■貧富の差がますます開く
高市早苗政権が総選挙で歴史的な圧勝をしました。しかし、これにより、国民の大部分の生活は豊かになるどころか、厳しさを増し、貧富の差がますます開くこととなります。
総選挙での自民党圧勝により、自民党単独でも衆院の3分の2以上を占めるようになり、維新を加えると圧倒的多数の与党が作られました。これにより予算案や法案の国会での議決がとても楽になります。
予算審議が遅れることが選挙前にはとても心配されましたが、年度内に成立するかは今のところ不明であるものの、約122兆5000億円の一般会計予算は、比較的すんなりと国会を通過することが考えられます。「高市独裁政権」などと揶揄する向きもありますが、中身はともかく予算審議がスムーズに進みやすいことはいずれにしてもよいことです。
さらには、高市首相の主張する「責任ある積極財政」ですが、「責任ある」の部分がさらになおざりになり、「積極財政」が展開されることとなります。これも、短期的には経済を刺激しますから、株高の要因です。
しかし、もちろんよいことばかりではありません。
■消費税減税は本当にできるのか
首相が悲願とまで言った食料品についての2年間の消費税非課税の公約ですが、夏場以降に国民会議で議論することとなります。大方の野党も国民会議への参加の意向ですが、チームみらいを除く野党も消費税減税を声高に叫んだ以上、最低でも自民党案の2年間の食料品に対する消費税非課税は行われる可能性が高いと考えられます。
しかし、後で述べる財源の問題、そして減税の範囲と期間についてはもめることが必至で、そうスムーズには進まないことも予想できます。
給付付き税額控除という、減税効果がない低所得層に対しては給付金を渡し、他には税額控除をするという、本来行われるべき政策が行われるまでということのようですが、いずれにしても、消費税減税は時間がかかるものの行われると考えられます。
時間がかかれば、消費税減税の恩恵も効果が薄らぎます。とくにコメが高止まりしている中で低所得層はその実行を強く望んでいるはずです。
そして、減税を行う際に注意しなければならないこと。それは消費税は社会保障のための原資であり、その代替の財源の問題が十分に議論されていないことです。食料品だけを消費税の対象としないとする与党案でも5兆円程度の税収が落ちると試算されています。
■イタリアの悲劇
消費税は、社会保障に充てられる目的税です。先進国中、財政赤字が対名目GDP比で230%を超え最悪と言われる日本の財政状況の下で、なおかつ今後の医療や介護、年金の社会保障費が大幅に増加すると見込まれる中での減税です。
私は、イタリアの知人から聞いた話を思い出しました。
イタリアでは、基本的に医療は無料です。先進国では財政状況が日本に次いで悪い(対名目GDP比135%)イタリアですが、EU加盟の北の国々で医療が無料のために、イタリアもポピュリズムもあり医療費は無料です。
その知人は、具合が悪くなり病院に行って点滴を受けたのですが、点滴が空になっても数時間そのまま放置され、結局自分で点滴の針を抜いて帰ったと言っていました。そのため、お金持ちは自費のクリニックへ行くそうです。財政状況が悪いために、公共の医療では十分な治療が受けられないことがあるのです。
イギリスでも、手術まで数カ月から数年待たされるという報道がありました。財源の関係で公的に十分な医療の提供ができなくなっているのです。
日本でも、現状でも医療サービスのレベルを政府が落とそうとしている話を医療関係の経営者からは多く聞きます。ひとつの方法はベッド数の削減です。厚生労働省はこれを推し進めようとしています。全国レベルでベッド数を大幅に削減する話が進んでいるのです。
ベッドがあるから入院させて、その分、高額な医療費がかかるのですが、ベッド数、ひいては病院を減らすことで、医療の供給量を減らそうとしています。とくに高齢者には、在宅での治療へのシフトが今後急速にすすめられるようになります。
また、病院だけでなく一般の診療所も、現在では無制限に行われている治療や投薬に制限を設ける動きや、ドラッグストアでも買えるような湿布薬のような薬に対しても、診療所などでの処方に制限をかける動きもあります。これも診療を差し控える効果もあり、医療費の削減を促すものです。
■消費税減税の財源を確保できなければ金利急騰も
消費税を削減することは、社会保障のレベルの低下を促す危険がありますが、それを避けるためには当然、その財源を確保しなければなりません。
財源確保には、法人税や所得税などの課税強化、あるいは政府保有財産の売却、それとも赤字国債の増発などの方法が考えられます。
しかし、法人税や所得税の増税には、大きな反発が予想されます。財産税を新設するなら自民党支持層が多い富裕層からの猛反発は避けられません。また、政府に売るものが十分にあれば、こんな財政状況にはなっていません。
外貨準備が1兆3300億ドル以上ありますが、もともと外貨準備を賄う資金は短期の国債です。今は、円安で「ほくほく」なほどの利益が出ていますが、いずれにしても国債の返済が必要です。
そうすると、安易な手段は赤字国債の増発です。そして先般の18兆円ほどの補正予算の時もそうであったように、赤字国債により消費税減税が行われる可能性も低くはありません。そうなると、それでなくても急上昇した長期金利がさらに上がります。
図表1にあるように、2025年1月に1.2%程度だった10年国債利回りは、2026年1月末では2.24%、選挙投開票翌日の9日の終値は2.275%でした。これがさらに上昇することが予想されるのです。企業の金利負担も増え、また固定金利で住宅ローンを借りようとする人にも悪影響が出ます。
■銀行は大儲け
一方、政策金利に連動する短期金利も上昇する可能性が高いでしょう。2025年12月に日銀は政策金利(コール翌日物:1日だけ銀行間で貸し借りする金利)をそれまでの0.5%から0.75%に上昇させました。これにより、企業の短期借入れや変動物の住宅ローン金利で借りている人たちの金利が上がりました。
現状のインフレ率(12月で2.4%)などを考えれば、さらに上昇することが予想されます。2月2日から普通預金金利はそれまでの0.2%から0.3%に0.1%上昇しましたが、貸出金利は、最低でも政策金利上昇分の0.25%は上昇します。私の顧客の中には、それ以上の上昇を言い渡されたところもあります。つまり銀行は、金利上昇により、預金と貸出しの金利差が広がり、これまで以上に儲かるのです。
さらには、短期金利だけでなく長期金利の上昇に関しても、同様の利ザヤの広がりがあり、金融機関のもうけが拡大します。事実、総選挙の結果が出た翌日の東京株式市場では、日経平均株価が2000円以上上昇しましたが、その中で銀行やリース会社などの金融株が、軒並み上昇しました。
■実質賃金は上がるのか
この連載ではこれまでも何度か実質賃金(インフレ調整後の賃金)のマイナスが続いていることに触れてきましたが、実質賃金が上がるかどうかも注目点です。
2025年には現金給与総額(給与、残業代、賞与の合計)は実額を表す名目で2.3%増の月平均で35万5919円でしたが、物価上昇のせいで実質賃金はマイナス1.3%となりました。24年のマイナス0.3%よりもマイナス幅が拡大しました。名目賃金は5年連続で増加ですが、実質賃金は4年連続マイナスが続いており、国民生活は苦しくなるばかりです。春闘で物価上昇を上回る賃金の上昇が行われるかが焦点です。
この点においては、株価は総じて好調ですが、企業業績はまだら模様で、業績が良好な企業ではある程度の賃金上昇は見込めるものの、そうでないところはなかなか難しいのも現状です。また、働く人の7割を雇用する中小企業では、大企業より難しいのは明らかです。
さらに、高市内閣開始以降円安が続いており、輸入物価上昇の懸念もあります。「積極財政」は物価上昇を生みやすいことも明らかです。
こうしたことを考えると、インフレは長引き、実質賃金のマイナスもさらに続く可能性は高いでしょう。
前回にも触れたように、純金融資産が1億円以上の富裕層は全世帯の3%で、彼らは金利上昇や配当の増加で潤いますが、大方の人には厳しい状況が続きます。
いずれにしても、絶対多数を確保した高市政権の消費税減税の動きや経済、金融政策からは目が離せません。「働いて、働いて……」実績を出してほしいものです。
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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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