■「まいばす」よりピンチな「コンビニ」
つい最近まで九州ローカルであった「トライアルGO」が、コンパクトな売り場ながら生鮮食品をたっぷり扱う「ミニスーパー」として、あっという間に都内に進出してきた。昨年11月に1号店をオープンして以来、わずか2カ月で4店舗に拡大。2月20日には練馬区に5店舗目のオープンも控えている。
ランチタイムを中心に各地の店舗を見る限り、オープン3カ月を過ぎてもにぎわいを保ち続け、他社の客をじわじわと奪っているようだ。
そんな「トライアルGO」のライバルとして目されるのが、同じミニスーパー業態として首都圏を制圧しつつある「まいばすけっと」だ。しかし、この2社の競争は、ミニスーパー同士の争いにとどまらず、コンビニ業界にも影響を及ぼしている。それどころか、「自滅」というケースだって、有り得なくはない。
「トライアルGO」の何が既存の競合店を脅かしているのだろうか。違いは「弁当の差」「商品の価格」と言われているが、新店の中でも「まいばすけっと2軒・コンビニ7軒」という激しい競合に晒されている「トライアルGO中野中央5丁目店」を中心に、店内外を観察してみたところ……上記2点だけではない、「トライアルGO」に買い物客が流れてしまう理由が見えた。
今後の「トライアルGO」は、ミニスーパーとして「まいばすけっと」をライバルとしていくのか? さらに、コンビニに及ぼす影響と今後の動向も考えていこう。
■朝・夕ともに集客力の差が目立つ
2025年12月12日にオープンした「トライアルGO 中野中央5丁目店」の50m先には、おなじミニスーパーの「まいばすけっと新中野駅西店」がある。2軒隣とあって、互いの玄関先から向こうの店に入る買い物客の顔が、はっきり見えるほどに近い。
さらに、東側の「杉山公園」交差点を挟んだ向かいには「まいばすけっと新中野駅前店」、おおよそ500m圏内にはセブン‐イレブン・ファミリーマート・ミニストップなどのコンビニ7軒。もちろん、スーパー・仕出し弁当店も複数あり……出店を決めた担当者様の度胸を褒めたくなるような激戦区だ。
そんな「トライアルGO」と「まいばすけっと」を中心に観察したところ、昼ピークの集客の差に驚いた。「トライアルGO」は昼ピーク時(12時過ぎ)を過ぎても人でぎっしり、店内は常時10人以上の買い物客で賑わっているのに対して、50m先の「まいばすけっと」店内の買い物客は、いても3~4人といったところ。どちらに入店するか決めていない買い物客も、両店にチラッと目線を切って悩んだうえで、高確率で「トライアルGO」に入っていく。
朝・夕方で見ても、どうやらおなじ傾向があるようで、現状では「ピーク時を中心に、トライアルGO圧勝」といった印象を受けた。なぜ集客力に差がついているのか? さっそく、入店して比較してみよう。
■勝因は「常温・500円以下の弁当」にあり
「トライアルGO」と、コンビニ・まいばすけっとの間にある「弁当の差」は、既にかなり報じられているので、多くを語らずもよいだろう。
コンビニ・まいばすけっとの弁当は、製造から数時間かけて工場→配送センター→店舗といったルートで、数時間かけて入荷するのに対して、「トライアルGO」は同グループのスーパー「西友」(2025年にグループ入り)のキッチンで調理され、短時間で店頭に並ぶ。
コンビニ・まいばすけっとが「冷えて固まった弁当をキンキンに冷やして長時間販売」に対して、「近所で製造して配送、常温でサッと売り切る」のが「トライアルGO」と考えてよい。
さらに、物流・人材の効率化によって「ほとんどの弁当が500円内」とあっては、買い物客に選ばれるのは必然だろう。おおむねの価格差としては、高い順にコンビニ>まいばすけっと>トライアルGOといった印象だ。
他社との差別化の要因はもうひとつ、「目を引く弁当陳列」にもあった。
「トライアルGO」は入り口の最短距離に弁当を配置するために、弁当を平置きできる高さ50cm~150cmほどの平置き棚を設置している。買い物客は入店してコンマ数秒で、棚にぎっしり詰め込まれた、200~300個の弁当やおにぎりを目にする。(海鮮系・麺類は冷蔵ショーケースで展示)ランチタイムになると、これがものすごい勢いで買い物客に取り尽くされ……これが、「トライアルGO」のにぎわいの要因だ。
■入り口すぐ・平置き300個の圧倒的存在感
特に、大ヒット作「ロースかつ重」(税込み343円)の集中展示が目を引く。3個積み×ヨコ7列、タテ3列に「かつ重の丘」状態でズラッと展示されているにもかかわらず、ランチタイムの15分ほどで30個以上も売れ、丘はどんどん切り崩されていった。
なにぶん、2軒隣の「まいばすけっと」のかつ重(税込み430円)より2割も安く、ご飯が冷えていないのだから、相当数の方がこちらを選ぶだろう。「まいばすけっと」に比べて「セルフレジが面倒」「キャッシュレスがクレカ・専用プリカなどしかない」(PayPayすらも非対応)といった難点もあるが、これだけ値差があるなら、だいたい「トライアルGO」が選ばれる。
この“爆売れ”ぶりのせいか、「トライアルGO」店内を覗き込んだ人々は「え、何があったの?」とばかりに入店してくる。この「弁当平置き展示」が、ピーク時の集客の好循環に繋がっていることは、間違いない。
この展示方法はもうひとつ、「店内奥までズバッと見渡せる」という副産物もある。店内の視界が利くようになるため、解放感の演出ができるのもメリットだ。
■回遊を捨て、“見せて”呼び込む
通常のコンビニや「まいばすけっと」は誘導・回遊を発生させるレイアウトとなっており、入り口すぐの場所は高さ150~180cmほどのゴンドラ棚に塞がれるため、店内を見渡せない。弁当やパンなどにあえて最短距離で行かせず、途中で見かけた商品を1品、2品と多く買ってもらおう、という仕掛けだ。
一方で「トライアルGO」は、弁当の平置き棚の背が低く、敷地が縦長の中野中央5丁目店でも最奥部近くまで見渡せる。弁当を手に取って向こうに見えるのは、数cmの分厚い卵が目を引く「たっぷり玉子サンド」(税込み199円)や「クリームの重みで生地が悲鳴!」とパッケージに大書されたロールケーキ、パンのコーナーには税込み98円の「トライアルブレッド」(食パン)など……見通せる範囲に人気商品を置いたうえで、店の奥に引き込む構造だ。
レイアウトを対比するなら、以下のような感じだろうか。(もちろん各店で例外あり)
コンビニ=売れ筋の弁当・パンまで、あえて最短距離を歩かせず回遊させる
まいばすけっと=売れ筋の弁当・パンはやや奥。生鮮食品のショーケースを見ながら奥まで歩かせる
トライアルGO=売れ筋の弁当は前。見通しが良い動線に人気商品を置き、奥まで進入させる
実際の「トライアルGO」は安いだけでなく、「人気商品はとにかく買いやすく」「店内を歩きやすく」といった、小売業としての基本的な創意工夫がある。店舗として魅力があり、「ありったけデジタル化した、アナログな小売業」であるからこそ、「トライアルGO」は激戦区の中でも集客ができているように見えた。
■効率重視の副作用
ただ、時間帯を変えて深夜に訪れた限り、「トライアルGO」の弱点「欠品多発店舗のリカバリー力の弱さ」も見えた。
まず、昼間に集客力のキーとなっていた平置き棚には、夜9時以降は1個も弁当が展示されていない場合もあった。効率を重んじる「トライアルGO」の弁当は早期に割引をかけて弁当を売り切ることもあってか完売が早く、弁当の製造元である西友も深夜には配送できない(閉店している)ため、夜にはこういった欠品が生じやすい印象だ。
また、お菓子棚の商品が床に落ちてもそのままになっている(筆者がひっそり直し、ついでに横の商品もフェイスアップして帰ってきた)など、清掃などに時間を割けない省人化店舗ならではのデメリットも垣間見えた。「トライアルGO」各店とも夜9時を過ぎると、お目当ての商品がないため買い物をせず、近隣の「まいばすけっと」やコンビニに行く人々も多い印象だ。
「トライアルGO」は合理化による「1日30人時」(1日で合計30時間分の労働力。だいたい1人~2人でスタッフを賄える計算)による店舗運営を目指しているという。ただデータ重視・合理化の副産物として、中野中央5丁目店のような想定外に売れすぎる店舗では、欠品による“売り逃がし”問題も生じがち。在庫を置きすぎてロスが発生するよりは良いのかもしれないが、売り切れが多発し過ぎるのも考えものだ。
■まいばすはイオンのスケールで対抗
「トライアルGO」は、競合相手の「まいばすけっと」やコンビニから顧客を吸い取りつつあるものの、2026年1月現在で13店舗しかない。では、首都圏1200店舗の「まいばすけっと」や、都内だけで1600店以上の「セブン‐イレブン」などのコンビニに追いつき、追い越す日が来るのか? 可能性を予測してみよう。
まず、同じミニスーパーである「まいばすけっと」は「イオン経済圏」にある限り安泰だ。いかに「トライアルGO」がDX化で細かく無駄を省こうとも、「まいばすけっと」はイオンの配送網で商品供給を受けているため、イオンならではのスケールメリットを存分に生かした利益改善ができる。
また、イオン・吉田昭夫社長が、「PB(プライベートブランド・オリジナル商品)の『まいばすけっと』における売上構成比は20%。もっと比率を増やせば、価格競争力、収益性を高められる」(2024年10月11日「流通ニュース」より)と語っているように、イオンのPB「トップバリュ」の販売比率を高めることで、いっそう採算も改善できる。
イオン陣営は「まいばすけっと」利益改善のために「二の矢・三の矢を構えている」状態だからこそ、トライアルGOとの競争が生じても大勢に影響なく、出店を拡大できるだろう。
■コンビニは打開策待ったなし
困った事態が起きそうなのが、コンビニ各社陣営だ。各社とも弁当類は原価率が低いうえに、全売上の3~4割を占める最重要カテゴリであり、「売れば採算を改善できる商品」を「トライアルGO」と「まいばすけっと」に集中的に刈り取られるのは「うまみがある部分だけ持って行かれる」のに等しい。
そして間もなく、ミニスーパーの出店攻勢によって、深夜営業のコストなどを織り込んだ「コンビニ価格」が消費者に受容されなくなる。なにぶん、同じような面積で長時間営業しているミニスーパーの方が圧倒的に安いのだから「ところでコンビニさん、何であなただけ商品が高いの?」と、本音をぶつけられかねない局面が到来しているのだ。
直営店主義で親会社に守られている「まいばすけっと」「トライアルGO」と違い、各社とも店舗の9割以上をフランチャイズオーナーが占めるコンビニの場合は、利益の低下が即・本部への不満に繋がる。
もしコンビニ本部が「対:ミニスーパーへの有効策」を打ち出すことができなければ、「セブン‐イレブン」「ファミリーマート」などのオーナーは契約終了とともに店を畳み、跡地をミニスーパーに貸借して「大家業への転向」を決断するケースも出てくるだろう。
■トライアルGOが狙うシンデレラフィット
なにぶんミニスーパーは、コンビニの標準面積「建物面積60坪」があれば建設できるため、物件転用は見事な「シンデレラフィット」だ。
オーナーにとっても、物件の大家に専念しつつミニスーパー2社の親会社「イオン」「トライアル」から賃料を得ることができ、何よりコンビニ経営に汗を流さずとも収入は途絶えない……ミニスーパー2社も、こういった「コンビニ跡地案件」の転用を、進出する上で目当てにしているだろう。
2026年2月に発表された「トライアルホールディングス」の中期経営計画の発表では、「トライアルGO」について「3年間で100店舗の新規出店」と、一挙に20倍も店舗網を拡大する目標が掲げられた。
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宮武 和多哉(みやたけ・わたや)
フリーライター
大阪・横浜・四国の3拠点で活動するライター。執筆範囲は外食・流通企業から交通問題まで、元・中小企業の会社役員の目線で掘り下げていく。各種インタビュー記事も多数執筆。プライベートでは8人家族で介護・育児問題などと対峙中。
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(フリーライター 宮武 和多哉)

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