■なんとコンビニ14店分の広さ
スーパーセカンドストリート大宮日進店があるのは大宮市の郊外だ。高崎線のJR宮原駅、川越線のJR日進駅が最寄りとなる。とはいっても駅から歩いて行くことは大変だ。タクシーで5分の距離にある。店舗は国道16号線とJR宮原駅から直進してきた道路の交差点にある。もっとも、JR宮原駅、日進駅というのがどこにあるのかわからない人が多いだろうから、生成AIに「スーパーセカンドストリート大宮日進店の位置を教えて」と聞いた方がいい。
同店は巨大だ。売り場面積は約700坪。町のコンビニ(約50坪)14店分の広さだ。1階はピロティ(吹き抜け空間)の駐車場になっていて、108台の車を止めることができる。扱い商品は約14万点。
わたしはある出版社編集者から次のような話を聞いた。その人は北海道で新聞社に勤めていたけれど、東京の出版社に中途採用されて、上京してきた。東京に婚約者がいたからだ。北海道と東京を往復する交通費が「ばかばかしいくらい高い」と言っていた。
■売上ナンバーワンの「大宮日進店」ギタリスト店長
「転勤する時、札幌で使っていた家電、家具や冬の衣料は全部セカストに売りました。東京に来て、セカストへ行って買い直しました。北海道から東京までの引っ越し代ってすごく高いんです。セカストに売って、買った方がぜんぜん安いし、新しいのが手に入る」
札幌から東京に引っ越しするとして、繁忙期だと単身パックで15万円はかかる。
さて、スーパーセカンドストリート大宮日進店の店長は柴田大輔だ。
「うちより広いお店もありますが、売上は意地とプライドでナンバーワンです。買い取り件数も意地とプライドと情熱で全国一です」
柴田は35歳。2013年、大学を出て、新卒でセカンドストリートに入社している。その年はゲオがセカンドストリートを吸収合併した年だ。柴田は高校生の時、ギターを弾きまくっていた。
■「好きなギタリストは誰か?」の質問に…
「ギターを弾いていた人」にインタビューする時の定番の質問は「好きなギタリストは誰か?」である。もちろん、わたしは定番の質問をした。
柴田は満面の笑みで答える。
「ギタリストはリッチー・ブラックモア、エリック・クラプトン、それとジミー・ペイジ……。まだ何人もいます。高校生の時、ディープ・パープルの『スモーク・オン・ザ・ウォーター』を弾いたら、お父さん世代の人から『高校生が生意気に何をやってるんだ。お前たちにこの曲の良さがわかるのか』って、あおられました。
まあ、それはいいんですけれど、自宅の近くにリサイクルショップがあって、よく見に行ってました。いろいろなモノに触れるのが好きで、モノが生まれた背景を知ることに喜びを感じていました。そんな時、セカストが公募していたので、受けてみたら、受かったんです」
彼は自分でもセカンドストリートでモノを買う。
■「新品の値段」を知っているだけでは通用しない
さて、店長として、彼がもっとも気を配っていることは「買い取り」である。リユース業では買い取りをしないと売るものがない。いかに商品を集めるかが大切なのだ。
柴田の説明はこうだ。
「私の仕事は店をオープンしてから運営していくなかで、いかに在庫を集められるか。
わたしが聞いたのはこんなことだ。小売店のプロは客に売ることには長けている。ノウハウはある。一方、客から買っているのはリユース業界の人だけだ。そして、斯界のトップ企業にいて、それもナンバーワンの買い取りをしている店の店長、柴田は買い取りのプロと言えるのではないか。そこで、わたしは買い取りテクニックを彼に聞いた。
「そうですね。たとえばセレクトショップとかで働いていた方は、新品の定価はわかるんですよ。似たようなものを扱っていたから、だいたいわかるのでしょうけれど、それはセカストでは通用しないんです。まず、その品物を『買い取って、そしてリユース品として売る時に、いくら販売金額をつけるのか』。
■「100円」まで下げても売り場に置き続ける
査定とは買い取る値段よりも、いくらで売るかという販売金額を考えることなんです。『いくらなら次のお客さまにご購入いただけるんだろう』って、販売金額を決めて、そこから逆に金額を考える。販売できるものかどうかを判断しなくちゃならない。モノの状態であったり、人気ブランドであるかどうかが重要です。世界的な相場が決まっているブランド品であればよほど状態が悪くない限り買い取ります。
問題は売れるか売れないかわからないものにいくらの値段を付けるかです。買い取ったけれど、置いておいても売れない場合は値段を下げていきます。そして、100円まで下げたとしても売れないものもあるわけです。ただ、売り場に置いていたら、いつかは売れるものがあるから、売り場から引き揚げて処分することはほとんどありません。
ブランド品でも創業から何百年も経っているものは安心して買い取ることができます。一方、最近できた流行りのブランド品が難しい。今は高い値段で売れたとしても、3か月後、半年後はどうなっているかわからない。そういうものは買い取る値段は安くなります。在庫として売れるかどうかわからないわけですから。査定の金額を出すことは教育研修が難しい。けれど、研修は進めています。進めていかないと査定のレベルが統一されませんから」
■趣味性、嗜好性が高い品物ほど扱いが難しい
柴田は買い取り査定における経験の重要性を語る。確かに、そうだろう。だが、同時に全社的な教育も必要と強調する。セカンドストリートは多くの店舗を持つチェーンストアだ。独自の査定システムを導入し、標準化と仕組み化を進めている。
大勢の客のことを考えると、標準的な指針によるフェアな買い取りを進めることがもっとも重要になってくるのだろう。
柴田は前述のようにギターを弾いていたのがこのビジネスへの入り口だった。そうであるならばギターや楽器についての知見があるのだから、査定にも強いはずだ……。
柴田は言う。
「いやいや、プレーするのと商売するのは、感覚が違います。生意気なんですけれど僕はいいギターしか持ってないんです。ですが、うちで売れるギターって初心者用の低価格品が多い。だから、買取価格も初心者用はよくわからないです。
それに高級品のギターって買取価格が難しいんです。安く査定されるとプライドが傷つくでしょう。僕だって自分が持っているギターを安く評価されるのはイヤです。ギターもそうですけれど、趣味性、嗜好性が高い品物の場合、お客さまは『わかってる人』に買い取ってもらいたいと思っています。ブランド品でも本人が気に入っていた品物に安いと思われてしまう値段を付けたら、怒られたり、お叱りを受けることがあります」
■トラブルは売り場よりも「買い取り」で起きやすい
柴田の話を聞いていると、セカンドストリートでもスーパーセカンドストリートでも、従業員の仕事は買い取りに尽きる。販売しているところを見ていても、「安くしろ」と言う客はいない。誰もが値札を見て、淡々と買っていく。販売について、従業員にストレスはないのだろう。その代わり、買い取りについては時間がかかるし、悪戦苦闘している人もいた。
なお、買い取りできない商品というものがある。
ひとことで言えば、「売ることができないもの」だ。その範囲は広い。破損や汚れ、カビ、不快な臭いがあるもの。使用済みの肌着や水着、衛生用品など。また、偽造品・コピー品、一部の医療機器などは法令で規制されている。製造年が著しく古い家電製品、主要な付属品が欠品しているものなどもダメだ。
だが、どうしても買い取ってほしいという客がいる。また、査定金額に不満を漏らす客がいる。トラブルは買い取り現場で起こる。
柴田の体験である。
■「店長、出せー」と怒鳴り散らされて…
「内定をもらってから研修で配属された店で電子レンジを持ち込まれました。新品だけれど使い勝手が悪いから、使わずに持って来たとおっしゃってました。男性の中年の方でした。新品だからと、定価の半分くらいの買い取り金額を期待されていたようなのですけれど、ご提示した金額がご希望の半分にも満たなかった。定価の2割程度でした。ひどく怒られました。怒鳴り散らされて、『店長、出せー』。その後、店長も一緒に3人で話しましたが、結局、商品は持ち帰られました。
でも、その後もまた店には来てくれるようになりました。そういうことはあります。思うのですけれど、金額だけじゃないんです。自信なさそうにお客さまに金額を提示すると、お客さまもすごく不安になってしまう。思えば、お客さまだって、中古の商品の価格をわからないのです。ですから、自信を持って、決めた価格を言わなくてはいけない。
セカストでは販売でお客さまに『いかがですか』とお声掛けすることは正直ないんです。お客さまとお話しするとすればそれは買い取りの金額を提示する時だけなんです。私たちはちゃんと査定しているから自信を持つことができると思っています。そのうえでお客さまに対して真面目に丁寧に接客することが大切だと思っています」
■腕時計の置き方ひとつにも気を遣う
「お客さまにはほんとにちょっとしたことでも見られていると思っています。腕時計をお預かりする時、入ったばかりのアルバイトはペタッと、そのまま置くんです。しかし、腕時計を預かる時はできるだけ設置面を少なくして置く。必ず竜頭は上に向けます。そういう教育はきちんとやっています。マニュアルもあります」
セカンドストリートに勤めている人は柴田のようにモノが好きな人が多い。そうでなければ務まらない。柴田はギターが好きでセカンドストリートに入った。ギターに感じた愛情を時計や家電製品にそのまま移せばいい。モノに愛情を感じる人にとっては理想の職場だ。接客、買い取りについても根本的に必要な資質はモノをバカにしない、人が好きだということだ。モノにも、モノを大切にする人にもリスペクトがなければできない。
柴田は言う。
「僕に査定をさせていただければ、お売りいただける、1パーセントでも売るっていう気持ちがおありなら、そこにアプローチをかけるのは自信があります。モノへの愛情がすべてです」
■客の利益のためなら、売るのを止めることも
「『売っちゃうんですか。これ、あと10年したら、もっと価値が上がりますよ』と言ったことは何度もあります。実際、そうなると思います。でも、買い取らせていただきました。『そう言ってくれるあなたに買ってほしい』と言われました。デニムでした。リーバイスの古いデニムです。それでも売ってもらえない場合もありますよ。それは売るつもりがなくて、金額だけ聞きに来る人もいるからです。でも、それでもどんどんお越しいただきたい。いつかは買い取りができるかもしれませんから。
セカストって日々、店が変わっているんです。店によって置いてあるものも違います。当たり前ですよね。買い取りして店ができているわけですから。必ず売れるものも置いてあるし、掘り出し物がある店にもしたいです。だから、買い取りには精を出します。僕はセカストは買うことを楽しむ店じゃなくて、売ることを楽しむ店だと思うんです。そういう店って、リユース業しかつくれない店だからです。うちに来る人たちで売りに来た人たちは何か買って帰ります。そして、買ったものをまた売りに来る人もいます。
みなさん、高く買い取ると喜ぶんですよ。自分が500円で売ろうと思ったものが600円で売れたらすごく喜んでいます。自分が選んだモノの価値が思っていたよりも高いとわかると嬉しいのでしょう」
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野地 秩嘉(のじ・つねよし)
ノンフィクション作家
1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュをはじめ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。著書は『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)、『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『京味物語』『ビートルズを呼んだ男』『トヨタ物語』(千住博解説、新潮文庫)、『名門再生 太平洋クラブ物語』(プレジデント社)、『伊藤忠 財閥系を超えた最強商人』(ダイヤモンド社)など著書多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。ビジネスインサイダーにて「一生に一度は見たい東京美術案内」を連載中。
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(ノンフィクション作家 野地 秩嘉)

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