※本稿は、マイナビ健康経営のYouTube番組「Bring.」の動画「インデックスファンド、高配当株、ゴールド、暗号通貨、不動産……。新NISA&インフレ対策に必要な投資戦略を考える【八木真澄、くらま、節約オタクふゆこ】」の内容を抜粋し、再編集したものです。
■総資産4800万円YouTuberのポートフォリオ
【ふゆこ】最初にわたしのポートフォリオから公開します。2024年1月15日の時点で総資産が約4800万円あるのですが、約60%はインデックスファンドです。そして、約30%が高配当株で、半々で米国株と日本株を買っています。それ以外はiDeCoと現金ですね。6割を占めるインデックスファンドはほとんどオルカン(全世界株式)で、iDeCoも同様です。
【くらま】オルカンの人気はすごいですよね。僕もインデックスファンドを買っていますが、ふゆこさんはなぜオルカンに振り切ろうと思ったのですか?
【ふゆこ】投資を始めた頃は、オルカンより成長実績の高い米国株のみのS&P500を買っていました。でも、株を勉強するほど、新興国や日本の成長可能性、米国以外の先進国も気になってきて、S&P500では少し不安になってきたのです。
また、オルカンは「現代ポートフォリオ理論」(リスクを抑えながら一定のリターンを得るためには、多数の銘柄や金融資産に分散投資することが有効とする理論)に適った投資なので、自分の投資を理論武装できたことも大きいですね。わたしは理屈で納得できたほうがいいタイプなので、そうして腹落ちしていれば、たとえ下落したときもブレずに持ち続けられそうだと思ったのです。
■お金をただ増やしたい人と、株を学びたい人の違い
【くらま】オルカンに限ったことではないのですが、「新NISA」で積み立て投資を始めた人のなかには、「インデックスファンドを積み立てておけば儲かるんでしょ?」という、安易な考え方をしている人も多いと感じます。その点について、ふゆこさんはどう思いますか?
【ふゆこ】少し調べればリスクの存在はあきらかなので、そういう人はお金を増やしたくても、株を学びたいわけではないのだと思います。でも、積み立て設定だけして、あとは放ったらかしにしても資産が増える可能性が高いのは事実です。
インデックスファンドも種類によってリスクは異なりますが、オルカンは15年以上の保有であれば元本割れしないことが過去データで示されています。また、毎月定額で積み立てることで、ファンドの価格が高いときは購入口数が少なくなり、逆に価格が安いときは購入口数が増えることで、長期的に見て平均購入単価が下がる「ドルコスト平均法」が実現されます。そうした利益の得られやすさも、積み立て投資にある強みですよね。
ただし、元本割れする可能性はゼロではありません。やはりリスクを知ることは大事ですし、正しい知識を持つことが、下落時の狼狽売り(長期的な成長を見込んで保有したのに、一時的な株価下落に恐怖して短期で売却し損失を出すこと)を防ぐためにも大事です。
■30代独身だからできるリスクの高い投資
【八木】僕からすると、ふゆこさんのポートフォリオは株式の割合が高過ぎると感じてしまいました。
【ふゆこ】八木さんのおっしゃるとおり、これはリスクの高い投資です。この300万円の現金は、わたしが1年以上暮らせる生活防衛資金なので、保有している株式が為替損も含めて80%下落しても、気にせず回復を待って投資を続ける前提でポートフォリオを組んでいます。
それができるのは、わたしが30代独身で、節約もしているので月の基礎生活費が10万円であることや、YouTuberとしての収益もあるためリスク許容度が高いからですね。わたしも八木さんのように40代、50代だったり、子育てをしていたりするなら、現金比率や債権比率を増やして、相場や為替の影響を抑えるリスクヘッジをすると思います。
【くらま】それも、考え方と資産状況次第だと思います。例えば、現金や収入が老後も含めて十分にあるなら、株を売らずに生涯続けられるし、次の世代に引き継いでもいいでしょう。そうすると、超長期で有利な売却のタイミングを探れます。つまり、高齢者や子育て世代でもそれなりにリスクの高い投資はできますよね。
■投資のジェネレーションギャップ
【八木】それは理屈としてわかりますが、僕は2008年に30代でリーマンショックをリアルに見ているので、感情としてそう思えないところがあるんです……。
それに、日経平均もドル円レートも、いまよりずっと低い時代に生活してきたので、再びその水準に戻る可能性がないほうが不思議に思えるのです。これはジェネレーションギャップなのかもしれませんね。
【ふゆこ】確かに、20代や30歳前後の人は最近の米国株や暗号資産の上昇ばかり見ているので、リスキーな投資戦略になりやすく、年代が上がるほど保守的な投資になるといわれていますよね。
【八木】一般的には、インデックス投資は老後資金のための資産形成が多いので、60代、70代での売却を検討しますよね。それに関連して、ドルコスト平均法の弱点を強いていえば、出口戦略です。売りたいときに大きな下落相場が来たり、円高になったりすると損してしまいます。
20代でこれからインデックス投資を始める人は、ふゆこさんのように株式の比重が高くなる可能性があるということですよね。そうであれば、40歳、50歳を超えたあたりから売り抜けるタイミングを考え始め、準備することが大事ではないでしょうか。
■6000万円の4割が暗号資産
【くらま】続いて僕のポートフォリオを紹介します。暗号資産の比率がもっとも高くて約40%です。株式が30%、現金が20%、金(ゴールド)5%、債権5%の配分です。
【ふゆこ】暗号資産が目立っていますが、現金の割合もかなり高いですよね。
【くらま】やはり、暴落のリスクを警戒しています。特に暗号資産は日常的に20%、30%の上下動は起こりますし、暴落も最大90%まで覚悟する必要があると考えています。株だって50%の大暴落は起こり得ますから、現金の余裕は必要だと考え、生活防衛資金+納税用+追加投資分で1200万円をストックしています。
■暗号資産は資産の1~2%がベター
【ふゆこ】それほどリスキーなのに、どうして暗号資産をこんなに買っているのですか?
【くらま】主にビットコインを買っているのですが、僕の場合はビットコインを「安全資産」と考え積み立てています。おそらく暗号資産にそんなイメージはないですよね? 2022年には暗号資産の取引所が破綻して顧客が資産を失うなど、暗号資産の信頼性は揺らいでいました。
しかし、2024年には米証券取引委員会(SEC)がビットコインのETFを11銘柄も承認し、ブラックロックなどの大手企業も進出したことから、資産としてのステータスは上がっています。さらに、トランプ政権による「ビットコイン準備金」の創設にも期待が集まり、いわば安全資産の代名詞である金(ゴールド)の代替に向かっているわけです。
一方で、通貨の信頼性は年々低下しています。コロナ禍の2022年に、各国が財政支援のために通貨供給量を増やしましたが、市場の通貨が増えれば懸念されるのはインフレです。しかし、各国が政策金利の調整で手こずりインフレになってしまい、物価上昇によって相対的に通貨の価値は下がりました。つまり、政府が自国通貨の価値をコントロールできないことが明白になったと考えています。
ですから、僕は通貨に対するリスクヘッジとしてビットコインを増やしているということです。暗号資産は値動きのリスクが高いため、一般的には資産の1%から2%程度の保有を推奨されていますから、僕の場合はかなり高い割合で保有しているといえます。
■暗号資産の利益は総合課税
【ふゆこ】わたしは暗号資産のことは疎くて……。どの程度のリターンが見込まれるのですか?
【くらま】暗号資産は通貨みたいなものなので、相場変動を想定するための指標がありません。ビットコインは設計上、供給上限が2100万BTCに設定されているので、どれだけ買う人が増えて需要が高まるかにかかっています。現在(2025年1月時点)は1BTCあたり1500万円から1600万円ですが、本当に金(ゴールド)と同等かそれ以上の安全資産と見なされれば、将来的に5倍以上の1億円に達するともいわれています。
【八木】僕も暗号資産は保有していますが、懸念するのは税金ですよね。暗号資産による利益は総合課税として扱われるので、本業収入と暗号資産の利益は合算で課税されるじゃないですか。株式の利益だったら申告分離課税で20%(NISAなら非課税)ですが、総合課税だと累進課税で最大55%が適用されてしまうので、インデックスの積み立てと同様に出口戦略が重要になります。
【くらま】そこは大きなリスクですよね。ただ、先進国を含む海外では、暗号資産による利益は非課税、または株式と同等とする国はたくさんありますから、将来的には日本も申告分離課税になる可能性はあるのだと思っています。
■資産1000万円の理想のポートフォリオ
【八木】僕の場合は、「理想のポートフォリオ」を紹介したいと思います。
【ふゆこ】株式の比率が低く、現金比率の高さが特徴的ですね。
【八木】このポートフォリオの目的は、利回りや資産形成よりも「不安を抱えないこと」にあります。現金だけだとインフレで実質的に資産が減るので、株式や金(ゴールド)を組み入れた、言い換えれば「増えないけれど、減らない」バランスですね。
株式の比率は30%に抑え、利益は期待しつつ、大暴落が起きても資産全体への影響は少ない程度です。また、金(ゴールド)は株式と異なる値動きで株式相場に対するリスクヘッジになります。また、いまは日経平均もオルカンも株価が高水準なので現金の割合を高く設定していますが、株価が下がれば株式投資にあてるなどして、現金と株式の割合は5%ほど変動するイメージです。
暗号資産のリスクが高いことは先の通りですが、爆発的に上昇しかねない将来性を考えると「保有していないこと」もまたリスクや不安の種になり得ます。ですから、3%くらいが僕はちょうどいい比率だと考えています。
■リスクに備え、投資は余剰資金で
【ふゆこ】リスクヘッジという観点でいうと、債券は用いないのですか?
【八木】僕自身は保有していませんが、このポートフォリオの現金の割合に含めるのがいいと思います。米国債やMMF(格付けの高い公社債などを運用する安全性を重視した投資信託)なら4%程度の利回りが見込めるのでいいですよね。ただし、いま円安ですから、為替リスクに注意しないといけないでしょう。
【くらま】僕は先に述べた通貨への不信と同じで、国債が安全資産というのも疑問を感じています。通貨も国債も国家への信頼で成り立っていますが、どこまで信用できるのかということですね。ただし、資産運用においては、株式だけでなく債券や金(ゴールド)など、値動きの異なる多様な資産を持つことでリスクヘッジができますから、そこに価値があると思って債券を保有しています。
【ふゆこ】まさに、三者三様の考え方と投資スタンスが垣間見えましたね。最後に、投資をこれから始める人へのアドバイスはありますか?
【くらま】投資は株や債券、暗号資産など様々な種類があります。ひとつだけでなく、いろいろなものを少しずつ組み合わせて、幅広く一歩を踏み出してほしいと思います。
【八木】これから相場がどうなるとか、どの投資商品の価格が上がるのかといった未来のことは、僕ももちろんわかりません。だからこそ、しっかり勉強してリスクに備えることと、必ず「余剰資金で行う」ことが大切ですよね。生活資金に手をつけたら絶対にダメです。そこだけは気をつけてみんなで投資について学んでいきましょう。
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八木 真澄(やぎ・ますみ)
お笑い芸人
1994年に高校の柔道部の後輩だった高橋茂雄とお笑いコンビ「サバンナ」を結成。芸人としてメディアや舞台で活躍する一方、節約家・投資家としての顔を持ち、2024年10月にファイナンシャルプランナー技能士1級に合格。各メディアで金融知識を伝える他、著書に『年収300万円で心の大富豪』、2025年3月には共著で『FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます』を発刊(いずれもKADOKAWA)。
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節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ)
YouTuber
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
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くらま(くらま)
会社員
ファイナンシャルプランナーの資格を有する会社員。東京都内でひとり暮らしをしながら徹底的な節約・倹約生活を送り、社会人1年目で300万円以上あった奨学金をほぼ完済。週5で働きながら貯蓄術やお金のノウハウを発信するYouTubeチャンネル「倹者の流儀」を2018年より配信し、節約系ユーチューバーの先駆けとして知られる。著書に『すごい貯蓄 最速で1000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)がある。
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(お笑い芸人 八木 真澄、YouTuber 節約オタク ふゆこ、会社員 くらま 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=吉田大悟)