に付けてもらう。それがセカンドストリートのノウハウになっていきます。
なんといっても重要なのが採用、人材教育です。それがいちばんの課題です。ゲオホールディングスにはゲオやセカンドストリートだけでなく、いくつもの会社があります。仕事の種類を見てM&Aしたわけではなく、普段の暮らしを豊かで楽しくし続けることに関係しているところを仲間にしています。楽しさの提供ができれば何でもいい。店があろうがなかろうが、チェーンであろうがあるまいが関係ありません。その結果、当社にはいろいろなチームがいて、寄せ鍋状態になっている。楽しさの寄せ鍋であればいい。そう私は思ってます。
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野地 秩嘉(のじ・つねよし)
ノンフィクション作家
1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。著書は『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)、『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『京味物語』『ビートルズを呼んだ男』『トヨタ物語』(千住博解説、新潮文庫)、『名門再生 太平洋クラブ物語』(プレジデント社)、『伊藤忠 財閥系を超えた最強商人』(ダイヤモンド社)など著書多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。ビジネスインサイダーにて「一生に一度は見たい東京美術案内」を連載中。
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(ノンフィクション作家 野地 秩嘉)

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