ダイエットに成功する人は何が違うのか。京都大学名誉教授の森谷敏夫さんは「体重に一喜一憂するのは無駄でしかない。
※本稿は、森谷敏夫『京大式 脂肪燃焼メソッド』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「1週間で2キロ痩せる」のが不可能な理由
糖質制限ダイエットを始めて1週間……。毎日、ご飯やパンなどの炭水化物は朝だけにして、昼と夜は一切食べない。お腹がすいたら、ご飯のかわりにタンパク質豊富な肉や魚をしっかり食べ、同僚からの飲み会の誘いも断って……体重計に乗ったら、なんと2キログラム減!
このような経験をしたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。
きつい食事制限を頑張って“目を見張るばかりの成果”を得られたら、誰でも「やった!」と、大喜びすることでしょう。
でも、ちょっと待ってください。体重が2キログラムも減ったことに、まわりの人たちは気づいてくれていますか? 友達や同僚、家族の誰か1人でも、「痩せたね」と声をかけてくれましたか?
試しに、鏡に自分の体を映してみてください。
お腹にあったぜい肉は消えましたか? 二の腕や肩回りの丸みはなくなりましたか? 顔はすっきり引き締まったでしょうか?
おそらく残念なことに、答えはすべて「ノー」のはずです。
なぜなら食事制限だけで、1週間で2キログラムの脂肪を落とすのは、基本的に不可能だからです。減った2キログラムは体内にあった水分や筋肉で、脂肪は落ちていません。
■その2キロ、落ちたのは本当に脂肪?
2キログラムの脂肪とは、どのくらいの量なのでしょう。
2キロぶんの脂肪を身のまわりのもので表すと、500ミリリットルのペットボトル4本に相当します。ペットボトル4本ぶんもの脂肪が本当に体から消えたのなら、お腹や背中についたぜい肉は消え、顔が小さくなる……など、体全体が変化しているはずです。
でも残念ながら、たった1週間の食事制限で、ペットボトル4本ぶんもの脂肪がとれることなどありえません。だから、まわりの人もあなたの変化に気づかないし、実際に見た目もほとんど変わっていないのです。
1週間で2キログラム、つまり、ペットボトル4本ぶんもの脂肪が消えるはずがないことを、ここで簡単な計算によって証明してみましょう。
体の脂肪を1キログラム減らすためには、7200キロカロリーぶんのエネルギーを余分に消費しなければなりません。
脂肪2キログラムだと、7200キロカロリー×2=1万4400キロカロリーとなります。脂肪を2キログラム落とすには、1万4400キロカロリーぶんを減らさなければならないのです。
もし、この1万4400キロカロリーぶんを、運動量は増やさず、食事制限だけで減らすとしましょう。
■2キロの脂肪を減らすのには絶食をして9日もかかる
仮に1日1600キロカロリーを摂取している人が、絶食したとすると、1万4400キロカロリーぶんを減らすのに、何日かかるか。
1万4400キロカロリー÷1600キロカロリー=9
たとえ絶食をしても、2キロの脂肪を減らすのには9日もかかるわけです。いかがでしょうか。
1週間で2キログラムの体重を減らすことは不可能だということです。
実際には、1週間も絶食すれば、体は衰弱します。
たとえ健康を害することを承知でダイエットをしても、体脂肪を1週間で2キログラムも消すことはできない。ましてや少量にしろ、食事をしながらでは、1週間に2キログラムの脂肪をなきものにすることは不可能ということになります。
1週間で2キログラムどころか、1キログラムの脂肪を落とすのだって、ほとんど不可能です。1日1600キロカロリーとっている人が、朝昼晩の3食すべて絶食する生活を送ったとしても、4日半もかかる計算なのですから。
体脂肪を2キログラム、いえ、1キログラムでも落とすのは、並大抵のことではないのです。
■なぜ、「体重を気にする人」ほど痩せられないのか
今はSNSでさまざまな情報が手に入ります。体重を公表しているインフルエンサーや芸能人もいるせいか、すでに十分痩せていても「見た目のためにも、そして健康のためにも、もっともっと痩せなければいけない」と思っている方が、多くいます。
さまざまなダイエット法が流行してはすたれていくのは、それだけ「ダイエットに挑戦しては、そのたびに失敗している人」が多いからです。
きつい食事制限をして一時的に体重が減って喜んだものの、空腹に耐えられなくなり暴飲暴食、リバウンド。しばらく経つと、新しいダイエット法を見つけ「今度こそ、絶対成功させるぞ」と、意気込んで始めたものの、停滞期がきたとたんに心が折れ、やけ食いしてまた失敗……。
長年、大学や専門機関で肥満と体の関係について研究を続ける過程で気づいたのですが、このように、何度もダイエットに挑戦しては失敗する人には、ある1つの共通項があります。
それは「体重にとりつかれている」ことです。
■ダイエットに失敗する人の意外な共通点
「体重にとりつかれている」とは、どういうことでしょうか。それは「とにかく1キロでも、2キロでも体重を減らしたい」と、体重の減少だけをダイエットのゴールにしてしまうこと、つまり、体重減少絶対主義的な考えを持っている状態を指します。
ダイエットというと体重を落とすことと考えがちですが、これは間違いです。
体重を落とすこと自体が、ダイエットの目的ではありません。
ダイエットの目的、そしてダイエットに成功するということは、だぶついた余分な脂肪を減らすことです。これにつきます。
太ももの裏側の分厚い肉や、お腹まわりのぽっこりした脂肪など、体についた余計な脂肪を減らすことがダイエットの目的。それによって、締まった体が手に入ります。
体重を落とすことは、確かにダイエットをする上での1つの目安や目標にはなりますが、それ自体はダイエット成功の副産物だといっても過言ではないでしょう。
体脂肪が減った結果として、体重も落ちてくるというだけの話なのです。
たとえ5キログラムの体重が落ちても、そのほとんどが体の中の水分や筋肉で、脂肪が残ったままでは何の意味もありません。
■1キログラムぐらいの体重の増減は気にしない
逆に、運動をして筋肉量が少しでも増えれば、たとえ脂肪が減っていても体重が増えることはあります。この場合は体重が増えていたとしても、見た目は前より引き締まっているので、ダイエットは大成功したといえるのです。
そもそも体重は、便秘が解消しただけでも、500グラムほど簡単に落ちます。
また、体から水分が抜けても、体重はすぐに動きます。
男性ならば、体重の60パーセントほどを水分が占めています。体重が70キログラムの男性であれば、42キログラム近くは水分の重さです。汗や排泄物などで体の中の水分が3パーセントほど減っただけで、1キログラム近い体重が減ります。
つまり、「1日で1キログラム減った、もしくは増えた」という素早い体重の変化は、体の水が抜けたり増えたりしただけと考えてまず間違いありません。
いずれにしても、体重計の数字は「見た目の変化」「脂肪の増減」とはイコールではないということは忘れないでいただけたらと思います。
1キログラムぐらいの体重の増減は気にしない。昨日と比べて体重が1.5キログラム減っていたとしても、逆に増えていたとしても、それは脂肪が減ったり、増えたりしたわけではないからです。
そのことを心にとめておかないと、体重の増減ばかりに目を奪われ、体重をコントロールするはずが、体重に振り回されるようになってしまいます。
■一生かかってもダイエットに成功できないように
体重に振り回されるようになると、短期間で体重が5キログラムも減るような、欠食ダイエット、糖質制限ダイエットにどうしても目が向きます。
その結果として空腹に耐えられずにドカ食いをしてしまったり、きついダイエットがストレスとなって食べすぎてしまい、ダイエット前よりも太ってしまったりするのです。
また、一度「体重」に振り回されるようになると、頭の中はたえず、どうやって体重を減らすかでいっぱいになります。
その結果、しばらくたつと、前に痛い目にあったにもかかわらず「1カ月で4キログラム減も夢じゃない」式のダイエットにハマり、そして、また失敗するということをくりかえしてしまうのです。
このくりかえしを続けていては、一生かかってもダイエットに成功することはできないでしょう。
体重計に乗って自分の体をチェックすることは大切ですが、「昨日よりも1キロ増えている」などと、その数字に一喜一憂するのは今日からやめましょう。
その時間も、考え方も、ダイエットをおこなう上で無駄でしかありません。
■本当に目標にすべきことは2つだけ
体重に一喜一憂する考え方が、ダイエットには無駄でしかないという話をしました。このようなお話を講演会や大学の講義などですると、「でも、ダイエットには目標体重って欠かせないし、そもそも体重を確認しないと痩せたか、痩せていないかもわからないのでは?」と、おっしゃる方がいます。
確かに、ダイエットには体重のような目標が欠かせません。ただ、その目標は体重でなくていいのです。
体重のかわりに目標としていただきたいのが、「サイズ」と「体脂肪率」です。
まず、サイズについてお話ししましょう。サイズとは文字通り、お腹まわりや二の腕、太もも、ヒップなどの体の各パーツのサイズのことを指します。うれしいことに、脂肪は多くついているところから先に落ちていきます。
たとえば、大きなお尻で悩んでいる人はお尻の肉から落ちていきますし、ぱんぱんの太ももで悩んでいる人は太ももの肉から落ちていくのです。
日々、自分の体のサイズに敏感になり、サイズ感の確認をおこないましょう。
できたら毎日、できなければ数日おきにでも、全裸で全身鏡の前に立ち、ウエストが引き締まってきたか、お尻の肉がとれてきたか、脚が細くなってきたかをチェックするのです。
スマホなどを使って全身写真を撮るのもよいでしょう。今の自分の体形を冷静に見られますし、写真を見比べることで日々の変化もよくわかります。
たとえ体重が減っていなくても、お腹が前より締まってきたことがわかれば、それ自体がダイエット成功のためのモチベーション、そして目安となるのです。
■体脂肪率の計測は「朝起きてトイレをすませた直後」がベスト
また、脂肪は多くついているところから落ちていきますが、脂肪が1キログラム消えれば、お腹まわりは1センチ近く必ず細くなります。
そこで、ウエストサイズを脂肪増減の目安とするのもよいでしょう。定期的にウエストを測るようにするのです。体重が減っていなくても、ウエストが少しでも細くなっていれば、順調に体が変わっていることがわかります。
さらに、ダイエットの目標として、また成功の目安として大事にしたいのが、体脂肪率。
どうせ体重を測るのであれば、体脂肪率も測れる体重計にして、日々の体脂肪率をチェックするのです。
体脂肪率であれば、体重のように数字で「見える化」できるので、自分の状態を客観的に把握できます。また、数字で変化を見ることで、モチベーションを高めることもできるでしょう。
体脂肪が測れる体重計では、体内の水分量を測定し、その数字に体重と身長の情報も加味して、体脂肪率を割り出しています。
そのため、入浴後や運動のあとなど、汗をかいて体内の水分量が減っている状態では、体脂肪率は実際より高く測定されてしまいますし、食後の計測では、食事に含まれている水分量によって数字が変わります。
そこで、計測のタイミングとしては、水分の出入りの影響をあまり受けずに済む「朝起きてトイレをすませた直後」がベストです。
このタイミングで毎朝、体脂肪率を測ることで、自分の体の変化を正確に知ることができるでしょう。
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森谷 敏夫(もりたに・としお)
京都大学名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部代表取締役。南カリフォルニア大学大学院博士課程修了。テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、米国モンタナ大学生命科学部客員教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て、京都大学名誉教授、中京大学客員教授に。専門は応用生理学とスポーツ医学で生活習慣病における運動の重要性を説く。『結局、炭水化物を食べればしっかりやせる!』(日本文芸社)、『おサボリ筋トレ』(毎日新聞出版)など著書多数。
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(京都大学名誉教授 森谷 敏夫)
体重のかわりに目標とするべき2つの指標がある」という――。
※本稿は、森谷敏夫『京大式 脂肪燃焼メソッド』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「1週間で2キロ痩せる」のが不可能な理由
糖質制限ダイエットを始めて1週間……。毎日、ご飯やパンなどの炭水化物は朝だけにして、昼と夜は一切食べない。お腹がすいたら、ご飯のかわりにタンパク質豊富な肉や魚をしっかり食べ、同僚からの飲み会の誘いも断って……体重計に乗ったら、なんと2キログラム減!
このような経験をしたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。
きつい食事制限を頑張って“目を見張るばかりの成果”を得られたら、誰でも「やった!」と、大喜びすることでしょう。
でも、ちょっと待ってください。体重が2キログラムも減ったことに、まわりの人たちは気づいてくれていますか? 友達や同僚、家族の誰か1人でも、「痩せたね」と声をかけてくれましたか?
試しに、鏡に自分の体を映してみてください。
お腹にあったぜい肉は消えましたか? 二の腕や肩回りの丸みはなくなりましたか? 顔はすっきり引き締まったでしょうか?
おそらく残念なことに、答えはすべて「ノー」のはずです。
なぜなら食事制限だけで、1週間で2キログラムの脂肪を落とすのは、基本的に不可能だからです。減った2キログラムは体内にあった水分や筋肉で、脂肪は落ちていません。
■その2キロ、落ちたのは本当に脂肪?
2キログラムの脂肪とは、どのくらいの量なのでしょう。
2キロぶんの脂肪を身のまわりのもので表すと、500ミリリットルのペットボトル4本に相当します。ペットボトル4本ぶんもの脂肪が本当に体から消えたのなら、お腹や背中についたぜい肉は消え、顔が小さくなる……など、体全体が変化しているはずです。
でも残念ながら、たった1週間の食事制限で、ペットボトル4本ぶんもの脂肪がとれることなどありえません。だから、まわりの人もあなたの変化に気づかないし、実際に見た目もほとんど変わっていないのです。
1週間で2キログラム、つまり、ペットボトル4本ぶんもの脂肪が消えるはずがないことを、ここで簡単な計算によって証明してみましょう。
体の脂肪を1キログラム減らすためには、7200キロカロリーぶんのエネルギーを余分に消費しなければなりません。
脂肪2キログラムだと、7200キロカロリー×2=1万4400キロカロリーとなります。脂肪を2キログラム落とすには、1万4400キロカロリーぶんを減らさなければならないのです。
もし、この1万4400キロカロリーぶんを、運動量は増やさず、食事制限だけで減らすとしましょう。
■2キロの脂肪を減らすのには絶食をして9日もかかる
仮に1日1600キロカロリーを摂取している人が、絶食したとすると、1万4400キロカロリーぶんを減らすのに、何日かかるか。
1万4400キロカロリー÷1600キロカロリー=9
たとえ絶食をしても、2キロの脂肪を減らすのには9日もかかるわけです。いかがでしょうか。
1週間で2キログラムの体重を減らすことは不可能だということです。
実際には、1週間も絶食すれば、体は衰弱します。
たとえ健康を害することを承知でダイエットをしても、体脂肪を1週間で2キログラムも消すことはできない。ましてや少量にしろ、食事をしながらでは、1週間に2キログラムの脂肪をなきものにすることは不可能ということになります。
1週間で2キログラムどころか、1キログラムの脂肪を落とすのだって、ほとんど不可能です。1日1600キロカロリーとっている人が、朝昼晩の3食すべて絶食する生活を送ったとしても、4日半もかかる計算なのですから。
体脂肪を2キログラム、いえ、1キログラムでも落とすのは、並大抵のことではないのです。
■なぜ、「体重を気にする人」ほど痩せられないのか
今はSNSでさまざまな情報が手に入ります。体重を公表しているインフルエンサーや芸能人もいるせいか、すでに十分痩せていても「見た目のためにも、そして健康のためにも、もっともっと痩せなければいけない」と思っている方が、多くいます。
さまざまなダイエット法が流行してはすたれていくのは、それだけ「ダイエットに挑戦しては、そのたびに失敗している人」が多いからです。
きつい食事制限をして一時的に体重が減って喜んだものの、空腹に耐えられなくなり暴飲暴食、リバウンド。しばらく経つと、新しいダイエット法を見つけ「今度こそ、絶対成功させるぞ」と、意気込んで始めたものの、停滞期がきたとたんに心が折れ、やけ食いしてまた失敗……。
長年、大学や専門機関で肥満と体の関係について研究を続ける過程で気づいたのですが、このように、何度もダイエットに挑戦しては失敗する人には、ある1つの共通項があります。
それは「体重にとりつかれている」ことです。
■ダイエットに失敗する人の意外な共通点
「体重にとりつかれている」とは、どういうことでしょうか。それは「とにかく1キロでも、2キロでも体重を減らしたい」と、体重の減少だけをダイエットのゴールにしてしまうこと、つまり、体重減少絶対主義的な考えを持っている状態を指します。
ダイエットというと体重を落とすことと考えがちですが、これは間違いです。
体重を落とすこと自体が、ダイエットの目的ではありません。
ダイエットの目的、そしてダイエットに成功するということは、だぶついた余分な脂肪を減らすことです。これにつきます。
太ももの裏側の分厚い肉や、お腹まわりのぽっこりした脂肪など、体についた余計な脂肪を減らすことがダイエットの目的。それによって、締まった体が手に入ります。
体重を落とすことは、確かにダイエットをする上での1つの目安や目標にはなりますが、それ自体はダイエット成功の副産物だといっても過言ではないでしょう。
体脂肪が減った結果として、体重も落ちてくるというだけの話なのです。
たとえ5キログラムの体重が落ちても、そのほとんどが体の中の水分や筋肉で、脂肪が残ったままでは何の意味もありません。
■1キログラムぐらいの体重の増減は気にしない
逆に、運動をして筋肉量が少しでも増えれば、たとえ脂肪が減っていても体重が増えることはあります。この場合は体重が増えていたとしても、見た目は前より引き締まっているので、ダイエットは大成功したといえるのです。
そもそも体重は、便秘が解消しただけでも、500グラムほど簡単に落ちます。
また、体から水分が抜けても、体重はすぐに動きます。
男性ならば、体重の60パーセントほどを水分が占めています。体重が70キログラムの男性であれば、42キログラム近くは水分の重さです。汗や排泄物などで体の中の水分が3パーセントほど減っただけで、1キログラム近い体重が減ります。
つまり、「1日で1キログラム減った、もしくは増えた」という素早い体重の変化は、体の水が抜けたり増えたりしただけと考えてまず間違いありません。
いずれにしても、体重計の数字は「見た目の変化」「脂肪の増減」とはイコールではないということは忘れないでいただけたらと思います。
1キログラムぐらいの体重の増減は気にしない。昨日と比べて体重が1.5キログラム減っていたとしても、逆に増えていたとしても、それは脂肪が減ったり、増えたりしたわけではないからです。
そのことを心にとめておかないと、体重の増減ばかりに目を奪われ、体重をコントロールするはずが、体重に振り回されるようになってしまいます。
■一生かかってもダイエットに成功できないように
体重に振り回されるようになると、短期間で体重が5キログラムも減るような、欠食ダイエット、糖質制限ダイエットにどうしても目が向きます。
その結果として空腹に耐えられずにドカ食いをしてしまったり、きついダイエットがストレスとなって食べすぎてしまい、ダイエット前よりも太ってしまったりするのです。
また、一度「体重」に振り回されるようになると、頭の中はたえず、どうやって体重を減らすかでいっぱいになります。
その結果、しばらくたつと、前に痛い目にあったにもかかわらず「1カ月で4キログラム減も夢じゃない」式のダイエットにハマり、そして、また失敗するということをくりかえしてしまうのです。
このくりかえしを続けていては、一生かかってもダイエットに成功することはできないでしょう。
体重計に乗って自分の体をチェックすることは大切ですが、「昨日よりも1キロ増えている」などと、その数字に一喜一憂するのは今日からやめましょう。
その時間も、考え方も、ダイエットをおこなう上で無駄でしかありません。
■本当に目標にすべきことは2つだけ
体重に一喜一憂する考え方が、ダイエットには無駄でしかないという話をしました。このようなお話を講演会や大学の講義などですると、「でも、ダイエットには目標体重って欠かせないし、そもそも体重を確認しないと痩せたか、痩せていないかもわからないのでは?」と、おっしゃる方がいます。
確かに、ダイエットには体重のような目標が欠かせません。ただ、その目標は体重でなくていいのです。
体重のかわりに目標としていただきたいのが、「サイズ」と「体脂肪率」です。
まず、サイズについてお話ししましょう。サイズとは文字通り、お腹まわりや二の腕、太もも、ヒップなどの体の各パーツのサイズのことを指します。うれしいことに、脂肪は多くついているところから先に落ちていきます。
たとえば、大きなお尻で悩んでいる人はお尻の肉から落ちていきますし、ぱんぱんの太ももで悩んでいる人は太ももの肉から落ちていくのです。
日々、自分の体のサイズに敏感になり、サイズ感の確認をおこないましょう。
できたら毎日、できなければ数日おきにでも、全裸で全身鏡の前に立ち、ウエストが引き締まってきたか、お尻の肉がとれてきたか、脚が細くなってきたかをチェックするのです。
スマホなどを使って全身写真を撮るのもよいでしょう。今の自分の体形を冷静に見られますし、写真を見比べることで日々の変化もよくわかります。
たとえ体重が減っていなくても、お腹が前より締まってきたことがわかれば、それ自体がダイエット成功のためのモチベーション、そして目安となるのです。
■体脂肪率の計測は「朝起きてトイレをすませた直後」がベスト
また、脂肪は多くついているところから落ちていきますが、脂肪が1キログラム消えれば、お腹まわりは1センチ近く必ず細くなります。
そこで、ウエストサイズを脂肪増減の目安とするのもよいでしょう。定期的にウエストを測るようにするのです。体重が減っていなくても、ウエストが少しでも細くなっていれば、順調に体が変わっていることがわかります。
さらに、ダイエットの目標として、また成功の目安として大事にしたいのが、体脂肪率。
どうせ体重を測るのであれば、体脂肪率も測れる体重計にして、日々の体脂肪率をチェックするのです。
体脂肪率であれば、体重のように数字で「見える化」できるので、自分の状態を客観的に把握できます。また、数字で変化を見ることで、モチベーションを高めることもできるでしょう。
体脂肪が測れる体重計では、体内の水分量を測定し、その数字に体重と身長の情報も加味して、体脂肪率を割り出しています。
そのため、入浴後や運動のあとなど、汗をかいて体内の水分量が減っている状態では、体脂肪率は実際より高く測定されてしまいますし、食後の計測では、食事に含まれている水分量によって数字が変わります。
そこで、計測のタイミングとしては、水分の出入りの影響をあまり受けずに済む「朝起きてトイレをすませた直後」がベストです。
このタイミングで毎朝、体脂肪率を測ることで、自分の体の変化を正確に知ることができるでしょう。
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森谷 敏夫(もりたに・としお)
京都大学名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部代表取締役。南カリフォルニア大学大学院博士課程修了。テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、米国モンタナ大学生命科学部客員教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て、京都大学名誉教授、中京大学客員教授に。専門は応用生理学とスポーツ医学で生活習慣病における運動の重要性を説く。『結局、炭水化物を食べればしっかりやせる!』(日本文芸社)、『おサボリ筋トレ』(毎日新聞出版)など著書多数。
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(京都大学名誉教授 森谷 敏夫)
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