人付き合いを良好に保つ秘訣は何か。コミュニケーション・アドバイザーの森優子さんは「私には20年以上も長く良好な関係が続いているママ友がいるが、会うのは1年に1・2回だ。
良好な人間関係には、一見さっぱりしているような6割という、ほどほどの距離のとり方が丁度いい」という――。
※本稿は、森優子『敵をつくらないホンネの伝え方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■良好な人付き合いの距離は6割
人付き合いの距離は6割くらいが丁度いい、ということを、私はもうずいぶん前、子どもが幼稚園に通っていたときに、ママ友との付き合いで学びました。
「6割って、少し距離があり過ぎない?」

「職場の人とは毎日会っているのだから、10割じゃないの?」
このような声が聞こえてきそうですが、ここで言う6割とは、会っている頻度ではなく、相手との距離のとり方のことです。
会話をし始めたらいきなり相手の顔が目の前にあって、思わず「近い!」と叫びたくなる距離のことではなく(もちろんそれも大切な距離ですが(笑))、相手が心地よいと感じる許容度とでも言いましょうか、それは距離を縮める際のスピード感にも比例しているような気がします。
例えば皆さんは、友人や気の合う仲間と、頻繁に1日の大半を一緒に過ごしたいと思いますか? もちろん個人差はあるとは思いますが、仕事をしていてもしていなくても、プライベートな時間のほとんどを始終一緒にいたら、やらなくてはならないことが後回しになって精神的に疲れないでしょうか。
良好な人付き合いを心得ている人は、一見さっぱりしているような6割という、ほどほどの距離のとり方がお互いに心地よさを感じていくことを知っているのです。
■プライベートに入り込むのは、本人が自ら話してきたら
私には、20年以上も長く良好な関係が続いているママ友がいるのですが、なんと会うのは1年に1・2回です。お互いに忙しいこともあって、基本的には忘年会と称して12月に会うだけなのです。
思い起こせば、幼稚園ママをしていたときは毎日彼女と顔を合わせていました。ですが、笑顔で挨拶をしたあと、子どものことで立ち話をするとしても5分程度で、どちらともなく「じゃあまた明日ね」と言って、気持ちよく去っていました。
ずいぶんさっぱりしていたものです(笑)。
子ども同士がどちらかの家で遊ぶときでさえ、親は上がらずお迎えのみに徹していました。
ママ友の世界で学んだ6割の距離は、シングルマザーになって社会復帰をしてから大いに役立ちました。
勤めていたリクルートの上司や先輩を見ても、子どもの有無に関係なく、独身既婚も関係なく6割の距離で良好な関係を維持している人が多いのです。同期にしても然りでした。プライベートに入り込むようなことは、本人が自ら話してこない限り聞きません。
その様子からは、一気に距離を縮めないように意識していることが感じられました。半年ほど経ち、少しずつ本人が話してきたら聞き上手に徹し、それからポツリポツリと質問をしていくのです。
もっとも、きびしい営業フィールドという環境も、6割の距離を保つのにプラスに働いたのかもしれません。16年もの間、違和感なく気持ちよく働くことができたのは、職場の仲間が同じ距離感を持っていたからでしょう。
■相手との信頼関係をつくる配慮ある一言
言うまでもなくラインやメールは、最適なコミュニケーションツールです。
ご存じのように、特にラインは写真や動画が簡単に送れるだけでなく音声通話やビデオ通話もできます。写真や動画、PDFなどのメディアファイルまで簡単に送ることができて、その多機能性には本当に驚くばかりです。

そんな便利なラインについて、皆さんなりに気をつけていることはありますか?
「22時以降に送るときは『夜分に失礼します』と冒頭に書くようにしています」

「忙しい相手に送るときに『時間があるときに読んでいただければ大丈夫です』とひと言添えています」

「既読をつけてもすぐに返事ができないとき『いま手が離せないから、後で返信するね』と、いったん送ります」
このようなことに気をつけているとしたら、それは素晴らしい配慮です!
電話と違ってあまり時間を気にせずに送れるラインだからといって、何時でもいいとは限りません。相手が寝ている時間帯だとしたら、たとえマナーモードにしていたとしても通知音で起こしてしまう可能性があります。
また、送った相手が多忙な人の場合は、「時間があるときに読んでいただければ大丈夫です」という思いやりある言葉に安心することでしょう。
返信ができるまでに時間がかかりそうだったら、送ってくれた相手が心配しないように、ひと言「いまバタバタしてるから後で返事するね」と、途中経過を送ることなら、手が離せない作業をしていない限り、30秒もあればできますね。
このように、相手の状況や気持ちを想像して配慮することは、信頼関係をつくるために心がけておきたいマナーです。
■ラインで「巻物」は絶対ダメ
そしてもう1つ、意識してほしい大切なことがあります。
先に、人との距離は6割を心がけると良好な人間関係を築いていかれることをお伝えしました。
この6割という距離感は、ラインやメールでも同じことが言えます。
先日、30代後半の男性から次のような話を聞きました。
「まだ面識が浅いのに、職場の女性から巻物のように長いラインが来るんです。返事をするとまた巻物のようなラインが来る。失礼にならないように一応返信するのですが、こちらがシンプルに送っても相手のラインは、何度もスクロールするほど異常に長い。
毎日ではないとはいえ、ほとほと疲れてしまってね、参っているんです」
巻物の内容は、そのほとんどが自分の生い立ちや家族のことから始まり、趣味や今日の出来事まで様々なのだそうです。職場の仲間とはいえ、長い自分物語が今後も続くかと思うと、うんざりしてくるのは、自然な心情です。
また、同じコミュニティで同世代の女性と意気投合し、ラインを交換した20代前半の女性は、その日から質問攻めのラインが巻物のごとく送られてくるようになったといいます。また巻物です。
仕事が終わった頃合いを見計らったように届くことが多く、返信ができずにいると、しばらく経ってまた長文が届くのだそうです。
このような一方的な距離の縮め方に、彼女は悩んでいました。
■ラインやメールの内容はシンプル、送る頻度はまめ
前述の30代男性も、20代の女性も、10割の距離で接してきた相手に、うんざりしてしまったのです。
顔が見えないメールやラインでの巻物は、重くて相手の気持ちが沈んでしまいます。伝えたい内容は、できるだけシンプルにする方が一瞬で伝わります。
特にスマートフォンで見るラインは、狭い視界の中で小さな文字を追わなくてはなりません。
どうしても多くのことを知らせなくてはいけない場合は、改行したり行間をとったりして工夫するといいでしょう。
または2・3回に分けて送信して、相手が読んで苦にならない配慮を意識しましょう。

面識が浅いならなおのこと、どんなに自分のことを知ってもらいたくても、相手のことを知りたくても、文章量は控えめにシンプルにするといいことを、心に留めておきましょう。ストップ、巻物です(笑)。

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森 優子(もり・ゆうこ)

コミュニケーション・アドバイザー

マリアージュコンサルタント事務所代表。短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。結婚、離婚を経てシングルマザーになり、(株)リクルート、(株)リクルートキャリアにて求人広告の企業営業を担当。入社2年目には、通期を通して「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成した者だけに与えられる「グランドスラム賞」を取り表彰される。ほかにも、月間MVP賞や月間売上トップ賞をたびたび獲得。その一方で、生活のため夜は銀座のクラブホステスとして14年間働く。2013年、両親の介護のためにホステスを引退。2015年より現職。著書に『感じのいい人は、この「ひと言」で好かれる』(三笠書房)、『雑談が上手い人 下手な人』『嫌なことを言われた時のとっさの返し言葉』『会話が上手い人 下手な人』(以上、かんき出版)

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(コミュニケーション・アドバイザー 森 優子)
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