■日銀は金利を0.75%で据え置き
昨年12月に日銀が政策金利を上げた。2024年3月にマイナス金利を解除して以来連続3回の利上げで、政策金利は0.75%になり、1995年以来30年ぶりの金利水準となった。1月23日には0.75%での据え置きが決まった。
銀行預金金利は年1%を超えるものが出てきており、今後も預金金利は高くなりそうで、生活者にとってはいいが、一方、住宅ローンを変動金利で借りている人は、戦々恐々だろう。住宅ローンを借りている人の大多数、79%が変動金利なのだから不安に思って当然だ。
このまま金利が高くなると、金利負担で大きな出費を余儀なくされるのではないか?
特に無理して多額の借り入れを行い、30年から35年、または最近増えている50年といった長期のローンを組んだ人ほど、将来がどうなるかは心配だろう。
心配する前に変動金利の仕組みを調べてみて本当に変動金利は危険なのか、損をしない対策はあるのか、考えてみよう。
■この15年は「超低金利」だった
住宅ローンの形態には大きく分けて、固定金利と変動金利の2通りがある。
固定金利の住宅ローンは借入から返済まで金利が変わらない。それゆえ、借入期間が10年であろうが35年であろうが、返済金利は一定なので、今後の利上げがあっても返済額は全く増えない。
これに対し、変動金利は6カ月ごとに金利が変動する。
この説明を読めば、「なぜ固定金利にしないのか?」と思うだろう。ところが、図表1を見てもらえばわかるが、固定金利は変動金利に比べ年利ベースで1%以上高い、しかも変動金利は2010年から0.5%程度の超低金利で推移していたので、皆、変動金利で借りていたのだ。
■変動金利アップには罠がある
はじめに金利が上がって変動金利の人は大変だと書いたが、そう思って心配している人もいれば、ほとんど心配していない人もいる。なぜなら、変動金利には実質金利が上がっても、返済額自体はすぐに上がらない仕組みがあるのだ。
「5年ルール」「125%ルール」と呼ばれるものがそれだ。
「5年ルール」では、金利が上がっても、返済金額自体は、5年間は増えない。なぜか。住宅ローンで現在主流となっている「元利均等返済」の場合、元利を含めた返済額は一定で、金利が上がっても変わらない。ただし返済する金利は着実に増えていき、元本が減る。これが5年間続く。そして5年後にやっと返済額自体が上がるという仕組みなのだ。
また「125%ルール」は、5年後には返済額自体が増えるが、それまでの返済額の25%を超えた場合は25%のラインで打ち止めとなるということ。
例えば年間100万円ずつ返済していた場合、5年後には金利が上がって130万円になっても125万円に抑えられる仕組みだ。
そうすると最終的にはどうなるか? もちろん超過した分を銀行が免除してくれるわけはない。返済完了時に一括現金で請求されるのだ。
■毎月の返済額は増えないが…
つまり、毎月差し引かれるローン返済額はすぐには増えない。または、増えても限度があるが、最終的にまとめて差額を支払うことになるというシステムなのだ。
「5年ルール」も「125%ルール」も一時的な緩和措置で、救済措置ではないということに注意をする必要がある。
だから、変動金利で借りている人の中には「へー、金利が上がったの? でも、実際の返済額は増えてないよね」とあまり気にしない人もいるようだ。
■最終的に利息はどれだけ増えるか
このまま利上げが続いたら、最終的にどのくらい返済利息が増えるだろうか?
このテーマは簡単に結論が出せるものではない。そもそも将来の金利がどうなるかは誰もわからないのだから。ただし、固定金利と変動金利の性質を考えて、ある程度の推測をすることは可能だ。試算してみよう。
図表3、4を見てほしい。
5000万円を35年ローンで借りた場合、固定金利と変動金利の差を比較すると次のようになる。
2016年から借りたとして試算すると、変動金利のはじめの10年間の平均はほぼ0.5%、固定金利(フラット35)は全期間1.6%だった。
仮に変動金利が35年間0.5%で続いたとするとして返済総額の差は1081万9000円にもなる。
これを見ても長期ローンの場合の金利差の影響が大きいことがわかるだろう。
はじめの10年を比較すると返済総額は固定金利が1866万6000円、変動金利が1557万5000円で固定金利のほうが300万円以上大きいが、返済元本を見ると、変動金利で1340万4000円、固定金利で1155万9000円と、逆に変動金利のほうが約200万円多く返せている。それに支払い金利総額は、固定金利のほうが変動金利より500万円近く多い。
■変動金利の有利さは一目瞭然
すなわち、変動金利で借りたほうが、少ない支払いで、多くの元本を返済できるということだ。変動金利の有利さは一目瞭然である。
この前提で考えると、最初の10年の返済総額は変動金利のほうが309万1000円少ない。
この差を後の25年で埋めて変動金利の返済額が固定金利並みに悪くなるためには、あとの25年の変動金利の平均が2.6%になる必要がある。現時点の変動金利の出発点を0.5%として、返済期間の終わりに4.7%まで上がらないと、平均は2.6%にならない。
ポイントは、25年後までに変動金利が4.7%以上になるのが現実的かということだ。
■変動金利4.7%以上は現実的か
1回0.25%ずつ上げたとして12回の利上げが必要である。25年の間、2年に1度の利上げをコンスタントに行っていく。金利というのは上がったり下がったりするのが歴史的にも普通だし、どの国でもそうである。
実際に、アメリカの2026年1月現在の政策金利誘導目標は3.5%から3.75%である。
アメリカは年1%のペースで人口が増え続けており、日本は0.7%で減少、アメリカの全人口の平均年齢が38.5歳であるのに対し、日本は49.9歳である。日本のような少子高齢化の国で金利を一方通行で上げ続けるというのは現実的ではないだろう。
図表1にみられるように、変動金利は固定金利に比べて1%以上も低い。消費者にとっては将来、利上げリスクさえなければ、変動金利の方が断然得だ。
ではなぜ、変動金利のほうが低いのだろうか? 基本に立ち返って考えてみよう。
■変動金利は「超短期金利」に近い
住宅ローンを理解するうえで重要なのは、変動金利と固定金利はまったく異なるリスク構造を持つ商品だという点である。
変動金利は、実態としては日銀の政策金利や無担保コール翌日物金利といった超短期金利(1日で貸し借りする際に使われる金利)に極めて近い。
半年ごとに金利が見直されるという形式を取るものの、その中身は「超短期金利を定期的に再計算しているローン」と考えるのが適切である。このため、将来金利が上昇すれば、その影響は原則として借り手が直接負う。銀行は金利変動リスクをほとんど負わないため、金利水準は低く設定されている。制度上は短期プライムレートを基準として決定されることになっているが、それよりかなり低い。
これに対して固定金利は、金利上昇リスクを借り手から切り離し、誰かが引き受ける商品である。10年固定金利の場合、そのリスクを引き受けるのは銀行自身である。銀行は10年間にわたり金利を固定するため、将来の政策金利上昇や市場金利の変動に備えて、金利スワップや資金調達構造(ALM)によるヘッジを行う必要がある。このコストと不確実性は金利に上乗せされ、結果として変動金利より高い水準となる。
■固定金利は「保険付きの商品」
一方、「フラット35」は固定金利ではあるものの、その性格は10年固定とは異なる。フラット35では、銀行は貸出後に債権を住宅金融支援機構へ譲渡し、機構がそれを証券化して市場に流す。金利上昇リスクは、証券を購入する年金基金や生命保険会社などの長期投資家に分散される。
変動金利の場合、金利変動リスクを借り手が100%負うため、「保険の付いていない商品」という表現が当てはまるが、10年固定や「フラット35」はいずれも金利上昇リスクを第三者が負うので、程度の差はあれ「保険付き商品」である。いずれにせよ「保険付きの商品」であるからこそ、保険料の分だけ金利は変動金利より高くなる。
■将来は金利がどんどん上がる?
最新の発表では、2026年2月、10年固定の最優遇金利は三菱UFJ銀が2.75%、三井住友銀行が2.85%、みずほ銀行は2.75%、三井住友信託銀行は3.175%、りそな銀行は3.165%と前月比0.2%前後、上がる。一方、変動型の金利は5行とも据え置く。
変動金利と固定金利のどちらが有利かは、今後の金利政策しだいである。
ポイントは日本経済は単純な「インフレ局面」でも「デフレ局面」でもなく、相反する二つの力を同時に抱えているということだ。
一方では、少子高齢化による労働力不足が進み、賃金引き上げ圧力が生じている。人手不足を背景に、企業は賃上げや待遇改善を迫られ、サービス価格を中心にインフレ圧力が発生しやすい構造になっている。特に人手に依存する分野では、コスト上昇が価格に転嫁されやすく、日銀が掲げる「物価上昇率2%」に近づく局面も今後繰り返し現れるだろう。
しかしその一方で、日本経済には長期的な人口減少による需要縮小という強いデフレ要因が存在する。日本では毎年およそ0.7%程度の人口減少が続いており、住宅、消費財、サービスを含むあらゆる分野で、長期的には需要が細っていく。
企業が恒常的な賃上げを行うためには、生産性の持続的な向上が不可欠だが、人口減の社会で長期的な需要が上向くかという問題があり、また日本では解雇規制が厳しく、賃金を柔軟に調整しにくい制度的制約も残っている。
この矛盾を緩和する手段として期待されているのが、AIやロボットによる省人化・生産性向上である。しかし、これらは労働力不足を部分的に補う効果はあっても、経済全体の潜在成長率を大きく引き上げる決定打になるかは不透明である。結果として、日本経済は「局所的なインフレ」と「構造的なデフレ圧力」が併存する状態から、簡単には抜け出せないと考えられる。
■25年後に5%近くになる可能性
こうした状況下で、日本銀行が急激な利上げに踏み切る可能性は低い。短期的に物価が上振れする局面では政策金利を引き上げる余地はあるものの、それはあくまで限定的で、景気や家計に強い負担を与える水準まで金利を引き上げることは難しい。
総じて言えば、今後の日本の金利政策は、持続的に利上げを繰り返すような局面ではなく、低金利を基調としながら、景気や物価の振れに応じて小幅に調整する状態が長く続く可能性が高い。
持続的な高インフレを前提とした金融引き締め局面に移行するには、日本経済の構造そのものが大きく変わる必要があり、そのハードルは依然として高いと言える。
政策金利が上がっても、変動金利は固定金利より1%以上安く、借り手にとってのメリットは当分続く。
変動金利の返済額が固定金利の返済額を上回るには、借入金額5000万円、固定金利年1.6%、変動金利0.5%(最初の10年間)返済年数35年、かつ、現在まで借り入れ10年を経過した人で試算すると、今後の25年間で変動金利が0.5%から4.7%以上にまで上昇する必要がある。
現在、0.75%の日銀政策金利が25年間で4.7%にまで上昇する事態は考えにくい。よって、変動金利の住宅ローンを固定金利に乗り換えなくてもよいと思われる。
■これから住宅ローンを組むなら?
最後に、これから住宅ローンを借りる人はどうしたらいいだろうか?
三菱UFJ銀行は2026年3月1日、新規で借りる場合の変動金利の基準金利を見直すという。
現在の変動金利は0.8%程度、35年ローンの「フラット35」は1.9%でその差は1.1%だ。金利差は先ほど試算したケースと同じ。最初の10年は安い変動金利のメリットを受けることができたが、今回の場合はそれがない。だから、今年0.8%の変動金利が35年平均で1.9%になるためには、「35年後に3.0%」と計算できる。
先程のケースでは25年間で4.7%以上にならなければ変動金利のほうが得ということだったが、今回は35年で0.8%の金利が3.0%になれば固定金利と同等になる。アメリカの政策金利は現在3.5から3.75%なので、日本の金利が35年後に3.0%になっている可能性はないとは言えない。確率的にはありうるだろう。
対策としては、次の方法があげられる。
1)変動金利と「フラット35」の固定金利を半々にして住宅ローンを組む。
そうすれば、35年後の金利が3.0%を超えても、すなわち、35年の平均金利が1.9%を超えても、半額は固定金利でリスクヘッジできる。
2)変動金利で借りる場合には、自分の資金余力一杯の借り入れを行わず、金利が上がったときは、借入額の一部を早期返済ができる余裕資金をもっておく。
将来の金利の動向を正確に予想することは困難なので、そのような対策は常に考えておく必要がある。
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浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。
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(コンサルタント 浦上 登)

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