どうすればお金持ちになれるのか。作家の橘玲さんは「『収入を増やす』『支出を減らす』『運用して増やす』の三つの方法がある。
このうち『運用して増やす』は運に影響を受けるものの、やるべきことはほぼ決まっていて、誰でもできる」という――。
※本稿は、橘玲、大橋弘祐『難しいことはわかりませんが、1億円貯める方法を教えてください!』(文響社)の一部を再編集したものです。
■お金持ちになるための「3つの方法」
【橘】お金持ちになる三つの方法「収入を増やす」「支出を減らす」「運用して増やす」について、一つずつ説明する前に、特徴をおさえましょう。
①収入を増やす

能力や運に影響を受ける。やるべきことは人による
②支出を減らす

能力や運に影響を受けない。やるべきことは決まっている
③運用して増やす

運に影響を受ける。やるべきことは決まっている

①の「収入を増やす」は、ビジネスでたくさん稼ぐということです。
自己啓発本などに書かれている方法で、資格を取得したり、コミュニケーション(コミュ力)などのスキルを上げたり、収入を大きく増やす方法です。
【大橋】「お金持ちになる」といったら、まずその方法を思い浮かべますよね。
【橘】ですが、この方法は、置かれた状況や性格に大きく影響を受けます。
そのため、やるべきことは人それぞれなので、「これをやれば、必ず稼げます」というアドバイスをすることが難しいのです。
■今日から始められて、必ず効果が出るのは…
【橘】たとえば、政治家や起業家、芸能人、スポーツ選手など、世間的に「成功者」とされるひとたちの性格を調べると、外向的な人が圧倒的に多いです。

そこで「外向的な性格になりなさい」といったアドバイスをしたとしても、内向的な人にとっては、そのアドバイスは有効ではありません。
性格は遺伝が大きく影響するので、生まれつき内向的な人が外向的になるのは不可能だからです。
【大橋】たしかに、誰でも得意、不得意がありますからね。
【橘】②の「支出を減らす」は、お金を使わないことです。つまり節約です。
これは誰でも今日からすぐに始められて、努力すれば必ず効果があります。資格や、学歴が必要ということもありません。しかも、やるべきことが合理的に導き出されます。
【大橋】携帯電話のプランを見直すのに、資格がないのでできません。ということはないですもんね……。
【橘】そして③の「運用して増やす」は運に影響を受けるものの、やるべきことは、ほぼ決まっていて、誰でもできます。
■科学的に確立された「お金の増やし方」
【大橋】「運用して増やす」って投資のことですよね。
それこそ才能が必要じゃないでしょうか?
【橘】こちらも、これから説明しますが、「何に投資すればよいか」はノーベル賞を受賞するような学者たちによって徹底的に研究し尽くされていて、1970年代にファイナンス理論として、ほぼ完成しています。
つまり、ほとんどの人にとってもっとも投資効率が良い方法が導き出されているのです。
ファイナンス理論

金融市場の仕組みや、投資家はどう資産運用すべきかを、勘や経験ではなく科学(ロジック)で明らかにしようとするもの
【大橋】そうなんですか……。
【橘】お金持ちになるためには、①収入を増やす、②支出を減らす、③貯金を運用して増やすというのが王道の順番になりますが、今回は③の「運用してお金を増やす」からお話しします。
もっとも効率の良いお金の増やし方は、多くの知見を与えてくれます。
■やっぱり「S&P500」「オルカン」はスゴかった
【大橋】もっとも効率が良いお金の増やし方ってなんでしょう?
やっぱり、先生しか知らない特別な株とか、海外の口座を使ったマネーロンダリング(資金洗浄)的な方法があるのでしょうか?
※橘先生は『マネーロンダリング』という国際金融小説を執筆されています。
【橘】違います。マネーロンダリングは大橋さんレベルの資産規模では意味がありません。
【大橋】……。
【橘】私がいまからお話しする方法は、誰でも実践できて、しかも高い確率で成功します。
それは株式指数に連動した投資信託であるインデックスファンドを買うことです。
【大橋】投資信託ですか……。

【橘】投資信託とは株式を詰め合わせたものです(図表1)。
投資信託の中でも、プロが株式を選ぶのが「アクティブファンド」で、指数に連動して詰め合わせるのが「インデックスファンド」です(図表2)。
具体的に言うなら、「S&P500」と「オルカン」と呼ばれているインデックスファンドを買うことです。

※S&P500とオルカンのどちらを買うか迷う人は多いですが、S&P500は米国株100%、オルカンは約6割が米国株なので、実質的な中身はかなり似ています。長期投資では大きな差は出にくいため、最終的には自分が納得できる方を買えばいいと思います。
・S&P500連動ファンド

アメリカの主要500社に連動したファンド

(eMAXIS Slim S&P500など)
・全世界株連動ファンド(オルカン)

世界の主要約3000社の指数に連動したファンド

〔eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)など〕

■プロよりサルのほうがお金を増やせる?
【大橋】それってNISAで買うやつですよね。
たしかに「S&P500だけ買えばいい」「オルカンだけ買えばいい」ってよく聞きますけど、なぜそれがいいんでしょう?
【橘】まず、おさえたいのは、誰も株価を当て続けることはできない。という事実です。
これを裏付けるために、ものすごく悪意のある実験が行われています。
それは、上場している企業の一覧を壁に貼り、そこにチンパンジーにダーツを投げさせて、刺さった銘柄で作ったポートフォリオ(株式の組み合わせ)と、投資のプロが作った投資信託(アクティブファンド)で成績を比べたのです(図表3)。
【大橋】で、どうなったんですか?
【橘】どの銘柄が値上がりするかの専門家の予測は、チンパンジーがダーツを投げたのと同じ程度にしか当たらなかったのです。
なぜ、こんなことが起こるかというと、やはり、誰にも上がる株を正確に当てることはできないからです。


さらに、チンパンジーには手数料を払いませんが、プロには、手数料を払わないといけませんから、必然的にプロが負けるのです。
■50年間覆されていない「最強の投資法」
【大橋】誰も上がる株を当て続けられないとしたら、なぜインデックスファンドになるのでしょう?
【橘】難しいので、詳しい説明は割愛しますが、ノーベル賞受賞者も含めた学者たちが、ファイナンス理論として数学的に研究し尽くしていて、インデックス投資がもっともパフォーマンスが良いとされています。
そしてこのことは50年間、覆されるようなことは起きていません。
【大橋】いや、先生。勝手に割愛しないでください! 僕は理系だったんです。そのファイナンス理論ってやつを教えてください。
【橘】では説明します。先ほどもお話ししたとおり、企業の財務をいくら分析しても株価が上がるか下がるか正確に当てることはできません。
1960年代にある経済学者が、株価は「ブラウン運動」という物理法則と同じような動きをしていることに気づきました。
ブラウン運動とは、水面に浮かぶ花粉のような微粒子が不規則に動くことです。アインシュタインは、ランダムな運動は「この範囲に何パーセントの確率で存在する」というように確率的にしか予想できないことを証明しました。これは株価が期待リターン(長期的な傾向)とリスク(値動きの激しさ)で説明できるということです。

■資産運用の大原則を数学的に証明した
次の大きな発見は、異なる波がぶつかると打ち消し合うように、複数の株式を組み合わせると、株式同士がリスクを打ち消し合うことでした。
つまり、株式を分散して保有すると、期待リターンは変わらずに、リスクだけを減らすことができるのです。
これが「モダンポートフォリオ理論」(図表4)と呼ばれているもので、昔から言われている「卵は同じカゴに盛るな」を数学的に証明したのです。
モダンポートフォリオ理論

異なる値動きをする資産をうまく組み合わせることで、同じリスクで高いリターンを得ること
【大橋】はい……。
■何も考えず「市場のコピー」を買えばいい
【橘】さらに研究が進んで、市場が効率的だと仮定すると、株式市場の動きがすべて数学的に説明できることがわかりました。これが「効率的市場仮説」で、割安な株があったらすぐ買われ、割高な株はすぐに売られるのなら、市場参加者はだれひとり有利な立場を手にすることはできず、株式投資は偶然のゲームになります。
(中略)
そうなると、「合理的な投資家にとっての株式ポートフォリオとは何なのか?」を知りたいと思うでしょう。この疑問に答えたのが「CAPM(キャップエム)」モデルで、簡単に言うなら、「市場に参加するすべての投資家が合理的であれば、市場に存在するすべての株式を、市場に存在する割合だけ保有する」ことを証明しました。この「経済学的に正しい投資法」にもとづいて考案されたのが、インデックスファンドです。
わかりましたか?
【大橋】全く、わかりません……。
【橘】……。でしたら、ここでは卵は同じカゴに盛るなという資産運用の大原則があることと、市場全体の縮小コピーであるインデックスファンドを買えばいい。
ということを覚えておいてください。
ファイナンス理論のポイント

・株式は分散させると、リスクに対して期待できるリターンが大きくなる(卵は同じカゴに盛るな)

・もっとも効率の良い投資は市場全体のコピーであるインデックスファンドを買うこと
■バフェットが最愛の妻に進めた投資先
【大橋】インデックスファンドは市場全体の縮小コピーなんですか?
【橘】そうです。
ある一つの会社の株式だと下がり続けたり上場廃止になったりする場合もありますが、地球全体(グローバル市場)で見れば、アメリカ人も日本人もアフリカの人も「もっとゆたかになりたい」「もっと幸福になりたい」と思っていて、その欲望を原動力に、世界経済は拡大し続けてきました。それに伴い株式市場全体も拡大し、インデックスファンドも値上がりしてきたのです(図表5)。
【大橋】暴落して急に大損することとかないんですか?
【橘】過去を振り返ると、ドットコムバブルやリーマンショックなど世界的な不況や暴落なども起きましたが、それを含めても、長期的に見れば年間で平均7~10%程度のパフォーマンスで上がり続けてきましたし、これからも上がり続けることが期待できます(図表6)。
これは私の個人的な意見ではなく、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットも、インデックスファンドに投資することを勧めています。

※ウォーレン・バフェットは金融の専門家ではない妻に対して、自身の死後は遺産の90%をS&P500インデックスファンドに投資するよう勧めると語っている。
■手数料は年間0.1%以下で済む
しかも、市場全体の縮小コピーであるインデックスファンドは年間0.1%以下の手数料で購入することができます。これは30年前は考えられないことでした。
もし、同じことを実現しようとすれば、スイスのプライベートバンクに口座を開いて、各企業の株を少しずつ500社分を買うしかありませんでした。相当な手間と手数料がかかったことでしょう。
ですが、いまはネットで証券口座を開けば、低コストで簡単に買えてしまいます。

※ネット証券大手の「SBI証券」や「楽天証券」なら手数料が安く、積立でポイントも貯まります。
インデックスファンドの手数料

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の手数料

・買うとき……0円

・毎年……約0.06%(100万円分持っていたら年間約600円)

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橘 玲(たちばな・あきら)

作家

1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。05年の『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補に。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)など多数。

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大橋 弘祐(おおはし・こうすけ)

作家・編集者

立教大学理学部卒業後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』(文響社)が日本テレビの地上波ゴールデンタイムでテレビドラマ化。『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社、山崎元との共著)など「難しいことはわかりませんがシリーズ」が70万部を超えるベストセラーになる。『漫画 バビロン大富豪の教え』の企画・脚本も手掛ける。

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(作家 橘 玲、作家・編集者 大橋 弘祐)

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