虫歯を予防するためには、どうすればいいのか。歯科医師・歯学博士の生澤右子さんは「時間をかけてダラダラと砂糖入りのジュースを飲むのは危ない。
※本稿は、生澤右子(著)、有田秀穂(監修)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■自販機は“無害な飲み物”のほうが少ない
外出する親子にとっての“危険スポット”といえば、自販機です。駅のホームに、信号待ちの街角に、駐車場にと、ありとあらゆる場所に自販機が存在します。それを目ざとく見つけるのが子どもです。すぐに吸い寄せられるように近づいて、「ジュース飲みたい」「のど渇いた」と言って、「買って! 買って!」と迫ってきます。機嫌が悪いと、泣き叫ぶこともあるかもしれません。
私も2人の子育てをしている身ですが、わが家でも、一時は自販機を疎ましく思ったほどで、駅のホームではできるだけ自販機の見えない場所で電車を待っていました。自販機で売っている飲み物の中で、歯に無害なのは水、お茶くらいです。そうすると、例えば私が見た自販機は全部で35本の飲み物を売っていましたが、その中の22本は歯によくない飲み物でした。
無害なほうが少ないという、驚くべき事実。
■WHOは“遊離糖1日25グラムまで”としている
歯によくない飲み物は、簡単にいうと甘いか酸っぱい飲み物です。シュワシュワ系も結局のところ、歯によくありません。
まず、わかりやすいのが、甘い飲み物です。砂糖はむし歯になると知っている方も多いと思いますが、そのペットボトルにどれくらいの砂糖が入っているかご存じでしょうか。
WHO(世界保健機関)では、「遊離糖(フリーシュガー)」のとりすぎがむし歯や肥満になるリスクを上げるとして、1日25グラムまでに抑えるべきとしています。遊離糖(フリーシュガー)とは、食べ物や飲み物に添加されている糖や、ハチミツ・シロップ・100%の果汁・濃縮果汁の中などに天然に存在するものをいいます。
500ミリリットルのペットボトルに入っているコーラには、約60グラムの遊離糖が入っていますので、感覚がバグってしまうかも(笑)。あの甘みは、ジュースでも同じですから、むし歯菌にとってはごちそうになります。
酸っぱい飲み物も、歯によくない飲み物になります。味として酸っぱいオレンジジュースなどはもちろん、スポーツ飲料も酸っぱい分類になります。
■ペットボトルの“ダラダラ飲み”が危ない
酸っぱい飲み物は口の中を酸性にして、歯が溶けていってしまうのです。そして、甘い飲み物も、実は酸性度に注目すると、歯を溶かすような酸性の飲み物です。
ペットボトルが特に悪いのは、便利にいつでも飲めてしまうことです‼ つまり、フタがついているおかげで、一気に飲みきらないで、ちょこちょこダラダラ飲んでしまいます。
唾液の役割のひとつとして、口の中で酸性度が高くなると、うまく中和して歯が溶けないように調節してくれるのですが、ちょこちょこダラダラ飲むと、調節が効かなくなり、口の中の酸性度がずっと高いままになってしまうのです。
口を「休ませる」ことが大切です。ですから、私がお勧めしている方法は、「ジュースが飲みたいなら、おやつの時間に飲もうね」の一言です。決まった時間におやつとして飲めばOKです。そして、そのあとは口をすすいだり、歯を磨いたりすることを忘れずに。このとき、ペットボトルではなく、小さなジュースの飲みきりパックやコップで飲むようにすればよいのです。
のどが渇いても、水かお茶しか飲ませません。自販機で買うのは、水やお茶がなくなったときだけ、とルールを決めて、例外を作りません。
■「白い線のようなもの」は虫歯になりかけのサイン
そうすると、子どもは「やっぱり、あとにする」と言って、その場から離れると、興味がもう次に行ってしまって、けろっとしていることがほとんどです。
ここまでの話のポイントは、「口を休ませる」と「ジュースはおやつと考える」ということです。甘かったり酸っぱかったりする飲み物をちょこちょこダラダラ飲んでいると、口が休んだことにならない(口が酸性になったまま)ので、歯が少しずつ溶けていきます。私が毎月見回りしている保育園の園児さんで、ふだんからジュースを飲んでいると、口の中を見て当てることができます。
わかりやすいのは、だいたいの歯で、歯ぐきに近い部分に白い線のようなものが浮き上がっています。ひときわ白く光沢がなくなっている状態です。
その白い部分は、歯から大切なミネラルが失われていて、むし歯のなりかけです(意外に思われる方が多いのですが、初期むし歯は白いのです)。まだ削ることなく回復できるのですが、もう少し進行すると、黒い穴があいて、むし歯となります。
■アイスクリームは比較的虫歯になりにくい
ちょこちょこダラダラ飲みが習慣になると、たくさんの歯がむし歯になってしまうので怖いです。夏の暑い電車の車内でペットボトルのスポーツ飲料を飲ませているママ・パパをよく見かけて、「ダメだよー。
もちろん、食べ物でも同じようなことが起こっています。お菓子の場合はさらに歯にくっついたり、歯の間に残ったりするので、むし歯菌がそれをエサにして増え、酸を出して歯を溶かします。この場合は、歯のかむ面や歯と歯の間がむし歯になります。
ただ同じおやつといっても、糖分と歯への粘着性によってむし歯のなりやすさが違うので、ぜひ参考にしてください。
例えば、先ほどの遊離糖が入っていない、果物や野菜の自然な甘み、牛乳は問題ないのですが、遊離糖が入っている菓子パンなどは注意が必要です。お菓子の中でも、甘くないおせんべいはむし歯になりにくいですが、甘いアイスクリームも比較的むし歯になりにくい分類になります。
アイスクリームは(中に固形分が入っていなければ)歯にくっつくことがないので、食べたあとに水やお茶を飲めばよいのです。
■“歯にべったりくっつくお菓子”が最もリスクが高い
やはり危ないのが、チョコレートやウエハース、かりんとうなど、私たちも食べる機会が多い、甘くて粘着性もあるお菓子です。意外に思うかもしれませんが、ポテトチップスも油分が多く粘着性があり、デンプンは分解されて糖になります。
そして、一番むし歯リスクが高いお菓子が、キャラメルやヌガーといったほとんどが糖分の、べったり歯にくっつくタイプです。くっついている間ずっと、むし歯菌のエサとなってしまいます。
ということで、甘いものが絶対ダメというわけではなく、ちょこちょこダラダラ食べないように食べ方に気をつけたり、食べたあとに水やお茶を飲んだり、歯磨きをするなどして、その後、口を休ませるようにすればよいのです。
「甘いものはゼロにしなきゃダメ!」と頑張る必要はありません。締めるところは締める、ゆるめるところはゆるめる、といったように緩急をつけて上手にコントロールしていきましょう。
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生澤 右子(いくざわ・ゆうこ)
歯科医師・歯学博士、Dental Defense代表取締役
「親子のためのはははクラブ」「こどもはいしゃアカデミー」主宰。女子学院高校卒業。東京医科歯科大学・大学院博士課程修了。国立成育医療研究センター手術・集中治療部レジデント・ペンシルバニア大学歯学部マイクロサージェリーコース修了。明海大学歯学部歯科麻酔科客員講師。日本歯科麻酔学会認定医。著書に『歯と口を整えるアンチエイジング』(ビジネス社)がある。
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有田 秀穂(ありた・ひでほ)
医師・脳生理学者、東邦大学医学部名誉教授
セロトニンDojo代表。1948年東京生まれ。
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(歯科医師・歯学博士、Dental Defense代表取締役 生澤 右子、医師・脳生理学者、東邦大学医学部名誉教授 有田 秀穂)
口の中の酸性度が高いままになってしまい、虫歯リスクを高めてしまうだろう。飲み方やおやつの選び方にはポイントがある」という――。(第1回)
※本稿は、生澤右子(著)、有田秀穂(監修)『集中力が高まり、心の強い子になる! 噛む力が子どもの脳を育てる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■自販機は“無害な飲み物”のほうが少ない
外出する親子にとっての“危険スポット”といえば、自販機です。駅のホームに、信号待ちの街角に、駐車場にと、ありとあらゆる場所に自販機が存在します。それを目ざとく見つけるのが子どもです。すぐに吸い寄せられるように近づいて、「ジュース飲みたい」「のど渇いた」と言って、「買って! 買って!」と迫ってきます。機嫌が悪いと、泣き叫ぶこともあるかもしれません。
私も2人の子育てをしている身ですが、わが家でも、一時は自販機を疎ましく思ったほどで、駅のホームではできるだけ自販機の見えない場所で電車を待っていました。自販機で売っている飲み物の中で、歯に無害なのは水、お茶くらいです。そうすると、例えば私が見た自販機は全部で35本の飲み物を売っていましたが、その中の22本は歯によくない飲み物でした。
無害なほうが少ないという、驚くべき事実。
これを私は「自販機のワナ」と呼んでいます。今でこそ「それで、自販機のワナに引っかかるわけ⁉」と自販機を見て反射的に欲しがるわが子にいいますが、昔は本当に大変でした。
■WHOは“遊離糖1日25グラムまで”としている
歯によくない飲み物は、簡単にいうと甘いか酸っぱい飲み物です。シュワシュワ系も結局のところ、歯によくありません。
まず、わかりやすいのが、甘い飲み物です。砂糖はむし歯になると知っている方も多いと思いますが、そのペットボトルにどれくらいの砂糖が入っているかご存じでしょうか。
WHO(世界保健機関)では、「遊離糖(フリーシュガー)」のとりすぎがむし歯や肥満になるリスクを上げるとして、1日25グラムまでに抑えるべきとしています。遊離糖(フリーシュガー)とは、食べ物や飲み物に添加されている糖や、ハチミツ・シロップ・100%の果汁・濃縮果汁の中などに天然に存在するものをいいます。
500ミリリットルのペットボトルに入っているコーラには、約60グラムの遊離糖が入っていますので、感覚がバグってしまうかも(笑)。あの甘みは、ジュースでも同じですから、むし歯菌にとってはごちそうになります。
酸っぱい飲み物も、歯によくない飲み物になります。味として酸っぱいオレンジジュースなどはもちろん、スポーツ飲料も酸っぱい分類になります。
この理由は、表面で歯を守っている“歯の鎧(よろい)”ともいえるエナメル質が溶ける酸性度を超えてしまうからです。
■ペットボトルの“ダラダラ飲み”が危ない
酸っぱい飲み物は口の中を酸性にして、歯が溶けていってしまうのです。そして、甘い飲み物も、実は酸性度に注目すると、歯を溶かすような酸性の飲み物です。
ペットボトルが特に悪いのは、便利にいつでも飲めてしまうことです‼ つまり、フタがついているおかげで、一気に飲みきらないで、ちょこちょこダラダラ飲んでしまいます。
唾液の役割のひとつとして、口の中で酸性度が高くなると、うまく中和して歯が溶けないように調節してくれるのですが、ちょこちょこダラダラ飲むと、調節が効かなくなり、口の中の酸性度がずっと高いままになってしまうのです。
口を「休ませる」ことが大切です。ですから、私がお勧めしている方法は、「ジュースが飲みたいなら、おやつの時間に飲もうね」の一言です。決まった時間におやつとして飲めばOKです。そして、そのあとは口をすすいだり、歯を磨いたりすることを忘れずに。このとき、ペットボトルではなく、小さなジュースの飲みきりパックやコップで飲むようにすればよいのです。
のどが渇いても、水かお茶しか飲ませません。自販機で買うのは、水やお茶がなくなったときだけ、とルールを決めて、例外を作りません。
「ジュースをここで買って飲んだら、今日はあとでおやつないよ」などと言って、ジュースをちょこちょこダラダラ飲まずに、今飲むか、やめるかを選ばせます。どんなにしつこくても、しっかり選ばせて、約束させます。
■「白い線のようなもの」は虫歯になりかけのサイン
そうすると、子どもは「やっぱり、あとにする」と言って、その場から離れると、興味がもう次に行ってしまって、けろっとしていることがほとんどです。
ここまでの話のポイントは、「口を休ませる」と「ジュースはおやつと考える」ということです。甘かったり酸っぱかったりする飲み物をちょこちょこダラダラ飲んでいると、口が休んだことにならない(口が酸性になったまま)ので、歯が少しずつ溶けていきます。私が毎月見回りしている保育園の園児さんで、ふだんからジュースを飲んでいると、口の中を見て当てることができます。
わかりやすいのは、だいたいの歯で、歯ぐきに近い部分に白い線のようなものが浮き上がっています。ひときわ白く光沢がなくなっている状態です。
その白い部分は、歯から大切なミネラルが失われていて、むし歯のなりかけです(意外に思われる方が多いのですが、初期むし歯は白いのです)。まだ削ることなく回復できるのですが、もう少し進行すると、黒い穴があいて、むし歯となります。
■アイスクリームは比較的虫歯になりにくい
ちょこちょこダラダラ飲みが習慣になると、たくさんの歯がむし歯になってしまうので怖いです。夏の暑い電車の車内でペットボトルのスポーツ飲料を飲ませているママ・パパをよく見かけて、「ダメだよー。
飲ませるなら、水かお茶!」と私は心の中で叫んでいます……(アスリート以外は、熱中症予防にスポーツ飲料は不要です)。
もちろん、食べ物でも同じようなことが起こっています。お菓子の場合はさらに歯にくっついたり、歯の間に残ったりするので、むし歯菌がそれをエサにして増え、酸を出して歯を溶かします。この場合は、歯のかむ面や歯と歯の間がむし歯になります。
ただ同じおやつといっても、糖分と歯への粘着性によってむし歯のなりやすさが違うので、ぜひ参考にしてください。
例えば、先ほどの遊離糖が入っていない、果物や野菜の自然な甘み、牛乳は問題ないのですが、遊離糖が入っている菓子パンなどは注意が必要です。お菓子の中でも、甘くないおせんべいはむし歯になりにくいですが、甘いアイスクリームも比較的むし歯になりにくい分類になります。
アイスクリームは(中に固形分が入っていなければ)歯にくっつくことがないので、食べたあとに水やお茶を飲めばよいのです。
■“歯にべったりくっつくお菓子”が最もリスクが高い
やはり危ないのが、チョコレートやウエハース、かりんとうなど、私たちも食べる機会が多い、甘くて粘着性もあるお菓子です。意外に思うかもしれませんが、ポテトチップスも油分が多く粘着性があり、デンプンは分解されて糖になります。
そして、一番むし歯リスクが高いお菓子が、キャラメルやヌガーといったほとんどが糖分の、べったり歯にくっつくタイプです。くっついている間ずっと、むし歯菌のエサとなってしまいます。
ということで、甘いものが絶対ダメというわけではなく、ちょこちょこダラダラ食べないように食べ方に気をつけたり、食べたあとに水やお茶を飲んだり、歯磨きをするなどして、その後、口を休ませるようにすればよいのです。
「甘いものはゼロにしなきゃダメ!」と頑張る必要はありません。締めるところは締める、ゆるめるところはゆるめる、といったように緩急をつけて上手にコントロールしていきましょう。
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生澤 右子(いくざわ・ゆうこ)
歯科医師・歯学博士、Dental Defense代表取締役
「親子のためのはははクラブ」「こどもはいしゃアカデミー」主宰。女子学院高校卒業。東京医科歯科大学・大学院博士課程修了。国立成育医療研究センター手術・集中治療部レジデント・ペンシルバニア大学歯学部マイクロサージェリーコース修了。明海大学歯学部歯科麻酔科客員講師。日本歯科麻酔学会認定医。著書に『歯と口を整えるアンチエイジング』(ビジネス社)がある。
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有田 秀穂(ありた・ひでほ)
医師・脳生理学者、東邦大学医学部名誉教授
セロトニンDojo代表。1948年東京生まれ。
東京大学医学部卒業後、東海大学病院で臨床に、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究に従事、その間、米国ニューヨーク州立大学に留学。東邦大学医学部統合生理学で坐禅とセロトニン神経・前頭前野について研究、2013年に退職、名誉教授となる。各界から注目を集める「セロトニン研究」の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントするセロトニンDojoの代表も務める。著書として『医者が教える疲れない人の脳:「慢性疲労」を消す技術』(三笠書房)、『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)、『脳科学者が教える やっかいな脳のクセをリセットする 朝5分の呼吸法』(総合法令出版)など多数ある。
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(歯科医師・歯学博士、Dental Defense代表取締役 生澤 右子、医師・脳生理学者、東邦大学医学部名誉教授 有田 秀穂)
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