※本稿は、加谷珪一『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■厳しい条件が課されている上場企業の経営者
企業の経営者というのは、法的・社会的に見て従業員とはまったく異なる存在であることを理解しておく必要があります。従業員はあくまで企業に雇われる存在であり、その立場は法律で保護されています。
従業員は時間あたりいくらの賃金をもらうといった形で、金銭的な報酬が約束されており、自身の行為についても重大な過失がない限り、結果に対して責任を負う必要はありません。
しかしながら経営者はまったく異なります。
株式会社の経営者というのは、企業の所有者である株主から依頼を受けて、企業を経営するために雇われた人です。特に上場企業のような大きな会社の場合、組織をマネジメントし、業績を拡大させて従業員の賃金を引き上げるというのは、決して簡単な仕事ではありません。
上場企業の経営者になるためには、この容易ではない仕事を成し遂げられるだけのスキルや人望、交渉力などすべてを兼ね備えていなければならないというのが原理原則です。
こうした厳しい条件が課されているからこそ、上場企業の経営者には、場合によっては億単位の報酬が支払われ、高い社会的地位も与えられているのです。
逆に言えば、株主や社会に対して約束した業績を達成できない経営者は、自らその座から降りる決断が必要ですし、本人がそれを認めない場合には、株主が株主総会などを通じて退任を迫るというのが自然な流れです。
■日本は年功序列で従業員から昇格した人が大半
諸外国の企業が業績の継続的な拡大と賃金の上昇、時代への対応を実現できているのは、経営者にこれだけの厳しい条件を課しているからに他なりません。
ひるがえって日本の上場企業経営者というのは、単に年功序列で従業員から昇格した人が大半を占めています。
こうした人たちは、自分の任期だけ無事に過ごして退職金をもらうことばかり考えてしまいますから、その間に業績を飛躍的に拡大させようというインセンティブが働きません。企業の経営者にそのようなインセンティブが働かない以上、日本企業の業績が長く低迷し、賃金が下がっているのはむしろ当然のことなのです。
米国は市場原理主義の国とも言われており、経営者に対しプレッシャーをかけるのは、株式市場に投資をする投資家が担います。投資家は経営者に対して、企業がより高い業績を残せるよう株主総会などを通じてプレッシャーをかけます。
経営者は高い報酬を得るため、好業績を株主に約束し、全力で経営に邁進するという流れで業績拡大が進んでいくわけです。一方、欧州の場合、米国とは少し違った形で経営者に対する動機付けが行われます。
フランスはミッテラン政権時代に企業の国有化を積極的に進めており、多くの上場企業が国営もしくは国有企業という状況になっています。従業員に適切な利益配分が行われていない場合、政府が積極的に経営に関与することでこれを是正しようという動きが見られます。
ドイツの場合、経営者が債務超過の状態を一定期間放置すると罰則が適用されるなど、社会的に経営者の行動を適正化しようという流れが確立しています。
■賃金も上昇しないのは当たり前
日本では債務超過に陥った企業を整理するどころか、むしろ政府が補助金を注ぎ込んで経営陣を守ろうとするなど、経営者に対する対応が正反対です。業績が悪化した企業の経営者を救済するということばかり繰り返していては、賃金も上昇しないのは当たり前と言ってよいでしょう。
日本でもこうした状況を受けて、金融庁が主導して、企業のガバナンスを強化しようとする試みが過去何度も行われてきました。
一連の施策に対しては企業側の反発が大きく、なかなか定着しなかったのですが、政府や東証はいよいよ業を煮やし、コーポレートガバナンスに対して一定の基準を満たさない企業は上場を認めない方針を示したことで、企業行動にもようやく変化の兆しが見え始めています。
物事が単純だった昭和の時代ならいざ知らず、現代の企業というのは、単に利益を出せばいいという存在ではありません。社会の持続可能性や従業員の賃金、職場環境、取引先への配慮など多くの利害関係を最適化する必要があります。
こうした時代であるからこそ、諸外国では社内、社外問わず、有能な人材を登用して多角的な視点で経営を行うことが求められており、実際にそうした取り組みができる企業の業績が拡大しているのです。
■小売最大手ウォルマートCEOはアルバイト出身
こうした意見を述べると、「経営者に対して高い要求を課してしまうとなり手がいなくなる」「多くの人材が溢れている欧米各国とは違う」という反論が必ず出てきますが、私はそうは思いません。
なぜなら、日本における人材発掘の努力は、諸外国と比較するとほぼゼロに等しいからです。
米国は人材の宝庫と思われていますが、それでもトップにふさわしい人材を探すのは容易なことではありません。
トヨタ自動車のライバルでもあり、世界の自動車市場を牽引する著名企業のひとつである米ゼネラルモーターズ(GM)のバーラCEO(最高経営責任者)は自動車の生産ラインで働く工場作業員出身です。
彼女は高卒でGMに入り、生産ラインで業務に従事していましたが、現場ですぐに抜擢されGMの社内大学に進学。その後、会社の支援を受け外部の経営大学院に通ってMBA(経営学修士)を取得し、その後はあっという間に昇進を重ねてGMのトップに上り詰めました。
日本の自動車メーカーで、何万人もいる現場の作業員にまで目を配り、有能な人材を見つけ、トップに引き上げるといった努力を行っているところはあるでしょうか。
同じく世界の小売最大手ウォルマートのマクミロンCEOもアルバイト出身です。アルバイトから業務を始め、経営大学院でMBAを取得した後、昇進を続けCEOまで上り詰めました。
日本の巨大企業でアルバイト社員まで含めて全員に目をかけ、将来トップになる人材がいないか探し出す努力をしているところはほぼ皆無だと思います。
これだけの努力を重ねて人材獲得をしているからこそ、高い要求をクリアできる有能な経営者を見つけ出すことができるのです。こうした努力もせずに、「要求を引き上げると人材がいなくなる」などと主張しているのは単なる怠慢に過ぎません。
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加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家
1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。
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(経済評論家 加谷 珪一)

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