※本稿は、池戸裕『人を動かすリーダーの言語化』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「会社の生き方」をストーリー化する
何はなくとも人を動かすには、「理解」「共感」「自分ごと」の3ステップを必ず踏まなければならないことを覚えていてください。
そして、この3ステップをクリアしていくために、鍵となるのがストーリーです。では一体、何をストーリー化すればいいのでしょうか?
そんなとき私は、会社という法人を、あたかも人に見立てて考えたときに見えてくる「生き方」をテーマにして、ストーリー化する手法をおすすめしています。
私がいつもお客様に向けてお話しするのは、同じようなビジネスをしている会社であっても、規模や社風が近い会社であっても、二つとして同じ会社はない。さらに、どんな会社においても、必ず光り輝く美しい部分や信念、こだわりがあるということです。
この話は、人間で考えれば「それはそうだね」と納得してもらえることが多いのですが、会社で考えると「ウチにはそんな自慢できるものなんてないよ」となる経営者が少なくありません。
しかし、それは本人たちが気づいていないだけです。必ず創業から現在に至るまで、会社としてのオリジナルストーリーがあるはずなのです。
法「人」というくらいですから、会社を人と見立てたときに、どんな価値観をもとに、どんな生き方を選んで、どんな未来を描いていくのかは、すべての法人において必ず存在するものだという前提に立つのです。
■黒子のような会社に意外に魅力を感じる人も
それが特別かっこいいものかどうかは関係ありません。
すべての会社が歴史を変える、誰もが知っている影響力を持つ会社になる必要もありません。あまり名前は知られていなくても、実はこの世の中が円滑に回っているのは我が社があるおかげだ、という会社もたくさんあるでしょう。
組織で働く人、また採用で応募をしてくる人の中には、表舞台に立つよりも黒子のような会社のほうが、むしろ魅力だと感じる人は意外に多いものです。
だからこそ、まだ理念がない企業、またはこの理念が正しいのかと迷いが出てきている企業においては、自社を一人の人間と見立てたときに、どのような生き方をしようとしている法「人」なのか――。
まずは、その着眼点で会社を見つめることから始めることをおすすめします。
■新たに創作するより、すでにある言葉を掘り起こす
とはいえ、「急にそんな壮大な話をされてもピンとこない」という方もおられるでしょう。そういうときは、身近なところからストーリーを探してみるといいでしょう。
たとえば、普段から社員がよく言っている言葉や、創業者の言葉などを調べていくうちに、ストーリーのヒントが見つかることが多々あります。理念をゼロから創作することは滅多にありません。あくまで、ストーリーとつながっているのです。
いつの間にか社員のあいだで、馴染んでいる言葉はありませんか?
なぜ、そのフレーズが使われているのでしょうか?
そういった疑問を紐解いていき、それをもとにキャッチーな言い回しに整えると、改めて理念として設定できたということが多々ありました。
普段から馴染みのある言葉は、覚えやすく、使うシチュエーションが多いことがほとんどです。というより、だからこそ広まっていくのです。
「ユーキャン新語・流行語大賞」には賛否両論あり、たとえば「トリプルスリー」や「村神様」のようなスポーツに関する言葉は、あまり一般の人は使っていなかったように感じます。
■過去・現在・未来は、必ず一本の道でつながる
一方で、受賞当時「ワイルドだろぉ」「今でしょ!」「倍返し」は、使っている人が多かった印象です。同じ流行語大賞であっても、使われるか否かの分かれ目は、覚えやすく、使えるシチュエーションが多いか少ないかで決まるのです。
理念は、新たに創作するのではなく、すでにある言葉を掘り起こして、最終的に覚えやすく、言いやすく、インパクトのある言葉に整えていくものです。そういった作業を重ねることで、社員に浸透しやすい理念を創出できます。
会社を人として見立てた場合、会社にとっての理念は、人にとっての意志や信条に当たります。
ただし、「あなたの意志や信条は何ですか?」と問われて、すぐ答えられる人は多くないでしょう。同じように、理念の言語化は簡単なことではありません。
そこでやっていただきたいのが「過去の棚卸し」です。過去・現在・未来は、必ず一本の道でつながっています。
過去をつぶさに見ていき、その結果の現在を見つめれば、人生をある程度把握できるはずです。
■「創業者の人生≒会社の人生」を体現
宮城県仙台市でパーソナルジムを運営する合同会社フィジックでは、正に「創業者の人生≒会社の人生」の考え方がぴったりハマりました。
ジムの代表であり、自身がパーソナルトレーナーでもある佐々木秀将さんは、地元の高校で部活のトレーニング指導もされています。
佐々木さんが、ある高校のバスケットボール部に帯同していたときのこと。卒業前の最後の高校総体となる5カ月ほど前、前十字靭帯断裂をしてしまった2年生の選手がいたそうです。通常であれば競技復帰は9カ月を要するとされる中、医者からも「高校総体は諦めなさい」と言われ、絶望していました。
そんな中で、涙ながらに高校総体を諦めたくない、ワンプレーでいいからコートに立ちたいと、佐々木さんに訴えたそうです。
「私は医者じゃないから、医者の話は覆せないし、治すこともできない。ただし、きみが諦めないのであれば私も諦めない。一緒に最善を尽くすことはできる」
佐々木さんはそう言って、選手と懸命にリハビリを始めます。その言葉通り、佐々木さんは時に海外から医学書を取り寄せて、英語をなんとか翻訳しながら読み漁るなど、できることのすべてを尽くしました。
迎えた最後の大会の最後の試合。ヘッドコーチが選手の名前を呼びました。そして選手はコートに立ち、得意とするプレーでゴールを決めました。選手から「一生忘れません」と感謝されたことは言うまでもありません。
■入会率が大幅に伸びた「たった一つのストーリー」
そんな佐々木さんの意志や信条を受け取り、言語化した理念は「諦めない。なんとかする。できる歓びと、充実した日々のために。」でした。
フィットネス業界は、大手のスポーツジムだけでなく、マイクロジムや、ピラティスやヨガに特化したスタジオ、個人で活動するパーソナルトレーナーが増える一方で、差別化が難しく、廃業していく方も多いと言われています。
そんな中、これだけ独自の考え方とスタンス、根拠となるストーリーを明確に言える会社は多くありません。フィットネスクラブに入会する人のすべてが、「痩せたい」「筋肉をつけたい」というニーズを持っているわけでもないのですから。
同社はその後、成約率が飛躍的に伸び、体験トレーニングに来た方に理念を語るプロセスを取り入れたことで、入会率が8~9割も上昇したそうです。意志や信条を理念として言語化することができれば、企業の競争力としてしっかりと機能するのです。
■理念を、会社と社員との「共通の地図」に
「会社は船である」
そう言うと、ピンとこないかもしれません。
ですが、何かしらの目的に向かって進んでいるという点においては、共通する点が多々あります。
また、どんなに豪華な船だとしても、目的地が決まっていない船には誰も乗りません。船を会社に置き換えると、「目的地」として示すべきものは、やはり理念やビジョンということになります。
しかしながら、その理念やビジョンといった進むべき大きな方向性を示せていない会社は、案外多いのです。
ただ船とは違って、そんな会社でも入社する人はいます。生きるために、条件が大切な人は一定数いるからです。
目的地は決まってはいないが、乗組員に気のいいやつが多いとか、食事がおいしいとか、設備が充実しているといった条件の話は、会社で言えば働く仲間や待遇、立地の話でしょう。
もちろん大切な要素ですが、それが理由で乗り込んだ船であったとしても、目的地がないのであれば、乗っていてもいつかは降ります。長く続くものではないでしょう。
だからこそ、「この船はここへ向かうのだ」という明確な宣言が必要となるわけです。
一方で、目的地を明確に宣言していた場合、それが自身の目的と重なり合えば、多少の条件への不満には目をつぶってでも、船に乗り込んできてくれる可能性があります。
さらに言えば、自分が乗った船の状態をもっとよくしたいと、能動的に動いてくれることもあるでしょう。
■採用激戦区で優秀な人材を採れている理念
愛知県春日井市にある株式会社ISOWA(イソワ)は、段ボール機械メーカーです。私はこちらで、新卒採用活動での広告制作および採用コンサルティング業務に携わりました。
同社が目指すのは、「自分と自分の愛する家族の幸せのために働ける、世界一社風のいい会社」です。これは、代表の磯輪英之社長がおよそ30年前、同社に入社した当時、個人プレーや指示待ち体質が目立つ雰囲気に危機感を覚えたことから目標となりました。
この「自分と自分の愛する家族の幸せのために働ける、世界一社風のいい会社」を社長が明確に宣言し、学生の前でも自信を持って語り、社内でも共有することで、「世界一社風のいい会社」にするための自発的行動が次々と生まれています。
すると、会社には引力が生まれ、トヨタやデンソー、アイシン精機などエンジニア採用激戦区の中部地方において、中小企業でありながらも、毎年、名古屋大学や名古屋工業大学から学生が採用できるほどの採用力が育まれていきました。
■理念やスローガンは採用のフィルターになる
明確に、力強く宣言することの意味は、同じ価値観の人には深く突き刺さることです。すべての人が、大手企業、ネームバリューのある会社で働きたいと思っているわけではありません。
社員とその家族を大切にし、社風のよさで世界一になろうという会社に身を置きたいという人は必ずいます。
逆に、大手企業に入りたいというニーズの人が来ても困ることを考えると、ミスマッチをなくすためには、やはりはっきりと宣言することが大切です。
このように、理念を明確にすることは、働く人や応募者にとっては会社と同じ方向を向いているかどうかを確認する重要な地図になるということなのです。
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池戸 裕(いけど・ゆう)
ギフト代表取締役
静岡大学人文学部卒。2005年、中小企業に特化した採用コンサルティング会社を経て2010年、コピーライターとしてパラドックスに入社。理念言語化からはじめる企業ブランディングの経験を積み、2015年に独立、ギフトを設立。クライアントワークでは、理念の言語化を軸としたブランディングを通じて「意志を起点にありたい企業を描く」中小企業の経営者を主に支援。300社以上の経営者との対話を活かし、経営にみっちり伴走。売上・成約率UP、採用成功、組織における従業員エンゲージメント向上など、100年続く企業づくりをめざしたブランディング支援によって、数多くの経営改善の実績を持つ。
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(ギフト代表取締役 池戸 裕)

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