■不倫騒動から2年、ついに警察沙汰を起こした広末涼子
2025年4月もいろいろなニュースがありましたが、ダントツで注目されたのは、広末涼子が逮捕されたことではないでしょうか?
私もこの連載で広末涼子については過去に2本も書いた(不倫騒動の記事)せいか親戚のおばちゃんみたいな気持ちで「今度こそ幸せに心穏やかに生きてほしい」と勝手に思っておったのです。
【参考記事】
広末涼子はなぜリスクを覚悟で不倫に走ったのか…恋愛カウンセラーが見た「既婚美人タレント」の悲しみ
「ダブル不倫ならリスクを共有できて安心」女性の31%が不倫中という時代に広末涼子がもたらしたもの
そこに飛び込んできた「自称:広末涼子逮捕」の一報でしたから、正直なところ、多少動揺は致しました。まずは彼女が引き起こしたとされる交通事故が大型トレーラーにノーブレーキで追突したというものだったということ。その上搬送された病院で看護士に軽傷を負わせたというではありませんか。そして何より「自称:広末涼子」とはいったい……? という訳のわからなさに「これは大事件になってしまうのでは?」と不安に駆られました。
その後本人確認が取れて「自称」が外れても、パニック状態が続いたとされる彼女の拘留は10日間にも及び、薬物使用まで疑われた始末。SNSでは「薬物を使用していたとしてもアウト、シラフならそれはそれでアウト」などと連日トピックスに上げられました。
■薬物検査はシロ、迎えに来たのは恋人の部下だったが…
けっきょく薬物は検出されず、大事件にはならなそうだとほっとしたのもつかの間。釈放時に車で迎えに来た男性2人がサングラス着用&ヒゲのワイルドないでたちだったがゆえに、「裏社会と関係があるのでは?」などと、またまた話題になってしまいます。結局その二人は広末の元不倫相手(現恋人)として有名になった鳥羽シェフの関係者だと週刊誌の取材で分かるのですが、次々に出てくる疑惑と真実がセンセーショナルに報道されたのですから、注目され続けたのも仕方がないことなのかもしれません。
そんな、相変わらず危なっかしい「女優:広末涼子」ですが、ファンもそうじゃない人も一様に心配していたのが、彼女の精神状態に関してでした。奇行とも取れる事故や傷害事件、取り調べ中の彼女の興奮した様子が漏れ伝えられる度に、やれ「あの病気なのでは?」と病名を予測する書き込みをSNS上でも散見されたものです。
私は医師でも医療関係者でもないので広末涼子が病気なのかどうか、治療が必要なのかどうかはわかりません。ただ、働く女性たちのキャリアコンサルや結婚支援をやってきた身としては、彼女を調べれば調べるほど「なぜそっちに舵を切る?」という、彼女の人生の選択ばかりが気になります。
■早稲田入学&退学、デキ婚、二度の離婚という波瀾万丈人生
人気絶頂期に早稲田大学に入学するも忙しすぎて退学。女優業に身を入れるのかと思えば「仕事から逃れるにはこれしかないと思った」とデキ婚。俳優と結婚・離婚後、再婚して落ち着くのかと思えば、お相手は忙しくて家を空けがちなキャンドル・ジュン。そして、日本中の注目を集めてしまった鳥羽シェフとの不倫からの事務所独立。
不倫がきっかけになったようなタイミングで、2024年、広末涼子は個人事務所の社長になりました。
今回の事故や事件に関しては「独立や今の仕事にプレッシャーがあった」という供述もしているようで、私は深く納得したものです。私も小さな会社の経営歴が長い人間ですが、女優業と経営者の仕事というのはなかなか相性が悪いだろうな、というか、適性が違いすぎるというか、特に広末涼子のような天性の女優気質な女性には相当な負担だったのではないかと思ったからです。
■事故直前「自分のブランディングが分からなくなった」と告白
事故直前の3月に出演したバラエティ番組(「ザ・共通テン!」フジテレビ)では、独立してからのことを以下のように語っていました。
「ホームページに来たお仕事のオファーをすべてチェックしなければならない」
「今までノータッチだったが、(今は)最終判断が自分なので、(業務を)総括して知っておかなきゃいけない。今までは単純に現場だけ、プレーヤーとしてパフォーマンスする(だけだったのに)」
「自分が(社員を)指示するとか育てるとか、えらそうな立場になったことがなかったので、それが難しくて……」
「(オンライン会議で)言うべきことは言わなきゃと、全部言って、(ミーティングを)退出した瞬間に涙が出てくるみたいな。
「今、自分のブランディングも、よく分からなくなってる」
社長業と女優業を一人でこなすのは、やはり簡単ではなかったようです。
さらに、広末涼子の場合、3人の子を育てるという親業のタスクも抱えているわけです。3人の子を育てるために「3食手作り」をし「あらかじめ決めた献立メモを片手にみずからスーパーで4日分の買い出し」をする完璧ママぶりが、同じ番組で映し出されていました。
■女優が個人事務所を立ち上げるメリットとは?
たしかに、女優(俳優も)が芸能事務所から独立するメリットは大いにあるのだと思います。
まずは独立することで自分のキャリアを自分でコントロールできるようになります。自分が望むイメージや方向性、出演する作品を選ぶ自由が増えたりするでしょうし、今まで事務所に管理されていた制約や契約条件に縛られることなく、自分のスケジュールを調整しやすくなります。さらには、独立することで収入面でも自己管理が可能になり、出演料の半分以上が事務所に支払われるという状態より、収入は確実にアップします。
現に、広末涼子以外にも、米倉涼子、桐谷美鈴、柴咲コウ、黒木華、多部未華子、上野樹里……等々、そうそうたるメンバーが事務所を移籍するのではなく独立していて、女優の独立は今、ちょっとしたブームとも言えるかもしれません。そして、前述したメリットをきちっと享受している女優も多いからこそのブームなのでしょう。
売れている女優、注目を集める女優というのは皆、造形美や演技力だけではなく、愛される能力が高いと、私は以前の記事で彼女たちのことを「愛の胃下垂」と書きました。
中でも広末涼子に関して言えば、その胃下垂が巨大というか、お腹いっぱいの愛を受けていないと身を持ち崩してしまうタイプというか、そんなファンの心配を一心に受けて、さらに人目を引いてしまうという稀有なタイプと申しましょうか。
■44歳で警察沙汰になっても失わない透明感は「さすが女優」
浜松の警察署で釈放された際の彼女の動画を見ましたが、44歳という年齢に見えないとか、子供がいるように見えないとか、そういう次元ですらない圧倒的な透明感や儚いただずまいに「この人は誰かが守らなくては」と思ったのは私だけじゃないはず。
片や、個人事務所や小さな会社の社長業というのは、マネジメント会社や税理士にプロの領域は任せるとしても、「愛され」とは別の能力が必要となります。ルールを作ったり、一緒に働く人を選んだり、方向性を明示したり、決断したり。要は守られるのではなく自らが会社や社員を守る立場になるということです。
■「女優が独立するメリット」が全てデメリットに反転?
自分についてきてくれた人に嫌われても、オファーを貰った仕事が気に入らなくても、こなさなければならない。以前だったら所属事務所に「やらされていた仕事」だったのが、今度は誰のせいでもない「自分の会社のためにやらなければならない」のです。
その線引きがしっかりできる人は、女優業と社長業を両立可能だと思うのですが、広末涼子のような過剰にサービス精神が旺盛で、長いこと「国民的アイドルで女優」だった彼女にとって、女優業プラス社長業は大きなプレッシャーになり得ると思うのです。
なぜなら、前述した「女優が独立するメリット」が全てデメリットに反転しかねないからです。方向性やスケジュールやお金が自由になるどころか、逆に女優業の首を絞める羽目になる……。なので、広末涼子に関して言えば、事務所社長という重圧なんか背負わず、信頼と理解のあるどなたかにやってもらった方が良いのになぁ~と、一連の報道を見ながら大きなお世話で思っておりました。
前出の「ザ・共通テン!」でも、広末と同日ゲストだった歌舞伎俳優の尾上右近が、彼女がマネジメントに悩んでいる話を聞き、「やってみて合わなかったら、(社長を)人に任せるというものありだと思いますけどね」とさりげなくアドバイスしていたのも、まさに同じような気持ちだったのではないでしょうか。
■向かない社長業を続けるストレスは、ブラック労働並み
そして、これは女優という特殊な仕事や、独立起業という選択肢だけに言えることではなく、人間だれしも「向いていない仕事」を無理にやり続けると、どこかに歪みがくるものです。当然ですが、仕事というものはやりたくないことも多く含まれます。でも、目標があったり、メイン業務は好き、もしくは得意だったり、帰属意識が高かったりすれば話は別です。問題なのは、プレッシャーがその人のキャリアを「押しつぶしてしまうレベルの不得意分野であるかどうか」なのです。
実際にそのような不得意分野の仕事に就いてしまい、体調を崩したり、精神的に不安定になってしまった人たちを数多く見てきましたが、「不得意分野」を侮ることなかれ。ブラック企業に勤め心身を壊していくのと同等の破壊力をもっているのです。
■自分の得意分野で仕事していくことが、幸福につながる
自分の強みや自分の好きな仕事が解らないという人も昨今多いですが、まずはどんな仕事が今あり、これから増えていくかを調べることが大切です。そして、自分では得意と思っていないことでも「人に比べて難なくできる」「ストレスなくこなすことができる」というのは十分に得意分野と思われます。
1日の多くを、一生の多くを、仕事というものに時間を取られるのですから、わざわざ弱い分野で「なんでできないんだろう?」と悩みながら働くよりも、強みを早めに見つけてそこを延ばしていった方が、無駄に自信や自己肯定感を喪失せず、幸せな一生になるのではないかと私は思います。
ですから、広末涼子にも、ほんとは女優業に専念してほしかったのだけれども、こうなった以上、まずは被害者に対してしっかり償って、仕事より何より今度こそ落ち着いた生活を、彼女が心から望む幸せを、手に入れてほしいと願ってやみません。
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川崎 貴子(かわさき・たかこ)
リントス代表取締役
1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社・ジョヤンテを設立。2016年より、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。
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(リントス代表取締役 川崎 貴子)