「女性・女系天皇」論議で参院選後に注目するべきことは何か。皇室史に詳しい宗教学者の島田裕巳さんは「日本会議の新会長・谷口智彦氏は、『リベラル化した自民党』と非難した。
■新会長が唱えた日本会議の急務
「愛子天皇待望論」が盛り上がりを見せる中、それを阻止する「ラスボス」が現れた。ラスボスとは、コンピュータゲームなどの最終局面で出現する最強の敵のことである。
そのラスボスとは、日本(にっぽん)会議のことであり、その新会長となった谷口智彦(ともひこ)氏のことである。日本会議のサイトを見ると、7月18日に、谷口氏による「会長就任のご挨拶」が掲載されているが、その中で、高浜虚子の「去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如きもの」という句にふれ、日本会議の使命とは、貫く棒、日本の心棒を折らずに後代に継承し、日本の国柄を守って、それをさらに強化していくことにあると述べている。国柄とは現代の言い方だが、戦前であれば天皇を中心とした政治体制である「国体」のはずである。
その上で谷口氏は、「旧宮家で皇統を引く男性の方々に皇室へ入っていただく所要の改正は、令和七年通常国会で実現するやに見えたのも束の間、先送りになりました」と述べ、自衛隊に明確な位置づけを与える憲法改正とともに、その二つこそが日本会議の急務だとしている。
つまり、国会で議論された旧宮家を皇族の養子とする案をなんとか実現させることに、日本会議の活動の重点を置くと宣言しているわけである。それは、女性天皇や女系天皇を認めないことにつながっていく。
■会長就任までの谷口智彦氏のキャリア
谷口氏は東京大学法学部の出身で、最初は日本朝鮮研究所(現在の現代コリア研究所)に研究員として勤務した。この研究所は、日本共産党の党員が多いことで知られ、その点では、保守の牙城(がじょう)と目される日本会議とは対極にある組織である。ただ、当時の谷口氏の論考に目を通してみると、南北朝鮮との関係についてかなり客観的な立場から論じているように見える。
その後の谷口氏は、東京精密というメーカーを経て、日経BPに勤務し、欧州特派員をつとめた後、外務省に転じて報道官となっている。第2次安倍政権においては内閣官房参与となり、安倍晋三首相のスピーチライターとして活躍した。実は私は、友人を介して、この時代の谷口氏と知り合いになり、その関係は今日にまで続いている。
そのこともあり、谷口氏の会長就任には驚いたのだが、日本会議では、前会長の政治学者、田久保忠衛(たくぼただえ)氏が昨年1月に90歳で亡くなった後、会長が空席になっていた。谷口氏は、安倍元首相が銃弾に倒れた後、日本会議の都道府県本部や支部で講演を行い、機関誌である『日本の息吹』にも精力的に寄稿していたようで、そうしたことが会長就任に結びついたらしい。
■男系男子の皇位継承を要求
組織の会長と言えば、「お飾り」となり、積極的に活動しないこともある。だが、谷口氏はその正反対で、参議院議員選挙が行われた後の7月24日には、選挙結果についての見解を発表している。その見解は、あくまで日本会議が出したものだが、それを伝える産経新聞は、谷口氏の写真を用いており、そこに会長の意向が強く反映されていることが暗示されている。
今回の選挙では、自民党が大きく票を減らす結果になり、連立を組む公明党と合わせても過半数に達しない事態が生まれた。日本会議は、その原因は「現在のリベラル化した自民党に対して、保守層がノーを突き付けた結果といってよい」としていた。
ここで言われるリベラル化とは、憲法改正や男系の皇統護持について自民党が明確な姿勢を示すことができなかったことを指す。これはまさに谷口会長の挨拶に通じる内容であり、女性天皇や女系天皇はもってのほかで、男系男子による皇位継承をあくまで貫くべきだということを自民党に要求していることに他ならない。
谷口氏が会長に就任して間のない段階で、こうした見解を出したということは、今後、皇位継承の安定化の議論に日本会議が積極的に関わっていく可能性があることを示している。谷口氏が、安倍政権のスピーチライターとして相当な活躍をしたことを踏まえれば、突如としてラスボスが出現したととらえてよいのではないだろうか。
■憲法改正を求める署名活動を神社で展開
日本会議については、自民党政権を支える保守的な宗教団体の連合体というイメージがある。実際、会の顧問には、伊勢神宮の神宮大宮司や神社本庁の統理が名をつらね、副会長の一人も神社本庁の総長である。代表委員にも、靖国神社や明治神宮の宮司、比叡山延暦寺の代表役員、あるいは解脱会や仏所護念会、崇教眞光(すうきょうまひかり)といった保守的な傾向が強い新宗教のトップが含まれている。
日本会議のことが話題になったのは2016年のことだった。その年、日本会議について取り上げた書物が数多く出版され、多くの読者の関心を引いた。新聞や雑誌も、日本会議についての特集を組んだりした。
それも、2015年4月頃から、日本会議の会員が各地の神社で憲法改正を求める署名活動を展開したからである。それを海外のメディアが取り上げ、当時の安倍政権のバックに日本会議があると報じたことが、日本会議に注目が集まった理由だった。
神社界の元締めになっているのが神社本庁である。戦前には国の機関として神祇院(じんぎいん)という組織があり、それが全国の神社を統率、管理していた。
そのため、神祇院も廃止され、その代わりに生まれたのが神社本庁であった。「本庁」という名称からは、役所のようなイメージがあるが、神社本庁は民間の宗教法人であり、その傘下に全国の神社があるという形になっている(このあたりのことについては、近刊の拙著『GHQは日本の宗教をどう変えたのか 神道指令について』で論じた)。
■なぜ保守系の政治家に神社が重要か
文化庁の宗務課が刊行している『宗教年鑑』の令和6年版によれば、神社本庁の信者数は7469万6959人となっている。日本の人口がおよそ1億2450万人だから、日本人の6割近くが神社本庁の信者になる。
そうなると、神社本庁が加わった日本会議は巨大組織になる。ただ、神社本庁の信者とは、地域の神社の氏子の数を合計したもので、私たちも知らぬ間にその信者に数えられている可能性がある。その点で、日本会議の力を過大評価することには問題があるものの、地域の神社は地元の有力者が氏子総代などとして関わっており、地元選出の議員とも密接な関係を持っている。そのため、神社は特に保守系の政治家には重要な存在である。
日本会議が結成されたのは1997年のことで、その前身となったのが「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」という二つの団体である。日本会議のスローガンは「誇りある国づくりを」で、これまで元号法制化の実現、昭和天皇在位60年や今上天皇即位の際の奉祝運動、歴史教科書の編纂事業、自衛隊PKO活動への支援、新憲法の提唱などを展開してきた。
こうした運動を展開してきた日本会議であるわけだから、男系男子での皇位の継承に強いこだわりを持つことになる。
■旧宮家の皇族復帰は得策か
しかし、皇位継承の安定化として、日本会議が強調する旧宮家の皇族復帰という策は、果たして有効なものなのだろうか。旧宮家の中には、すでに断絶してしまった家のほうが多いのだが、残っている家も5つあり、そうした家には男子もいる。
残っている旧宮家の一つ、伏見宮(ふしみのみや)家の伏見博明(ひろあき)氏は、その著作の中で、「天皇陛下に復帰しろと言われ、国から復帰してくれと言われれば、これはもう従わなきゃいけないという気持ちはあります」と述べていた。だが同時に、「人は急に宮さまになれと言われて、なれるものではない」とも、その難しさについて語っていた。
仮に皇室典範が改正され、旧宮家の男子が皇族の養子になる道が開かれたとしても、そのハードルは高い。なにしろ、旧宮家が皇籍を離脱してからすでに80年近い歳月が流れている。その間、一般国民と同じ生活をしてきたわけで、制約が多い皇族の生活に戻ることを選択する人間が現れるという保証はない。
たとえ皇族に復帰することを受け入れる旧宮家の人間がいたとしても、これまでのことを考えれば、メディアによる集中的な報道にさらされる可能性は高い。さまざまなことが暴かれ、興味本位の報道が続くであろう。そのリスクを冒してまで手を挙げる人間がいるとは到底思えない。
■“真のラスボス”になってほしい
今、皇族の女性と結婚する、あるいは皇室に嫁ぐ一般の女性が現れにくくなっているのは、眞子元内親王の結婚の時に起こったような報道が行われる可能性が高いからである。
天皇や皇族の場合、一般の国民とは異なるので、間違った報道、あるいは誹謗中傷を受けても、名誉毀損で裁判に訴えることができない。本来なら、政府が代わって裁判に訴えるべきなのだが、今までそうしたことは行われていない。
是非とも必要なのは、政府が皇室のメンバーを守る覚悟を公にし、そのための具体策をとることではないだろうか。そうしないと、今後皇位を継承する可能性が最も高い秋篠宮の悠仁親王の結婚は困難なものになってしまう。
日本会議が政府、自民党に要求すべきことも、実はそれに尽きるのではないだろうか。悠仁親王が結婚し、男子をもうけなければ、将来において皇統は途絶えてしまうのだ。旧宮家の復帰も、やはり実現しなくなってしまう。
今からちょうど10年前の2015年に、私が筑摩選書の一冊として『戦後日本の宗教史 天皇制・祖先崇拝・新宗教』を上梓したとき、そこで、天皇不在によって日本国の機能が停止することを指摘した。
それを読んで、その重大性に気づいてくれたのが、当時は内閣参与だった谷口智彦氏であった。谷口氏には、現在の深刻な状況を踏まえ、皇位継承の安定化に資する有効な策を提言してもらいたい。その上で、非道なメディアの報道を阻む、真のラスボスになってほしいと願うのである。
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島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。
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(宗教学者、作家 島田 裕巳)
それは男系男子による皇位継承を貫くべきだと要求しているのに他ならない」という――。
■新会長が唱えた日本会議の急務
「愛子天皇待望論」が盛り上がりを見せる中、それを阻止する「ラスボス」が現れた。ラスボスとは、コンピュータゲームなどの最終局面で出現する最強の敵のことである。
そのラスボスとは、日本(にっぽん)会議のことであり、その新会長となった谷口智彦(ともひこ)氏のことである。日本会議のサイトを見ると、7月18日に、谷口氏による「会長就任のご挨拶」が掲載されているが、その中で、高浜虚子の「去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如きもの」という句にふれ、日本会議の使命とは、貫く棒、日本の心棒を折らずに後代に継承し、日本の国柄を守って、それをさらに強化していくことにあると述べている。国柄とは現代の言い方だが、戦前であれば天皇を中心とした政治体制である「国体」のはずである。
その上で谷口氏は、「旧宮家で皇統を引く男性の方々に皇室へ入っていただく所要の改正は、令和七年通常国会で実現するやに見えたのも束の間、先送りになりました」と述べ、自衛隊に明確な位置づけを与える憲法改正とともに、その二つこそが日本会議の急務だとしている。
つまり、国会で議論された旧宮家を皇族の養子とする案をなんとか実現させることに、日本会議の活動の重点を置くと宣言しているわけである。それは、女性天皇や女系天皇を認めないことにつながっていく。
■会長就任までの谷口智彦氏のキャリア
谷口氏は東京大学法学部の出身で、最初は日本朝鮮研究所(現在の現代コリア研究所)に研究員として勤務した。この研究所は、日本共産党の党員が多いことで知られ、その点では、保守の牙城(がじょう)と目される日本会議とは対極にある組織である。ただ、当時の谷口氏の論考に目を通してみると、南北朝鮮との関係についてかなり客観的な立場から論じているように見える。
その後の谷口氏は、東京精密というメーカーを経て、日経BPに勤務し、欧州特派員をつとめた後、外務省に転じて報道官となっている。第2次安倍政権においては内閣官房参与となり、安倍晋三首相のスピーチライターとして活躍した。実は私は、友人を介して、この時代の谷口氏と知り合いになり、その関係は今日にまで続いている。
そのこともあり、谷口氏の会長就任には驚いたのだが、日本会議では、前会長の政治学者、田久保忠衛(たくぼただえ)氏が昨年1月に90歳で亡くなった後、会長が空席になっていた。谷口氏は、安倍元首相が銃弾に倒れた後、日本会議の都道府県本部や支部で講演を行い、機関誌である『日本の息吹』にも精力的に寄稿していたようで、そうしたことが会長就任に結びついたらしい。
■男系男子の皇位継承を要求
組織の会長と言えば、「お飾り」となり、積極的に活動しないこともある。だが、谷口氏はその正反対で、参議院議員選挙が行われた後の7月24日には、選挙結果についての見解を発表している。その見解は、あくまで日本会議が出したものだが、それを伝える産経新聞は、谷口氏の写真を用いており、そこに会長の意向が強く反映されていることが暗示されている。
今回の選挙では、自民党が大きく票を減らす結果になり、連立を組む公明党と合わせても過半数に達しない事態が生まれた。日本会議は、その原因は「現在のリベラル化した自民党に対して、保守層がノーを突き付けた結果といってよい」としていた。
ここで言われるリベラル化とは、憲法改正や男系の皇統護持について自民党が明確な姿勢を示すことができなかったことを指す。これはまさに谷口会長の挨拶に通じる内容であり、女性天皇や女系天皇はもってのほかで、男系男子による皇位継承をあくまで貫くべきだということを自民党に要求していることに他ならない。
谷口氏が会長に就任して間のない段階で、こうした見解を出したということは、今後、皇位継承の安定化の議論に日本会議が積極的に関わっていく可能性があることを示している。谷口氏が、安倍政権のスピーチライターとして相当な活躍をしたことを踏まえれば、突如としてラスボスが出現したととらえてよいのではないだろうか。
■憲法改正を求める署名活動を神社で展開
日本会議については、自民党政権を支える保守的な宗教団体の連合体というイメージがある。実際、会の顧問には、伊勢神宮の神宮大宮司や神社本庁の統理が名をつらね、副会長の一人も神社本庁の総長である。代表委員にも、靖国神社や明治神宮の宮司、比叡山延暦寺の代表役員、あるいは解脱会や仏所護念会、崇教眞光(すうきょうまひかり)といった保守的な傾向が強い新宗教のトップが含まれている。
日本会議のことが話題になったのは2016年のことだった。その年、日本会議について取り上げた書物が数多く出版され、多くの読者の関心を引いた。新聞や雑誌も、日本会議についての特集を組んだりした。
それも、2015年4月頃から、日本会議の会員が各地の神社で憲法改正を求める署名活動を展開したからである。それを海外のメディアが取り上げ、当時の安倍政権のバックに日本会議があると報じたことが、日本会議に注目が集まった理由だった。
神社界の元締めになっているのが神社本庁である。戦前には国の機関として神祇院(じんぎいん)という組織があり、それが全国の神社を統率、管理していた。
それが、日本が戦争に敗れ、連合国の占領下におかれると、その中心にあったGHQが「神道指令」を発し、それまで強く結びついていた日本の国家と神社との関係が断ち切られた。
そのため、神祇院も廃止され、その代わりに生まれたのが神社本庁であった。「本庁」という名称からは、役所のようなイメージがあるが、神社本庁は民間の宗教法人であり、その傘下に全国の神社があるという形になっている(このあたりのことについては、近刊の拙著『GHQは日本の宗教をどう変えたのか 神道指令について』で論じた)。
■なぜ保守系の政治家に神社が重要か
文化庁の宗務課が刊行している『宗教年鑑』の令和6年版によれば、神社本庁の信者数は7469万6959人となっている。日本の人口がおよそ1億2450万人だから、日本人の6割近くが神社本庁の信者になる。
そうなると、神社本庁が加わった日本会議は巨大組織になる。ただ、神社本庁の信者とは、地域の神社の氏子の数を合計したもので、私たちも知らぬ間にその信者に数えられている可能性がある。その点で、日本会議の力を過大評価することには問題があるものの、地域の神社は地元の有力者が氏子総代などとして関わっており、地元選出の議員とも密接な関係を持っている。そのため、神社は特に保守系の政治家には重要な存在である。
日本会議が結成されたのは1997年のことで、その前身となったのが「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」という二つの団体である。日本会議のスローガンは「誇りある国づくりを」で、これまで元号法制化の実現、昭和天皇在位60年や今上天皇即位の際の奉祝運動、歴史教科書の編纂事業、自衛隊PKO活動への支援、新憲法の提唱などを展開してきた。
こうした運動を展開してきた日本会議であるわけだから、男系男子での皇位の継承に強いこだわりを持つことになる。
谷口会長の示した姿勢も、その延長線上にある。
■旧宮家の皇族復帰は得策か
しかし、皇位継承の安定化として、日本会議が強調する旧宮家の皇族復帰という策は、果たして有効なものなのだろうか。旧宮家の中には、すでに断絶してしまった家のほうが多いのだが、残っている家も5つあり、そうした家には男子もいる。
残っている旧宮家の一つ、伏見宮(ふしみのみや)家の伏見博明(ひろあき)氏は、その著作の中で、「天皇陛下に復帰しろと言われ、国から復帰してくれと言われれば、これはもう従わなきゃいけないという気持ちはあります」と述べていた。だが同時に、「人は急に宮さまになれと言われて、なれるものではない」とも、その難しさについて語っていた。
仮に皇室典範が改正され、旧宮家の男子が皇族の養子になる道が開かれたとしても、そのハードルは高い。なにしろ、旧宮家が皇籍を離脱してからすでに80年近い歳月が流れている。その間、一般国民と同じ生活をしてきたわけで、制約が多い皇族の生活に戻ることを選択する人間が現れるという保証はない。
たとえ皇族に復帰することを受け入れる旧宮家の人間がいたとしても、これまでのことを考えれば、メディアによる集中的な報道にさらされる可能性は高い。さまざまなことが暴かれ、興味本位の報道が続くであろう。そのリスクを冒してまで手を挙げる人間がいるとは到底思えない。
■“真のラスボス”になってほしい
今、皇族の女性と結婚する、あるいは皇室に嫁ぐ一般の女性が現れにくくなっているのは、眞子元内親王の結婚の時に起こったような報道が行われる可能性が高いからである。
天皇や皇族の場合、一般の国民とは異なるので、間違った報道、あるいは誹謗中傷を受けても、名誉毀損で裁判に訴えることができない。本来なら、政府が代わって裁判に訴えるべきなのだが、今までそうしたことは行われていない。
是非とも必要なのは、政府が皇室のメンバーを守る覚悟を公にし、そのための具体策をとることではないだろうか。そうしないと、今後皇位を継承する可能性が最も高い秋篠宮の悠仁親王の結婚は困難なものになってしまう。
日本会議が政府、自民党に要求すべきことも、実はそれに尽きるのではないだろうか。悠仁親王が結婚し、男子をもうけなければ、将来において皇統は途絶えてしまうのだ。旧宮家の復帰も、やはり実現しなくなってしまう。
今からちょうど10年前の2015年に、私が筑摩選書の一冊として『戦後日本の宗教史 天皇制・祖先崇拝・新宗教』を上梓したとき、そこで、天皇不在によって日本国の機能が停止することを指摘した。
それを読んで、その重大性に気づいてくれたのが、当時は内閣参与だった谷口智彦氏であった。谷口氏には、現在の深刻な状況を踏まえ、皇位継承の安定化に資する有効な策を提言してもらいたい。その上で、非道なメディアの報道を阻む、真のラスボスになってほしいと願うのである。
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島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。
『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。
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(宗教学者、作家 島田 裕巳)
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