年会費が有料と無料のクレジットカードでは、特典に大きな違いがある。近年は年会費5万円、10万円といった“プレミアムカード”が続々と登場しており、若者にも人気だという。
「ダイナースクラブカード」「ラグジュアリーカード」「アメリカン・エキスプレス・カード」の3社に、人気の理由を聞いた――。
■年会費14万3000円のプレミアムカードは招待制
もともとレストランでツケ払いができるカードとして誕生した「ダイナースクラブカード」。プロパーカード(自社ブランドのカード)は3段階制で、一般カードは年会費2万4200円。その次の「プレミアムカード」は招待制で、年会費14万3000円になる。そして最上位が999枚限定発行の「ロイヤルプレミアムカード」でこちらも招待制。年会費は非公開だが、ネットで調べると55万円という情報があって驚いた。
ダイナースクラブカードは、2022年にプレミアムカード会員向けにシルバーのメタルカードを発行。2024年にはブラックのメタルカードも追加され、発行手数料はいずれも3万円が必要になる。とはいえ中には通常のプラスチックカードに、シルバーとブラック両方のメタルカードを保持する会員もいるそうだ。
■「年会費を払ってでも得たい満足度」
新規会員の近年の特徴について聞いた。
「ダイナースクラブカードとその上位カードであるプレミアムカードでは新規会員の年齢層構成が大きく異なり、ダイナースクラブ全体では40代までの会員が27%なのに対して、年会費が高いプレミアムカードのほうは40代までの会員が42%と、年齢層が若くなっています」(三井住友トラストクラブ常務取締役の野泉和宏氏)
プレミアムカードの入会動機は、半数以上が「ステータスや安心・信頼感のあるカードだから」と回答しているそう。この結果に対して、「上位カードの入会審査をクリアしたという“社会人としてのお墨付き”がつくこと。
カード加盟店で一般的なカードよりも丁寧に接遇される体験や高額保障の付帯保険などに、年会費を払ってでも得たい満足度を感じてもらっていると思います。また、カード文化が浸透、成熟するにつれ、決済機能だけでは物足りない、一般的な付帯サービスでは満足できない富裕層が増加していると考えられます」(野泉氏)
実際、プレミアムカード会員には、24時間年中無休で対応してくれるコンシェルジュサービスや、東京・銀座と大阪・梅田にある会員専用の「プレミアムラウンジ」が高い評価を得ている。
「メタルカードなどステータスを感じる」「持っているだけで満足感がある」「コンシェルジュの対応がかなり良い」「大阪にもラウンジができてくれて、プレミアムにアップグレードしたい気持ちが高まった」といった声が会員から寄せられている。
■経費決済用カードとして活用されている
ダイナースクラブカードでは、所定のコース料理を2名以上で利用した場合、1名分を各店舗が無料で提供してくれる「エグゼクティブダイニング」、国内外1600カ所以上のラウンジ利用など、グルメ、トラベルなどで様々なサービスが用意されている。これらに加えて、ポイントの有効期限がないところも会員に評価されているそう。
会社経営者やビジネスパーソンには、「ビジネス・アカウントカード」が好評。発行手数料5500円、次年度以降は毎年5500円が必要になるものの、メインのカードとは別にもう1枚カードを付帯でき、支払い口座は別にできるので、経費決済用カードとして活用されている。プレミアムカード会員の約50%がこのカードを付帯しているそう(2025年3月末時点)。しかもポイントは合算できる。
ダイナースクラブカードには、ダイナースクラブカードでしか決済ができない加盟店、通称「オンリーダイナース加盟店」があり、その大半がハウスメーカー、ボート・ヨットの販売、アート作品、ゴルフ会員権、不動産仲介手数料、M&A仲介手数料など、高額な商品やサービスを販売している加盟店になる。
これまでヘリコプターの購入、ボート購入などがあり、いずれも1億円を超える決済だったそう。これもカード利用可能枠に一律の制限がないダイナースクラブカードだから実現できるという。

この春から、国内外を代表するホテルグループなどでの優待が受けられる「クラブホテルズ The Status Match」、ワンドリンク無料、同伴者1人可で対象のビジネスラウンジを無料利用できる「リージャス ビジネスラウンジ優待」(~2026年3月31日)など、新しいサービスがスタート。ますます会員が利用できる魅力のサービスが拡充されている。
■重厚感のある金属製カードを所有する喜び
「ラグジュアリーカード」は2016年に日本進出し、日本で初めて縦型金属カードを導入。Mastercardの最上位クラスである「World Elite」に対応したカードを日本で初めて発行した。カードランクは3段階あり、「TITANIUM」は年会費5万5000円、「BLACK」は年会費11万円、24金コーティングされた「GOLD」は年会費22万円になる。
■20代の入会者が2年で約3倍に
ラグジュアリーカードでも会員の年齢層が若年化しており、2024年の新規入会者数では35歳以下が全体の30%を占め、若年層の入会が増加傾向。20代の入会者も直近2年で約3倍に増加しているそう(ラグジュアリーカード調べ)。
会員が魅力を感じているのは、金属製カードとMastercard World Elite対応という圧倒的なステータス性。「手に取った瞬間に伝わる重厚感、提示時に話題になる特異性、そしてステータスの象徴としての存在感が、多くの会員にとって所有する喜びとなっています。実際、入会動機としてカードの素材とデザインに魅力を感じたと答える方が多数を占めます」(Black Card Iチーフ デジタル&マーケティング オフィサー児玉朋雄氏)
このほか24時間365日利用可能なLINEコンシェルジュ、最大2%のポイント還元率とマイル移行無制限の柔軟性、人気レストランでの最大3名無料のダイニング特典なども好評。
「とにかく“かっこいい”。カードを出すたびに話題になる」「重みがあって、財布の中でもすぐ分かる。
まさに特別感」「思いついた瞬間にLINEで依頼できて、レスポンスも早い」「他社カードより提案力があるし、気配りも行き届いていると感じます」とは会員からの声だ。
中でも趣味やビジネスでつながる会員限定イベント「ソーシャルアワー」が人気で、ワインテイスティングやヨガ、トレーニング、経営者同士のビジネスネットワーキングなど、多様なテーマで開催されている。同じ価値観を持つ会員同士が出会えることで、参加をきっかけにビジネスや趣味の輪が広がるケースも多いのだとか。
■ロレックスの店舗取扱高が前年比で約531%増
消費動向のトップ3は、オンライン通販、飲食店・レストラン、バー・居酒屋と一般的だが、例えば時計では、ロレックスの店舗取扱高が前年比で約531%と増加。実際、数千万円の高級腕時計の購入、数百万円規模の会員制リゾートの会員権購入などがあったそう。
「会員制リゾートの会員権取得やアート作品のまとめ買い、海外留学の予備校費用の支出など、単なる贅沢消費にとどまらず、自己実現や資産形成、備え、価値観重視といった文脈の中で行われる高額決済が多いです。入会者には自己表現やライフスタイルの向上を重視する傾向が見受けられます。例えば、送迎付きダイニングサービス“ラグジュアリーリムジン”は他社にはないユニークな特典です」(児玉氏)
「アメリカン・エキスプレス・カード」からは2024年2月20日に、年会費3万9600円の「ゴールド・プリファード・カード」が登場。輝きを放つメタル製のカードで、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド 広報の浅見健介氏によるとZ世代やミレニアル世代を中心に利用されているという。
「メタルカードならではの圧倒的な存在感と品格を感じさせる手触りがいい」「使うたびにその魅力を実感できる」といった声が会員から多く寄せられているそう。
グローバルでは、同カードのようなプレミアムカードが伸びていて、新規会員の60%以上が若年層とのこと。日本も近しい傾向にあり、「アメックスが以前から強みとしているトラベルやライフスタイル特典をさらにアップデートしています。
これらさまざまな取り組みの成果が出てきており、ゴールド・プリファード・カードやプラチナ・カードなど、新規カード会員に占める若い世代の比率が大幅に増加しています」(浅見氏)
■「年会費を超える価値がある」と好評の特典
ゴールド・プリファード・カードにはカード継続特典として、年間200万円以上のカード利用で国内のプレミアムホテルに1泊2名で無料宿泊できる「フリー・ステイ・ギフト」がある。マリオットやハイアット系列のグローバル・ブランドのプレミアムホテル、プリンスホテル、ニューオータニ、オークラなどの国内有数のブレミアムホテルに無料で宿泊できることから、「これだけで年会費相当か、それを超える価値がある」という会員も。
そのほか、「スターバックス カード」へのオンライン入金で20%のキャッシュバック(年間最大5000円)があることや、ダイニング予約サービス「ポケットコンシェルジュ」でも20%のキャッシュバック(年間最大1万円)が得られる。
ポイントの有効期限が無期限になる「メンバーシップ・リワード・プラス」が参加費無料、登録不要で利用でき、Amazonなどのオンラインの対象加盟店ではポイントが通常の3倍貯まるところも人気だという。
会員限定イベントも好評で、直近ではF1チケットの限定販売や現地観戦でのアメックス独自の体験サービス、ビリー・アイリッシュの日本公演の先行販売などを実施。昨年夏には野外フェス「FUJI ROCK」会場でのキャッシュバックキャンペーンに大きな反響があり、今夏も実施された。
「特別な体験を提供するようなプレミアム・サービスを強化していますが、それだけでなく、ポイントプログラムを含む経済的な価値も求められていると感じています」(浅見氏)
■AMEX上級会員限定ラウンジが羽田にオープン
2025年7月16日には、アメリカン・エキスプレスが世界各地で運営する空港ラウンジ「センチュリオン・ラウンジ」の30カ所目が、羽田空港の第3ターミナルに日本初オープン。利用できるのはプラチナカードやブラックカードなど、上級会員限定ということから、ますますプレミアムなカード人気が高まりそうだ。
これら3つのカード会社のプレミアムカードの共通点は、金属性のカードが用意されていること。ダイニングやトラベルなどの特典でお得感が実感できること。そして会員限定のスペースやイベントなどで、特別な体験ができることだ。
持つことでステータスが感じられ、年会費を上回るお得感や特別感が得られるプレミアムカード。
最近ではやや敷居が低くなってきているだけに、若い人が一足飛びにステータスや経験値を上げるツールとしておすすめなのではないだろうか。

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綿谷 禎子(わたたに・さちこ)

ライター

情報誌の編集部から編集プロダクションを経てフリーランスのライターに。現在は小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。自称、キャッシュレスクイーン。スマホ決済や電子マネー、クレジットカード、ポイント、通信費節約などのジャンルのほか、趣味の文具や手帳の記事も手がける。

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(ライター 綿谷 禎子)
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