■「助けてもらう力」が仕事人生を変える
こんにちは。産業医の武神です。産業医面談を続けて15年以上になります。「先生のおかげで……」と、社員や人事から言われることは職業上の喜びです。反面、何年経っても、産業医の経験値が上がっても、自分にはどうしようもないと感じてしまうことがあります。
それは、メンタル不調になった社員に対する「戻ってきてほしい」または「もう戻ってこなくていい」という部署メンバーたちの正直な“気持ち”です。もちろん、企業には安全配慮義務がありますから、後者のように思われているからといって、即退職とはなりません。しかし、どちらの印象の人の方が復職後うまくいく確率が高いかは容易に想像できます。
最近になってようやく、この違いはどこからくるのか気がつきました。それは、部署の雰囲気でも部署長の性格でもなく、当事者本人の非認知能力としての「助けてもらう力」に関係していると思います。周囲との関係において、困ったときに自然と手を差し伸べてもらえる状態を育てられていることが重要なのです。
■「会話上手な人」になる必要はない
今日はそんな「助けてもらう力」について、助けてもらえる人と、なかなか助けてもらえない人の違いについて、産業医としての面談経験から、特に大きいと感じるポイントを3つお話ししたいと思います。
1. 助けてもらえる人は「普段の関係」を大切にしている――「おはよう」という、小さな心の握手
助けてもらえる人というと、コミュニケーション能力が高く、誰とでも仲良くできる人を想像するかもしれません。しかし実際には、もっと基本的なところに違いがあります。それは、普段から職場で穏やかな人間関係を保っていることです。
朝会ったら「おはようございます」と言う。何かしてもらったら「ありがとうございます」と伝える。約束の時間(期限)を守る。小さな報告や連絡を忘れない――こうしたことは、とても当たり前に見えるかもしれません。けれども職場では、この「当たり前」が意外とできていないこともあります。
■「真面目すぎる」と助けてもらえない
もしあなたが、良好な関係性の同僚に助けを求められたら、どう感じますか。頼られていることでちょっと嬉しい気持ちになりませんか。
職場における良好な人間関係は、特別なイベントでできるものではありません。日常の小さなやり取りの中で、少しずつ信頼が積み重なっていきます。そして、その信頼があるからこそ、困ったときに周囲はこう声をかけます。「大丈夫?」「手伝おうか?」。この言葉は、突然生まれるわけではありません。関係性が育った結果として出てくるものです。
一方で、助けてもらえない人の多くは、決して冷たいわけではありません。むしろ真面目で、人に迷惑をかけたくないという気持ちが強い人です。ただ、その思いが強すぎて、忙しそうで話しかけにくい雰囲気を出してしまったり、困っていても「大丈夫です」と言ってしまったり、雑談やちょっとした会話を避けてしまったりすることがあります。周囲は悪気なく、「この人は一人でやりたいのだろう」と受け取ります。
つまり、助けてもらえない人は「助けてほしくない人」に見えてしまっていることがあるのです。ここには、とても切ないすれ違いがあります。
助けてもらう力をつける第一歩は、特別なことではありません。挨拶をする。感謝を言葉にする。小さなやり取りを大切にする。日常の関係を少しだけ丁寧にすることです。それだけでも、人との距離は少しずつ変わっていきます。
■「助けてもらえる」アドバイスの受け取り方
2. 助けてもらえる人は「でも」より「ありがとう」――アドバイスを受け取る素直さ
2つ目の違いは、アドバイスの受け取り方です。仕事をしていると、上司や先輩、同僚から「こうしたらどうですか」「一回こうやってみませんか」と声をかけてもらうことがあります。
そのとき、助けてもらえない人は、ついこう返してしまいます。
■相手の言うことをすべて受け入れなくてもいい
一方で、助けてもらえる人は、まずこう言います。「ありがとうございます」「やってみます」。ここで大事なのは、相手の言うことをすべて受け入れることではありません。まずは助けようとしてくれた気持ちを受け取り、そのうえで自分なりに少し形を変えて試してみる。この姿勢がある人には、周囲も関わりやすくなります。
「助けてもらえない人」の思考回路には、知らず知らずのうちに「防衛本能」が働いています。誰かがアドバイスをくれたとき、自分のこれまでのやり方を否定されたように感じて、自分を守る壁を作ってしまうのです。一方、助けてもらえる人は、アドバイスを「自分へのギフト」だと捉えています。たとえそのアドバイスが少し的外れに感じても、相手が「自分のために時間を使ってくれた」という好意を、まるごと受け取るのです。
「でも」を「ありがとう」に変える。それは、相手の優しさを否定しないという、あなたからの誠実さの表明でもあります。
■うまくいかなくても「報告」は大切
3. 助けてもらえる人は「結果を返している」――「その後の物語」を共有する優しさ
3つ目の違いは、フィードバックです。助けてもらえる人は、アドバイスをもらったあと、行動して、その結果を伝えています。「教えていただいた方法、やってみました」「少しうまくいきました」「まだ難しいですが、前より整理できました」――こうした一言があると、助言した側はとても嬉しいものです。人は、自分の言葉が誰かの役に立ったと感じると、また力になりたいと思うものです。
一方で、助けてもらえない人の中には、「うまくできなかったのに報告したら申し訳ない」「結果が出ていないのに連絡するのは気まずい」と思って黙ってしまう人がいます。でも実は、うまくいかなかった報告にも意味があります。「やってみたけれど、ここが難しかった」という一言があれば、周囲も次の助け方を考えることができるからです。
■報告は「感謝のメッセージ」
フィードバックは報告というより、人との関係をつなぐ橋なのかもしれません。「先日教えていただいたやり方で試したら、少し楽になりました」「アドバイスいただいた件、まだ苦戦していますが、方向性が見えてきました」――これは単なる報告ではなく、「あなたの存在が、私の世界を少し良くしてくれました」という感謝のメッセージです。
自分の行動が誰かの役に立ったと知ることは、人間にとって最大の喜びの一つです。
■真面目な人、優しい人は助けを遠ざけやすい
助けてもらえない人ほど、真面目すぎたり、優しすぎたり、人の目を気にしすぎてしまう人なのだと思います。「迷惑をかけたくない」「自分の評価が下がるのでは」――そう考えて、助けを遠ざけてしまうのです。
でも、考えてみてください。あなたが誰かから「相談があるんですが……」と声をかけられたとき、良好な関係の人であれば、迷惑だとは思わないはずです。むしろ「この人が私を頼ってくれた」という、静かな喜びを感じるのではないでしょうか。頼られたことが、その人の自信や救いになることもあるのです。
「助けてもらう力」は、特別な才能ではありません。自分から挨拶をする。「ありがとう」を言葉にする。「でも」より「やってみます」と言う。相談した相手に結果を伝える。どれも小さなことです。でも、その積み重ねが、人との距離を少しずつ変えていきます。
最近は、数値で測れない力を「非認知能力」と呼ぶことがあります。その中でも、職場での人間関係やメンタルの安定に深く関わっているのが、この「助けてもらう力」だと感じています。普段は一人でも大丈夫。でも、ときには自分の弱さを認め、助けを求めることができる。それこそが、真の強さであり、健康な自立の姿だと思います。
今月の話も、あなたのお役に立てば幸いです。
----------
武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。働く人のココロとカラダをサポートする無料AIチャット相談サービス「産業医DrT」を運営。
----------
(医師 武神 健之)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
