※本稿は、出口治明『誰も行ったことのない場所へ行こう。そして誰もやらなかったことをやろう。』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■人生は多種多様な「問い」の連続
ときに逆境に遭遇する人生には、気力、体力、精神力などさまざまな「力」が必要ですが、いちばん重要なのは「知の力」です。
ひらめきも、思考力も、材料となる「知」が必要です。
ではどうやって学んでいけばいいのでしょう。
新しい企画を出すにしろ、これまでと違う売り方を模索するにしろ、あるいは会議で自分の意見をいうにしろ、仕事では常に何らかの「答え」をアウトプットすることが求められます。
与えられた問いに答えを出すには、自分の頭で「考える」しかありません。思考しなければ、何かを思いついたり、判断したりできないのは当たり前のことです。
学校で使っていた問題集なら、どうしてもわからなければ「正解」のページを見れば答えが書いてありました。しかし仕事で投げかけられる問いには、正解がありません。
だからとにかく自分なりの答えが出るまで「考える」しかないのですが、何をどう考えればいいのかもわからない問題は世の中にはたくさんあります。いくら考えても、良いアイデアが浮かばないことは少なくありません。
あなたも、仕事で与えられた課題をどう考えればいいのか悩むことがあるのではないでしょうか。「高い思考力があれば、いろんな問題により良い答えを出すことができるのに」というわけです。
それは仕事にかぎったことではありません。僕たちの人生は多種多様な「問い」の連続です。より良く生きていくには、あらゆる物事をよく考えなければいけません。
■材料がなければ、何も考えることができない
では、そもそも「思考」とは何か。そこから「思考」してみましょう。「いま考え中です」といっている人の頭の中で何が起きているのかは、外から見てもわかりません。いや、おそらく本人にさえ、よくわかっていないでしょう。
僕たちは、自分の脳の中で物事を考えます。
ですから、自分の脳にそのための材料がなければ、何も考えることができないでしょう。数学の試験を思い出せばわかるように、何らかの問いが与えられると、僕たちはこれまで自分の脳に蓄えてきた知識や情報を引き出し、アレとコレとを組み合わせることで、答えを出そうとします。
それが「考える」という作業にほかなりません。脳の中に公式や定理や計算方法などの知識があるから、それを使うことで数学の問題に答えを出せるのです。自分の頭の外から、答えやアイデアが降ってくることはありません。
他人の脳で考えることができないのですからそれが当然なのですが、人はしばしば何もないところからパッと答えが浮かぶかのように錯覚します。
よく「天啓のようなひらめき」などというのがそれです。考え出した本人も、なぜそんなことを思いついたのかわからないので、まるで無から有が生まれたかのように感じるのでしょう。
■思考力を高めるいちばんの近道
でも、それは天啓でも何でもありません。その「ひらめき」を生み出した材料も、間違いなく自分の頭の中にあったものです。
本人は自分がその材料を持っていたことを自覚していないので、「空から降ってきた」ように感じるかもしれません。
いくら考えても出てこなかったアイデアが、お風呂やトイレに入った瞬間に突如として頭に浮かんだという話はよく聞きます。それは、考えるのをやめたから出てきたわけではありません。
それまで考えに考え抜いていたからこそ、何かの拍子に脳の中で材料と材料が組み合わさって、思いがけない答えになるのです。
したがって「考える力」を高めるためには、そのための材料を脳にたくさんインプットしておくしかありません。知識や情報をできるだけたくさん蓄える――つまり、たくさん「勉強」するのです。遠回りに思えるかもしれませんが、じつはそれが思考力を高めるいちばんの近道にほかなりません。
社会人になったばかりのあなたは、学生時代までで「勉強」はもう終わったと思っていたでしょうか? でも、「学業」は大学卒業で終わったとしても、「勉強」は死ぬまで続けるものです。
なかには、「いわれなくても、仕事で勉強すべきことはいろいろあるので、ちゃんとやってますよ」という人もいるでしょう。たしかに、仕事を始めたばかりの社会人には、会社の業務に関連する膨大な知識を身につける必要があります。目を通すべき本や資料もたくさんあるはずです。
あるいは、キャリアアップのために必要な資格を取得するための試験勉強に励んでいる人もいるかもしれません。
■思考の材料となる知識や情報に多様性を
でも僕のいう「勉強」は、そういうものではありません。
もちろん仕事に直接関わる知識は覚えなければいけませんし、資格を取るのもいいでしょう。しかし、それは思考力を高めるのに役立つ勉強ではありません。
というのも、仕事や資格に関係する専門知識だけが増えていくと、かえって物事の見方や考え方が硬直化してしまい、柔軟な思考ができなくなることもあります。考える力そのものを高めるには、もっと幅広い知識が必要です。
たとえば会議のような場では、参加メンバーそれぞれの考え方に基づく多様な意見が求められます。みんなが同じような考え方をするなら、わざわざ集まって会議など開く意味がありません。
でも、みんなが自分たちの専門分野に関する勉強しかしていなかったとしたら、どうでしょう。それぞれの考え方が同じようなものになってしまいそうですよね。
思考の材料となる知識や情報に「人それぞれ」の多様性がなければ、出てくる意見も多様にはならないでしょう。結局、その分野における従来の「常識」に沿った考え方しかできなくなるおそれもあります。
■人とは違う思考の材料を脳の中にストックする
あなたの会社の会議は、どうでしょうか。そういう「常識」に当てはまらない意見を口にする人も、少なからずいるはずです。ほかの人が思いつかないような意見を見聞きすると、その人が特別な思考力の持ち主のように感じられるかもしれません。
でも、特別なのはその人の思考力ではなく、思考に使う材料のほうだと思ったほうがいいでしょう。
たしかに、同じ材料を使うなら思考力そのものが高い(端的にいえば「頭がいい」)人のほうが、良い答えに早くたどりつきます。しかし、どんなに頭がよくても、人と同じ材料しか持っていなければ、同じような答えしか出てきません。
ですから、ほかの人とは違う自分ならではの考え方ができるようになりたければ、人とは違う思考の材料を脳の中にストックすることです。幅広い勉強を通じて、さまざまな知識を頭にインプットすると、ほかの人とは違うあなた独自の「思考軸」が持てるようになるでしょう。
思考軸とは、その人ならではの物事の「見方」のようなものです。物事の見方は人によって異なるので、「正しい思考軸」というものはありません。それぞれの人が、さまざまな傾きの思考軸を持っています。
■「知の力」が、いざというときの自分を助けてくれる
軸の「太さ」も人によって違います。
別の言葉でいえば、それは「知の力」にほかなりません。フランシス・ベーコンは“knowledge is power(知識は力である)”と述べました。ジョージ・オーウェルのディストピア小説『一九八四年』の中で政府は、“ignorance is strength(無知が力である)”をスローガンとしています。
ときに逆境に遭遇する人生には、気力、体力、精神力などさまざまな「力」が必要ですが、いちばん重要なのは「知の力」だと僕は思います。
実際、病気で倒れてから復活するまでのあいだも、それまで多くの本から学んだ知識や考え方が大いに役立ちました。
もう自分の足では歩けないと知ったとき、僕は少しも落ち込みませんでしたが、それは気力や精神力によるものではなく、「知の力」が僕を支えてくれたからなのです。
----------
出口 治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)前学長
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年退職。同年、ネットライフ企画(現・ライフネット生命)を設立し、社長に就任。2012年に上場。2018年よりAPU学長。読んだ本は1万冊超。主な著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『全世界史』(上・下、新潮文庫)、『一気読み世界史』(日経BP)、『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『人類5000年史』(I~IV、ちくま新書)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『復活への底力』(講談社現代新書)、『「捨てる」思考法』(毎日新聞出版)など多数。
----------
(立命館アジア太平洋大学(APU)前学長 出口 治明)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
