投資銘柄はどう選べばいいか。経済評論家の加谷珪一さんは「長期で投資をするにあたって、適した銘柄は実はそう多くない。
銘柄選びは問題ではなく、むしろ相場が上がったり下がったり、という状況で心が乱されないよう、市場に慣れていくことの方が100倍大事であると言い切ることができる」という――。
※本稿は、加谷珪一『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
■投資は可能なら「今すぐ」に始める
投資についてよく聞かれるのが、「いつ始めたらよいのでしょうか」という質問です。
この質問に対して私は、いつもこのように答えています。「無理をする必要はまったくありませんが、可能であるならば、今日から始めてはいかがでしょうか」。このように説明すると、多くの人が驚いた顔をするのですが、これから説明する内容を読めば、この話には合理性があることがお分かりいただけると思います。
先ほど説明したように、株価がいつ上がったり下がったりするのかは誰にも予測できません。一方で株価というのは、上がったり下がったりを繰り返しながらも、長期的には上がっていくものです。
これは国全体の経済に当てはめても同じことであり、日本は成長が鈍化しているとはいえ、少しずつですが経済規模は拡大しています。つまり、激しく上下変動を繰り返しながらも、長い期間、投資を続けていけば、収支はプラスになる可能性が高いということが予見できるのです。
そうなると、投資で成功するためには、できるだけ長い期間、投資を続けることが大事であり、短期的な結果は追い求めない方がよいとの結論になると思います。私が何度も長期投資が重要であり、中高年になってからでもまだまだ遅くないという話をしているのはこうした理由からです。
若い人ならもっと時間を稼げますからなおさらでしょう。
ところが、投資を始めることを躊躇してしまい、何もしない状態が長く続くと、定年退職が見えてくる時期になってから投資をスタートすることになってしまいます。
■細かい知識ではなく、慣れが大事
繰り返しになりますが、長期投資で成功するためには最低でも10年、一般的には20年くらいの期間を設定する必要がありますから、50歳から始めた場合は確実に成果が得られるのは70歳以降ということになります。したがって、いつ始めるかという質問に対しては、「今すぐ」という結論にならざるを得ないのです。
今すぐ投資を始めるという話をすると必ず出てくるのが、「来年下がったらどうするのですか」という質問ですが、いつ株価が上がるのか、下がるのかを予測することは不可能です。
しかし、上下変動を繰り返しつつも、長期的に見れば株価は上がっていく可能性が高いのです。来年、株価が下がっても淡々と投資を続ければ、今年よりもより多くの株数を取得できます。
いつまでも下がり続ける相場というのはありませんから、株価が上昇に転じた時には大きな利益となって返ってきます。したがって、長期で投資する場合には、いつ下がるか上がるかについて考える必要はないのです。
すぐに投資を始めた方がよい理由にはもうひとつあります。それは、投資というのは習い事やスポーツと同じように経験がモノを言う世界だからです。
私は、長年、株式投資を続けたおかげで、それなりの資産形成に成功しましたが、30年近くにわたる投資経験を振り返るにつけ、投資というのは、細かい知識ではなく、慣れが大事であることを痛感します。

■銘柄選びの答えは既に出ている
後ほど詳しく説明しますが、長期で投資をするにあたっては、経営が安定していて潰れる心配がない企業を選ぶことが重要です。そのため、銘柄選びで苦労することはほとんどありません。なぜなら誰もが知っている著名企業で、業績がよく、しっかりと配当を出している企業となると、実はそう多くないからです。
銘柄選びは問題ではなく、むしろ相場が上がったり下がったり、という状況で心が乱されないよう、市場に慣れていくことの方が100倍大事であると言い切ることができます。慣れるためには時間が必要ですから、できるだけ早く投資をスタートした方が有利になるのです。
では、具体的な説明に入りましょう。
株式市場というのは、景気によって大きく変動するものですが、平均すると年間6%程度の値上がりが見込めます。これはバブル相場や長期の不況など、あらゆる局面を平均した数字です。したがって、長期で投資をすればするほど、この平均リターンに近づいていくことになります。
6%と聞いても分かりにくいと思いますので、もう少し具体的な例で考えてみましょう。
月5万円、何とか余裕資金を捻出し、年間60万円の投資を30年間続けたと仮定します。6%の利回りだった場合、30年後の投資残高はいくらになると思いますか。
びっくりするかもしれませんが、金額は何と5000万円を超えています(図表1)。
もちろん投資にはリスクがあるので、この金額を上回る可能性もあれば、大きく下回る可能性もあり、5000万円が確定しているわけではありません。しかしながら、一般論とはいえ、長期で運用すれば、株式投資というのはこのくらいの利益が得られるものなのです。
米国ではごく普通のビジネスパーソンが、若い頃からコツコツと株式投資を続け、リタイアする時には1億円以上の金融資産を持っているというケースはザラにあります。
そして何より私自身が30年にわたって同じような投資を続けた結果、自分でもびっくりするような資産を作ることに成功しました。実際に体験したことですから、非現実的な話ではないということは、自信を持ってお伝えできます。
■「どの銘柄に投資すればよいか」の最終結論
投資で成功したという話をすると「加谷さんは経済に詳しいので、伸びる銘柄を予想できたはずだ」という反論をよくいただきます。確かに私は専門家なので、一般の方と比較して経済や企業の動向に詳しいと思います。
しかしながら、長期で投資するということになると、この専門知識はほとんど役に立ちません。どういうことかというと、長期で運用するためには、安全性が絶対的に重要であり、倒産するリスクがほとんどない、誰もが知る超優良企業にしか投資できないからです。
実際、私が買い続けたのは、知らない人がいないくらいの超優良企業ばかりです。東証には4000社近くの企業が上場していますが、企業規模が大きく業績が伸びていて、同時に十分な配当利回りがあるという条件でスクリーニングをかけると、実は20社、30社くらいしか候補は残りません。

こうした条件をクリアして残った企業というのは、本当に誰もが知る超優良企業ですから、そもそも銘柄を選ぶ必要すらないのです。
私は「どの銘柄に投資すればよいでしょうか」と質問されることも多いのですが、長い投資経験がある私のような人間からすると、候補となる銘柄がたくさんあって困るのではなく、投資に値する銘柄が少なすぎるということの方がむしろ問題と思えます。
どうしても銘柄選びが悩ましいのであれば、225銘柄を平均した日経平均株価に連動する投資信託を買うという方法もあります。このような商品をインデックスと呼びますが、インデックスに連動する商品を買えば、市場全体を買うことと同じ結果になります。
「過去はそうだったかもしれませんが、将来はどうなのでしょうか」という質問もよく受けるのですが、この問題についても、あまり深く考える必要はないでしょう。こう説明すると、適当に答えているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
■紆余曲折がありながらも6%の平均利回りに
先にも述べたように、将来のことは誰にも分からないというのが投資の大原則です。
相場というのは上がる時もあれば、下がる時もありますが、一方で、永遠に下がり続ける市場というのは存在しません。
その理由は経済というのは、どんな時でもそれなりに成長を続けているからです。例えば今の日本ですが、30年間不景気が続いていますが、それでも株価は上がっています。長期で投資を続けていれば、先ほど説明した6%の平均利回りに近づいていくものです。
実際、私が投資を続けた30年間には様々な出来事がありました。
投資をスタートしたのはバブル崩壊直後でしたから、株価は毎年のように下がり続けていました。
何年も下落が続くとさすがに気持ちも落ち込んでくるのですが、1999~2000年にはネットバブルによる上昇があり、2003年から2007年にかけては米国の好景気と小泉改革への期待を背景にした上昇相場がありました。
その後、リーマンショックで株価は再び大暴落しますが、その後トランプ相場がやってきて、株価は上昇に転じています。
振り返ってみると、約5年ごとに激しい上下変動があったわけですが、その間の平均的なリターンを計算するとやはり6%程度になっており、紆余曲折がありながらも私の資産は増えている状況です。

----------

加谷 珪一(かや・けいいち)

経済評論家

1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。

----------

(経済評論家 加谷 珪一)
編集部おすすめ