玩具業界随一の市場拡大を遂げているカプセルトイ。その市場シェアの過半数を占めるリーディングカンパニー・バンダイは、いかにしてヒット作を生み出しているのか。
同社執行役員でベンダー事業部ゼネラルマネージャーの滝口雄介氏は「ガシャポンは『かわいい』だけでは売れない。そこに何を掛け合わせるかを日々考えているのが、開発担当者たちだ」という――。(取材、執筆=ライター・加茂 歩)
■年間約2.2億個を出荷する「ガシャポン」
カプセルトイ市場の拡大が止まらない。2020年度に385億円だった市場規模は、2022年度に650億円、2024年度に1200億円と急速に拡大(バンダイ調べ)。こうした市場拡大を背景としてカプセルトイは現在「第5次ブームのまっただ中」だと言われている。
これに対し、「ここ数年の成長ぶりから、もはやブームという一過性のものではなく、エンタメとして根付いたと私たちは考えています」と滝口氏は言及する。
バンダイがカプセルトイ市場に参入し、自社ブランドである「ガシャポン®」の販売を始めたのは1977年のこと。
「当時20円が主流だったカプセルトイ市場では異例の100円で参入。人気キャラクターのフィギュアで一世を風靡し、子供を中心に大きな盛り上がりを見せました」
以降、ヒット商品を次々と世に送り出し、2024年度にはガシャポンの年間出荷個数が2億2000万個以上に達した。2億2000万個のカプセルを積み上げると地球とほぼ同じ高さになる計算である(カプセル1個を6.3cmとした場合)。この記録は、2024年度の「カプセルトイ世界売上No.1(※)」として、ギネス世界記録™に認定された。
※最大のカプセルトイブランド(2024年度 年間売上)
また、カプセルトイ市場におけるバンダイのシェアは約57%。
ガシャポンのメイン価格帯である300~500円でユーザーを満足させることにこだわり続け、カプセルトイ業界のリーディングカンパニーへと成長した。
■メインユーザーは20~30代女性
バンダイはいかにしてヒット商品を生み続けているのか。カプセルトイ市場における商品戦略について紐解いていきたい。まずは、圧倒的な商品数とクオリティへのこだわりについてだ。
「バンダイは年間で約1530、月間にして120種類以上ものアイテムを発売しています。そのクオリティにもこだわっており、例えば当社オリジナルIPの『いきもの大図鑑』では、専門家による監修だけでなく、企画担当者が実物の飼育も行って、いきものの色や動きを忠実に再現しています」(滝口氏、以下略)
多彩なラインナップの中でも、近年とくに支持を集めているジャンルには一定の傾向が見られるという。
「ガシャポンユーザーの約60~70%を占めるのが20~30代の女性です。そのため、商品ラインナップは『たまごっち』や『コスメミニチュア』などのアイテムが一定の割合を占めます」
確かにカプセルトイ専門店に足を運ぶと、現在は老若男女問わず幅広い世代のユーザーがおり、女性の姿も多くある。「カプセルトイ=子ども向け」というイメージは昔の話なのだろう。
また近年は、企業とコラボしたアイテムも多い。
「お菓子や文房具、車など身近なアイテムを精巧に再現したミニチュアですね。根強い人気を集めています」
■トライアンドエラーによりヒット作が誕生
バンダイの商品戦略はこうしたトレンドを踏まえつつ、同時に“数のアプローチ”を十分に行っている。

まず主な売り場として、バンダイナムコグループ企業と協業で企画・運営しているガシャポン専門店「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」を、現在国内275店舗、海外132店舗展開している(2026年1月末時点)。
次に発売する商品数の確保だ。現在は月120種類以上のアイテムを発売している。そのため、開発担当者はテレビやSNSなどの各種メディアをくまなくチェックするだけでなく、さまざまなジャンルの売り場・イベントなどに足を運び、商品アイデアのネタ探しを常に行っている。
数多くの企画が上がってくる中で、「開発担当者が『面白い!』と思って企画した商品は、できる限り尊重することを心がけています」と滝口氏は言う。
■「かわいい」に別の要素を掛け合わせる
ガシャポンの人気商品はどのように生み出されているのか。商品戦略について聞いた。
「昨今のガシャポン商品は、『実用性』もひとつのポイントです。ガシャポンを回す動機は『かわいいから』『誰かに見せたいから』などが主ですが、そこに実用性という価値が加わると、購買の後押しになります」
“かわいい×実用性”でヒットした好事例が「めじるしアクセサリー®」だ。ペットボトルや傘、バッグなど、多様なアイテムにつけて楽しめる商品である。初登場は2020年、すでに約450アイテム以上が登場し、爆発的な人気を誇っている。
この商品が生まれたのは、開発担当者の「会社の冷蔵庫にペットボトルがたくさん入っていると、どれが自分のものなのか分からなくなる。
ビニール傘も自分のものが分からなくなることが多い。かわいい“めじるし”をつけたらいいのでは?」というちょっとした気づきがきっかけだったそう。
「また、20~30代の男女に人気なのが『リバイバル』を軸にした商品です。子どもの頃に夢中になっていたアニメ・漫画のキャラクターやアイテムを、ガシャポンの商品として展開しています」
たしかに現在は「Y2K」などを代表とする「平成リバイバルブーム」のまっただ中である。これを似たような現象が、カプセルトイ業界でも起きているのだ。
■小学生男児や海外ユーザーにも目を向けて
一方、より注視しているのが「小学生の男児」だ。小学生のガシャポンユーザーの割合は現在は、女児の方が多い印象だという。
「男児にガシャポンを訴求する際のキーワードは『遊び』だと思います。私たちが子どもの頃は、『ワクワクしてガシャポンを回す→その商品で友だちと遊ぶ』のが一連の流れでした。商品自体で楽しく遊ぶことができれば、小学生男児の間でガシャポンがもっと流行するのではないかと考えています」
こうした狙いでおもちゃ会社ならではの取り組みとして、人気の玩具『ハイパーヨーヨー』シリーズとコラボした「ハイパーヨーヨーカプセル」が登場した。カプセルがそのままヨーヨーになる設計で、簡単な組み立てですぐに遊ぶことができる。まさに「回す→遊ぶ」というガシャポンならではの楽しさを凝縮した商品だ。

また、海外ユーザーも視野に入れた意欲的な商品が「VIRUSWEETS(ウイルスイーツ)」である。「スイーツ」をテーマにしたオリジナルIPで、“甘さ”と“毒々しさ”のコントラストが特徴だ。
「『VIRUSWEETS』は、国内はもちろん海外展開も意識したシリーズです。虚無っぽい表情や身体の傾きで、可愛らしさの中にも尖った印象のあるデザインにしています」
VIRUSWEETSはほぼ世界同時展開で、第1弾と2弾を合わせて55万5000個を出荷。第3弾にいたっては、単独で45万個超を出荷し、大ヒットを達成した。「今までにない“カプセルトイ発の人気キャラクター”になれば」と、滝口氏は期待を込める。
■自販機・カプセル自体も進化し続けている
多彩なガシャポンの商品展開と切っても切り離せないのが、自販機の進化だ。
「2021年にリリースした『プレミアムガシャポン』は500円硬貨を投入できる、今までにない設計です。これにより最大2500円までの高価格帯アイテム展開が可能になりました。
また、2022年リリースの『フラットガシャポン』は、最大A4サイズの平面アイテムを出せる自販機です。この自販機の誕生により、うちわやポスターなど、従来のガシャポンのイメージを更新するような商品が続々と生まれています」
そして、自販機に入れるカプセル自体も進化し続けている。2024年にはガシャポン史上最大サイズの「90mmカプセル」や、炭酸カルシウムを配合しプラスチック使用量が約半分だという環境に配慮したカプセル「グリーンカプセル」が誕生した。

「自販機やカプセルを自社開発し、新仕様の商品をお届けし続けていることが、カプセルトイ市場で一定の支持を獲得できている要因のひとつだと考えています」と滝口氏は言う。
■ガシャポンを世界中に届けるために
さまざまな狙いで開発した魅力的な商品は、これから海外に広く羽ばたこうとしている。海外のガシャポン専門店は、先述の通り132店舗。とくに注力市場に位置付けているアメリカをはじめ、18の国と地域に出店を加速している(2026年1月末時点)。今後は海外展開にもより注力していく方針だ。
「カプセルトイがここまで普及・流通している国はまだまだ限定的です。認知度が低いエリアでは、自販機の操作方法や遊び方を紹介するなど、基本を押さえたきめ細かいプロモーションを展開しています」
日本で独自の進化を遂げてきたカプセルトイ。滝口氏は「ガシャポンの最大の魅力は『何が出るのか分からないワクワク感』。この体験価値を内包するガシャポンは、世界共通のエンターテインメントになる可能性を秘めています。世界中の人々がガシャポンを話題にした会話を交わす。ガシャポンをそんなコミュニケーションツールにしたいですね」と力強く語った。

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加茂 歩(かも・あゆむ)

フリーライター

証券会社・求人広告会社を経て、2019年11月よりフリーライターに転身。
投資・資産運用に関する記事のほか、求人広告会社時代に数多くの取材をしてきた経験から、インタビュー記事も多数執筆している。

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(フリーライター 加茂 歩)
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