TOEICで高得点を取るにはどうすればいいか。英会話スクール「English-21」代表の松田歩さんは35歳で英語を学び始め、38歳でTOEIC990点満点を取得した。
その秘訣は「2時間で200問を解き切る体力をつけることだ」という――。
※本稿は、松田歩『知識ゼロからTOEIC® 990 ヤンキー式英語独習法』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■初心者も上級者も同じ問題を解くTOEIC
「TOEICの点数が欲しい」

「でも、なにからやればいいのかわからない」
そんな声をたくさん聞いてきました。当たり前なんです。
TOEICという試験は、0点だろうが、900点だろうが、みんな、同じ試験を受けるんですから。
しかし、英検や他の英語試験は、英検5級の場合は、5級のレベル(中学初級程度の英語)の人たちが集まって、5級レベルの問題を解きます。でもTOEICは、あなたがどのレベルだろうが関係なく、全員同じ試験を受けます。
例えばTOEIC900点あたりをうろちょろしていて、毎回990点を取るために奮闘しているAさんがいたとします。
Aさんは、誰がみても英語レベル上級者です。そして、あなたもTOEICを受けたいのであれば、このAさんが受ける試験と同じ試験をあなたも受ける、ということになります。
どれだけ大変な試験を受けるのか、わかりますか? 英語レベル上級者のAさんでも苦戦している同じ試験を、あなたも受ける、ということです。
■「500点以下の人」はまず基礎英語から
ですから、当たり前ですが「半分の500点ぐらいのスコアが取れないなら受けてはいけない試験だ」ということになります。
500点以下の方がTOEICを受けても、「1問目からわからない……」となってしまうのです。TOEICの教科書や参考書、文法書、もしくはTOEIC講座なども、すべて、「500点以上の人に向け解説している」んです。
だから、500点以下の方は、「解説を読んでもわからない」「日本語の意味がわからない」という事態に陥ります。これは、当たり前で、あなたが悪いわけではありません。
こういう事実を伝えないで、「TOEIC600点を取得するように」としか言われなかったら、誰だって迷路に迷い込みます。
TOEIC500点以下の方は、最初に基礎英語を学びましょう。
TOEICに挑むのは、基礎を固めてから。英語の基礎とは、中学英語・高校英語のことを指します。
中学英語=英検3級、高校英語=英検2級

このレベルの、「読む・聞く」を仕上げましょう。このレベルが仕上がって初めて、TOEIC対策です。
■英検準1級なのにTOEICは660点?
準1級を真の実力で取得したと思えたあと、1級にも挑戦しようと思っていたのですが、ちょっと英検の勉強に疲れていた私はTOEICに挑戦することにしました。
「英検準1級ホルダーの私なら、TOEICは簡単なはず」
その慢心は、すぐに打ち砕かれることになります。

最初の模擬テストでの衝撃の結果――660点。
「準1級ホルダーなのに、なぜ?」とかなりのショックでした。
800点は軽く取れると思っていたからです。
特に文法問題で、私の弱点が露呈しました。今まで、英文と訳を照らし合わせて、なんとなく理解する方法で乗り切ってきた私。でも、TOEICでは、その方法が通用しなかったのです。
形容詞と副詞の使い分け、関係代名詞の用法、時制の一致……。それまで避けてきた文法の基礎を、ここでみっちり学習することになりました。
■「でる1000」を徹底的にやれば文法は完璧
さまざまな問題集を読みあさって私が最もおすすめだと思ったのは通称「でる1000」(『TOEIC® L&Rテスト文法問題でる1000問』TEX加藤著 アスク出版)という教材です。
この本との出会いが、TOEIC攻略の転機となりました。この本を徹底的にやればTOEICの文法は、ほぼ完璧です。ノートを取りながら4回まわすことをおすすめします。
わからない問題のみノートに書き写していけば、あなたをステップアップさせる最強の問題集ができあがります。
TOEICでもう一つ大きな壁となったのが、時間との闘いでした。
約2時間の試験時間で200問。今までの英検とは、まるで違う世界でした。
最初は問題を解く時間が全く足りません。なぜなら、私は英文を読むとき、日本語に訳しながら、時には後ろから読み返しながら理解していたからです。
「いつか速く読めるようになるだろう」
そんな期待は、すぐに捨てることにしました。代わりに、最初からスピードを意識した練習を始めたのです。
具体的には、
1.まず、すべての単語の意味と文法を完璧に理解する

2.英文を前から順に読み、決して後ろに戻らない

3.一度でも戻ってしまったら、その文章は最初から読み直す

4.この訓練を何度も繰り返す
「スピードに慣れる」というより、「スピードから入る」。この発想の転換が、大きな進歩をもたらしたのです。
■自分で作った「世界一のTOEIC問題集」
TOEIC対策の勉強ですが、英検のリーディング対策と同じです。問題は解かず、すべて意味を調べてください。
問題文、設問の英文をすべて理解してから問題を解きます。わからなかったところはノートに書き出し、自分の問題集を作る。TOEICでもそれが世界一の問題集になるのです。
ちなみに単語がわからなければTOEICも高得点は望めません。単語集としておすすめなのは通称「金フレ」(『TOEIC® L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』TEX加藤著 朝日新聞出版)です。4周完了しましょう。
私のTOEIC対策ノートを貼り付けておきますので参考にしてください(図表1)。
■英検1級と準1級は語彙の量も頻度も違う
TOEICを受験するためにTOEIC対策の勉強をしたことで
● 戻らないで読む

● 通じる英語を使うための実践的な英文法を知る
ことが飛躍的にできるようになりました。そして850点を獲得した私は再度英検に戻ることに。そう、最上級の1級に挑戦です。
まずは1級の単語集『でる順パス単』に取りかかりました。3カ月で4周するよう頑張りました。

準1級の単語でも苦労しましたが、1級の単語はそれに輪をかけてワケがわかりません。語彙の量も難度も、準1級とは明らかな違いがありました。
しかしながら、毎日、毎日繰り返し単語を増やしていきました。準1級受験のとき、血尿を出すほどの苦労を味わっていたので、1級受験は覚悟ができていました。ですからそれまでと比べても徹底的に時間を惜しんで単語を覚え、勉強しました。
4級から始めて、一つずつ確実に。最初は遠回りに見えたかもしれません。でも、これが実は最短コースだったのです。
そして、この経験から学んだ最も重要なことは、英語学習における「単語力」の大切さでした。
どんなに文法を理解しても、単語がわからなければ、文章は理解できません。どんなに話したくても、単語を知らなければ、表現できません。
私の場合、各級で以下のような教材を使いました。

● 4級~2級:『でる順パス単』

● 準1級・1級:『でる順パス単』『文で覚える単熟語』
■知識ゼロだった私が人気の英語講師に
そして、英検1級を受験しました。ペーパー試験に無事合格した後二次試験にも合格。
1級は準備万端で落ちることはないという自信がありました。ゼロからの英語学習開始から2年とちょっとで1級までたどり着くことができました。
準1級合格後、私はアルバイトである大手英語学校の講師をするようになっていました。
フィリピン留学中、一緒に学んだ人たちに教えた経験が生かせるかなと思ったからです。
案の定、自分が英語力を伸ばした方法を教えてあげると、多くの生徒が私を指名するようになり、あっという間に人気講師に。
この経験で、自分で英語学校を立ち上げられればもっと安く、そして効果的に多くの人の英語力を伸ばしてあげられるぞと思うようになりました。
そしていよいよ1級に合格した私は、自分の勉強法により自信を持ったのです。
■TOEIC満点に必要なのは「体力」
850点を超えて900点、990点を取るために必要だったのは、「TOEIC力」とでも呼ぶべきスキルでした。
例えば、Part7の長文読解。ただ英文が読めるだけでは足りません。時間との勝負なので、まるで刑事のように「この部分は絶対に設問になるな」という勘を働かせながら読んでいく必要があります。
では、そのTOEIC力はどのように付けたらいいのか?
それは繰り返し問題を解くことです。
■1日にTOEIC模試3~4回分を解く
TOEIC力ともいえる勘を働かせることとともに、必要だったのは「体力」でした。2時間の試験時間。200問の問題。1問も間違えられない緊張感。そのプレッシャーのもとで最後まで集中力を保つには、相当な体力が必要です。
この2つを解決するために私が行ったのは、土曜や日曜など時間が取れる日に1日TOEICテストの過去問や模擬試験を3~4回行うことでした。1回2時間、合計6~8時間。最初は3回目ぐらいになると頭が回らなくなります。でも、これを続けることで少しずつ体力がついてきました。
その日の起きている時間中ほぼすべてTOEICテストに向かうのです。もちろん答え合わせや復習もその後完全に行います。
■オリンピック金メダリストから学んだこと
オリンピック柔道史上初の3連覇を成し遂げた野村忠宏さんは大学入学当初はそれほど強くもなかったと語っておられます。しかも、毎日の練習がつらいので一日の練習がこなせるように手を抜いたりして、力の配分を考えて練習をしていたとか。
しかし、監督はこのことに気づいていました。
ある日「途中でぶっ倒れて休んでもいいから、練習は最初から全力で取り組め」と怒られたそうです。
それ以降、野村さんは稽古の頭から全身全霊で取り組みます。
実際途中で立っていられないほど疲れきってしまうこともありました。でも、「その程度か」と言われるのが嫌で必死で食らいついていくうちに、体力も精神力も以前とは見違えるように強くなったそうです。
ちょっとやそっとでは投げられなくなり、試合でも負けなくなって自信もついていきました。そしてついには世界一になったのです。オリンピック柔道史上初の3連覇はどんなときでも気も力も抜かない練習に裏打ちされていたわけです。
■900点から990点への険しい道のり
土曜や日曜など時間が取れる日に1日TOEICテストを3回から4回もこなすことは、この練習に近かったのかもしれません。このような努力の結果、900点は超えることができました。
しかし、900点から990点への道のりは、さらに険しいものでした。なぜなら、1問のミスも許さないつもりで向かわねばならないからです。900点なら何問か間違えても取れます。でも990点は違います。200問すべてに完璧な集中力を保ち続けなければいけません。これも引き続き土日に1日でTOEICテストを3~4回行うことを続けた結果、突破することができました。
英検1級、TOEIC990を取得し私の人生は変わりました。そしてトラックの運転手は完全に卒業して38歳でEnglish-21を始めました。
フィリピン留学や大手英語学校の教師をした際に私の教え方の評判が良かったので、ぜひ多くのみなさんにも英語の上達を通して人生を変えてほしいと思ったからです。そして今までに、のべ1500人以上の方が私の英語学校で学んでくださっているのです。

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松田 歩(まつだ・あゆみ)

English-21 代表

1980年生まれ。勉強嫌いで高校を1年留年後卒業。女性トラック運転手だった35歳のとき古本屋で買った「中学英語学び直し本」をきっかけにゼロから独学を始める。知識ゼロから短期間で英検2級取得。フィリピン留学などを経て、3年後に英検1級・TOEIC990点取得。その後TOEFL110、IELTS7.5に到達。英会話スクールの講師としても活動していたが、2018年12月独自の英語学習ノウハウを駆使したEnglish-21を開校(https://english-21.com/)。

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(English-21 代表 松田 歩)
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