■仕事を完全に忘れる
【和田秀樹】(以下、和田)何をもって「心豊か」と言うのか? 宮内さんは、ご趣味とか「これをやってる時は心地よいな」ということはありますか。
【宮内義彦】(以下、宮内)強いて言うならふたつです。ひとつは野球を見ること。でもこれ、ほとんど仕事です(笑)。もうひとつはクラシック音楽が好きでしてね。
【和田】そういうものがあると、心に余裕ができますよね。球団(旧・ブレーブス)を買ったのは、野球好きが高じてのことですか?
【宮内】いえ、たまたまなんですよ。阪急さんが球団を手放されると聞いて飛びついたんです。当時は無名だったオリックスを、どうしたら世間に知ってもらえるか、と考えていた矢先のことでした。「野球チームを買ったら一発で知ってもらえるだろう」と。もちろん私はプロ野球をずっと好きで見てましたのでね。
【和田】いざ持ってみると、応援したくなったでしょ?
【宮内】そうですね(笑)。でも苦労しました。
【和田】だけど何回か黄金時代を作られて、すごいですよね。
【宮内】黄金と底辺。這いずり回った時期も長かったです(笑)。
【和田】経営者の立場とはいえ、野球を見てる時間はやはり楽しいのですか?
【宮内】はい。飽きもせず、じっと見てますね。球場にも行くしテレビでも。いつも家内に笑われるんですよ。「よくも黙って何時間も見てられるわね」って。
【和田】精神科医としては「仕事を忘れられる場」があるのは、とても大事だと思います。
【宮内】私は完全に仕事を忘れちゃってますね(笑)。
【和田】それがいいんです。
■「仕事人間」がつまらないワケ
【宮内】実は面白いなと思うことがありましてね。今日は先生に教えてもらおうと。
【和田】はい、なんでしょう?
【宮内】遊んでるとフッとね、仕事に関係するアイデアが出てくるんですよ。土日に休んで日曜の晩ぐらいに、なんかいい考えが浮かんでくる。「俺、考えてないのになんで出てきたんや」と。なんですかね、これ?(笑)
【和田】人間の脳って、意識しないけど、膨大な量の書き込みが常に起こってるんです。普段はその情報は引き出されず、脳の奥に蓄積されていきます。ところが一旦無心になるとポッと浮かんできたりする。そういうことなんだと思います。
【宮内】なるほど。
【和田】野球見ながらでも脳は何かを考えている。それが奥底でパッと繫がってアイデアが出てくる。仕事モードから離れ、リラックスした状態だから繫がるのだと思います。
【宮内】そういうことなんですね。不思議と、遊んでる間にいいアイデアが出てくることが何度もあって。
【和田】「仕事人間はつまらない」と言いますが、今の話と関係するかもしれません。常に仕事モードだと奥にある情報がうまく繫がらない。それで仕事の話ばかりする。だからつまらない。やっぱり脳を解放してあげる時間は大事だと思いますよ。
■「前頭葉」の衰えは40~50代から始まる
【宮内】近頃は最近のことをすぐ忘れてしまいます。
【和田】ほう。
【宮内】最近のことは忘れたんじゃなく、覚えてないんじゃないかと。脳への入り方が薄い気がするんです。
【和田】鋭い洞察ですね。実は人間の脳は、ある種の感動や驚きなど〝感情のフック〞があると記憶に残りやすいんです。でも年をとると感動が減ってくる。それで記憶に残りにくいのではないかと思うんです。
【宮内】なるほど。もっと感動しないといけませんね。
【和田】僕がよく言うのは「年をとったら強い刺激が必要だ」ということです。
【宮内】なるほど。
【和田】宮内さんは日常的にトップレベルの物事に触れているので、僕らとは感動の次元が違うと思うのですけど。
【宮内】何に触れるかも大事ですが、どう思うかも大事ですよね。いろんなことに興味を
持っていれば、年をとっても感動できると思うんです。
【和田】素敵ですね。脳科学的に言うと、興味・関心・意欲などの感情部分は「前頭葉」という部分が司っています。ところが前頭葉は、脳のなかで最初に縮み始める場所なんです。
【宮内】そんなに早く?
【和田】はい。その点でも宮内さんは驚異的なんですよ。
■「行きつけの店」「同じ著者の本」では衰える
【宮内】自分でもね、時々おめでたいと思うんですけど。毎日、明日が楽しみなんです。
【和田】素敵ですね。
【宮内】明日はあの人と会うとか、あそこでご飯を食べるとかね。しょうもない話ですけど非常に楽しみなんですよ。相当におめでたいですよね(笑)。
【和田】いいことですね。それはもともとの性格ですか? 仕事の中で培ったものですか?
【宮内】さあ、どっちですかね。
【和田】実は前頭葉って、意外なことや想定外のことが起こった時に鍛えられるらしいんです。難しい本を読んでも前頭葉は鍛えられないし、難しい数学の問題を解いても鍛えられない。つまり「成績のいい人=前頭葉が優れている」とは限らないわけです。そもそも前頭葉が大きいのは人類だけらしい。不測の事態に対処し続けたことで発達したという説があります。逆に決まったことをやり続けてると、前頭葉は衰える。
【宮内】もったいないですね。
【和田】一般論としてですが、前頭葉が衰えると、想定外の事態への対応能力も落ちてきます。すると多くの人は、なるべく想定外のことが起こらないよう、保守的になるんです。例えば「行きつけの店しか行かない」とか「同じ著者の本しか読まない」など、その傾向は50代ぐらいから顕著になると言われています。
【宮内】冒険しなくなるんですね。
【和田】はい。僭越な言い方ですが、日本人って前頭葉を使う習慣がないんですよ。上に言われた通りのことをやったり、正解のわかっていることをしたりするのが得意です。実験や冒険は好みません。学校や職場も正しい答えを出す人を求めます。実験や冒険をする人を排除しようとするんです。
■ルーティンのない人生が若さの秘訣
【宮内】その点、私の会社はもともとベンチャービジネスのようなものですからね。日々新たなんです。だからルーティンと称するようなものをやったことがない。当初はこの会社は生きていけるのだろうか? 次にどうすれば大きくなるだろうか? さらに世界とどう戦えるだろうか? などなど関心が次々と変化していくため、こちらも変わらざるを得なかった。そういう環境は非常にありがたかったのかもしれませんね。
【和田】「この人は魅力的だな」とか「見習いたいな」などと思う人はいますか?
【宮内】いやあ……。例えば「松下幸之助は経営の神様」と言われますが、私は神様だと思ったことはありません。もちろん優れた経営者ですよ。ある時はグレートだったと思うんです。でもそうでない時もある。どんな経営者もそうですよ。
【和田】さすがですね。日本人の多くはある人の信者になっちゃうと、なんでもかんでもよく見えて、悪いところが見えなくなってしまいます。
【宮内】初めから終わりまですごいというのは、やっぱりこれは神様でしょうな(笑)。ですが人間っていうのは、そうはいかんですね。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)

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